|
THE GUILTY／ギルティ（DEN SKYLDIGE）
（2018年 デンマーク）（上映時間1時間28分）
監督：グスタフ・モーラー
出演：ヤコブ・セーダーグレン、イェシカ・ディナウエ、ヨハン・オルセン、
オマール・シャガウィー、カティンカ・エヴァース＝ヤーンセン
＊新宿武蔵野館、ヒューマントラストシネマ渋谷ほかにて公開
ホームページ https://guilty-movie.jp/
■■■■■■■■■■■■■■■■■■■■■■■■■■■■■■■■
＜ストーリー＞
捜査中のトラブルにより現場を外された警察官のアスガー（ヤコブ・セーダー
グレン）は、緊急通報指令室のオペレーターとして働いていた。そんなある日、
アスガーは、今まさに誘拐されているという女性イーベンからの通報を受ける。
電話から聞こえる声と音だけを手掛かりに、犯人の特定とイーベンの救出を試
みるアスガーだったが……。
＜レビュー＞
〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜
音だけを頼りに誘拐事件に挑むユニークなサスペンス
〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜
音の持つ特徴を十二分に生かしたデンマーク映画。舞台となるのは緊急通報指
令室のみ。いわゆるワンシチュエーションのドラマです。
主人公はアスガーという男。緊急通報指令室（日本の110番や119番のようなも
のらしい）のオペレーターとして働き、電話を使って救急車やパトカーの手配
などを行っています。だが、彼はただのオペレーターではないことが冒頭から
示唆されます。
どうやら元は警察官として現捜査にあたっていたものの、何らかのトラブルに
よって現場を外され、オペレーターとして働いているようです。
そんな中、1本の電話がかかります。今まさに誘拐されているという女性が、車
の中からかけてきた電話です。イーベンと名乗った彼女のそばには誘拐犯がい
て、子供に電話をするふりをして携帯で電話をしてきたのです。
この電話をきっかけに、アスガーは誘拐事件の解決にあたることになります。
とはいえ、頼りになるのは電話だけ。電話の相手はイーベンに加え、犯人と思
しき男、イーベンの留守宅にいる幼い娘、警察の指令センターなど様々に変化
します。そこから聞こえる声、周囲の音などをもとに、犯人の特定とイーベン
の救出を成し遂げなければならないのです。
そして、観客もまた映画の中でアスガーと同じ体験をします。観客も電話から
聞こえる声や音をもとに、あれこれと想像力をめぐらしていくのです。
スクリーンに映されるのは緊急指令室のアスガーの姿のみ。にもかかわらず、
観客は犯行現場の車の中、被害者や加害者の留守宅など様々な場面を頭の中で
思い描きます。こうして、想像の力によってスリリングで予想のつかないサス
ペンスが、構築される仕掛けです。
中盤、被害者の留守宅に警官が急行し、そこでとんでもない事実が発覚。それ
を知ったアスガーは、さらに事件にのめり込みます。いったいなぜ、彼はそこ
まで事件にのめり込むのか。その背景には冒頭から示唆されてきた彼にまつわ
るトラブルがあります。ここでタイトルの「ギルティ＝罪」という言葉が大き
く意味を持ってくるのです。
後半にはさらなる驚愕の事実が発覚。映画の中盤でクッキリと見えたかに思え
た事件の全貌が、ガラリとひっくり返されてしまいます。逆転劇はラスト近く
にも用意されています。
この手の携帯電話を使った映画は他にもありますが、その中でこれだけ斬新に
感じられる映画を撮ったグスタフ・モーラー監督の才気が光ります。音を頼り
に想像力を刺激される魅力的な作品です。
≪ぽちの満足度≫
★★★☆☆（＋1／2★）
（88点）
（田中ひろあき）
〔鑑賞データ〕
2019年2月22日（金）ユナイテッド・シネマとしまえんにて。午後1時10分の回
[「アルファベット」のページ][「さ」のページ]
|