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歩いても 歩いても
（2008年 日本）（上映時間1時間54分）
原作・監督・脚本・編集：是枝裕和
出演：阿部寛、夏川結衣、ＹＯＵ、高橋和也、田中祥平、寺島進、加藤治子、
樹木希林、原田芳雄
＊シネカノン有楽町1丁目、渋谷アミューズＣＱＮ、新宿武蔵野館ほかにて公開。
順次全国公開
ホームページ http://www.aruitemo.com/
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＜ストーリー＞
ある夏の日、元開業医の横山恭平（原田芳雄）とその妻とし子（樹木希林）が2
人で暮らす家に、次男の良多（阿部寛）と長女のちなみ（ＹＯＵ）がそれぞれ
の家族を連れてやって来る。実はこの日は15年前に事故死した長男・淳平の命
日だった。一見、穏やかそうに会話を交わす家族だったが……。
＜レビュー＞
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たった1日の出来事で家族の光と影を描いた深みのある映画
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『誰も知らない』『花よりもなほ』の是枝裕和監督の新作です。
老夫婦2人が住む家に、息子と娘が家族を連れて帰ってきます。実は、この日は
15年前に事故死した長男の命日なのです。
長女一家は先に家に着いて、長女は母親と料理を作っています。やがて次男が
妻と子どもを連れてやってきます。無関心を装っていた父親も加わって、家族
揃って食卓を囲んで楽しいおしゃべり。一見、幸せそうな家族ですが、その裏
には各人の様々な感情が渦巻いているのです……。
ごくありふれた家族の1日を淡々と描いた映画です。劇的なところはまったくあ
りません。家族の会話は自然で、まるでドキュメンタリーを観ているようです。
是枝監督を一躍有名にした『誰も知らない』もそうでしたが、シナリオに書か
れたセリフとは思えない自然な言葉が役者から飛び出します（アドリブもあ
り？）。それを淡々と、ていねいに映していきます。冒頭の母親と娘が料理を
作るシーンから、ラストの次男一家による墓参風景まで、その雰囲気はまった
く変わりません。
おそらく観客は、スクリーンの中の家族を観ながら「あ、ウチと同じだ。あそ
こはウチと違う」と思ってしまうのではないでしょうか。そのぐらいリアルで
身近に感じられます。
会話のほとんどは、どうでもいいようなことばかりですが、ユーモアにあふれ
ていて楽しく響いてきます。
ところが、そんな楽しい会話の間から、チラチラと影の部分が見えてきます。
長男の命日に集まったということで話は自然にそちらへ向かい、両親の怒りや
悲しみ、次男の兄に対する屈折した思いなどが、少しずつあらわれてきます。
しかも、次男は以前から父親に反発していて、2人の関係はギクシャクしていま
す。その次男の妻は再婚で、前の夫との間に子どもがいます。それらの問題に
対しても、家族それぞれが微妙に心を揺らします。
そんな家族の心理の揺れ動きを、是枝監督が繊細にすくいとっていきます。細
部をていねいに描き、役者の一瞬の表情の変化を逃しません。
特に印象深いのが、長男が助けた男の子に対する母親の屈折した感情。そして、
同じく母親が夫に対する鬱積した思いをレコードに託して放った言葉。こちら
は、向田邦子の「阿修羅のごとく」を思い起こさせる強烈さでした。
どこの家族も、この家族と同じように、光と影の両方を持ちながら生きていく
ものなのでしょう。
母親役の樹木希林、次男の嫁役の夏川結衣、そして長女のＹＯＵ。この3人が素
晴らしい演技を見せています。
ラストは、とてもさわやかで、温かさが感じられます。様々な問題を持ちなが
らも、どこかでつながっている家族。そして、時を越えて受け継がれていく命。
家族というものについて、いろいろと考えさせてくれる映画です。
《ぽちの満足度》
★★★★☆
《ぽちのオススメ度》
★★★☆☆（＋1／2★）
（家族をテーマにした日本映画の中でもかなり良くできた映画。見ておいて損
はないと思います。）
（ぽち）
〔鑑賞データ〕
2008年6月28日（土）ワーナー・マイカル・シネマズ板橋にて。午後2時10分の
回
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