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アルゼンチンババア
（2007年 日本）（上映時間１時間52分）
監督・脚本：長尾直樹
出演：役所広司、鈴木京香、堀北真希、森下愛子、手塚理美、岸部一徳、田中
直樹、小林裕吉、菅原大吉、渡辺憲吉、きたろう、桜井裕美
＊東劇、Ｑ−ＡＸシネマほかにて全国公開
ホームページ http://www.arubaba.com/
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＜ストーリー＞
高校生のみつこ（堀北真希）の母が入院先の病院で急死する。その日から、石
職人の父・悟（役所広司）は行方をくらましてしまう。半年後、悟が町はずれ
の草原に建つ古ぼけた小さなビルにいることがわかる。そこには、町の人から
アルゼンチンババア（鈴木京香）と呼ばれ気味悪がられている女が、独りで暮
らしていた。みつこは父に会うため、アルゼンチンババアの家を訪ねるのだが
……。
＜レビュー＞
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不気味なババアがもたらす父娘の絆の再生。ババアが若すぎなのが玉にキズ
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アルゼンチンババアって、凄いタイトルですねぇ〜。原作はよしもとばななの
同名小説。
主人公は高校生のみつこ。入院中の母が死去。ショックで現実が受け入れられ
ない父が行方不明になる。どこに行ったかと思えば、アルゼンチンババアとい
う気色悪い女の家で暮らしていたのだ……。
これだけならただのダメダメ親父に翻弄される娘の話ですが、そうならないの
はアルゼンチンババアのキャラクターのおかげ。確かに外見は不気味だし、暮
らしぶりも奇妙ですが、その内面たるやまるで聖母のような優しさと、広い心
の持ち主。彼女のおかげで、傷ついた父親が癒され、そして一度途切れた父と
娘の絆が再生していくのです。
話の展開はほぼ予想通りだし、とりたてて目新しいこともありません。しかし、
全体を包む雰囲気がとても心地よい。それに身を委ねながら、アルゼンチンバ
バアや父娘の姿を観ているうちに、なんだかこちらまで癒されていく感じです。
家族の再生というと、リアルな物語のようなイメージがありますが、この映画
は少し違います。現実離れしていたり、幻想的だったりするところもかなりあ
ります。リアルなドラマというよりは、あくまでもファンタジーとして楽しむ
のが正解でしょう。ユーモラスで笑えるところもけっこうあります。
映像も魅力的。空想の世界などのユニークなカットや、草原に建つババアの屋
敷などの美しいシーンが目を引きます。長尾直樹監督（『鉄塔武蔵野線』）は、
ＣＭも手がけているだけに映像にキレがあります。
後半はややバタバタとラストに向かうのですが、クライマックスの海のシーン
は心に残ります。押し付けでない感動が味わえる爽やかな場面。ラストのアル
ゼンチンタンゴを踊るシーンもステキです。
中心人物だけでなく、周囲の人物まできちんとドラマを描いているのも特徴的。
ただし、不要なエピソードも多くて、岸部一徳演じるウナギ屋の店主の不倫ネ
タは必要ナシ。田中直樹演じる整体師の卵のエピソードも、あんまり意味がな
いですね。逆に、けっこう重要な役の森下愛子演じる叔母さんは、その背景が
ツッコミ不足。
そして、個人的に最も違和感があったのは、アルゼンチンババアが若すぎるこ
と。後半でその年齢からして、かなり危険な行動に出るのですが、そこがちっ
とも危険に思えないんですヨ。見た目が若すぎるから。「気色悪いと思ったら、
意外に美しかった」というのはＯＫなんですけどね。まさか鈴木京香に遠慮し
たわけじゃないでしょう？
といったアラはあるものの、全体を流れる雰囲気がとてもよいので、観終わっ
てホンワカできました。そこはかとない感動が伝わるファンタジーです。
役所広司、鈴木京香らの実力派に混じって、堀北真希が突然の出来事に混乱す
る女子高生を等身大で好演。
《ぽちのオススメ度》
★★★☆☆
（ホンワカムードが心地よい、心暖まるファンタジー。癒されたい方はどうぞ。
ただし、原作とは雰囲気が違うようなのでご注意を。）
＜ぽち＞
〔鑑賞データ〕
2007年3月25日（日）池袋シネマサンシャインにて。午後2時15分の回
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