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バベル（BABEL）
（2006年 アメリカ）（上映時間２時間23分）
監督：アレハンドロ・ゴンサレス・イニャリトゥ
出演：ブラッド・ピット、ケイト・ブランシェット、ガエル・ガルシア・ベル
ナル、役所広司、菊地凛子、二階堂智、アドリアナ・バラーザ
＊日比谷スカラ座、TOHOシネマズ六本木ほかにて全国公開
ホームページ http://babel.gyao.jp/
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＜ストーリー＞
モロッコで山羊飼いの少年が放った銃弾がバスを直撃。夫リチャード（ブラッ
ド・ピット）とともに乗り合わせていたアメリカ人観光客スーザン（ケイト・
ブランシェット）を直撃する。一方、夫妻の子供たちの面倒をみていた乳母ア
メリア（アドリアナ・バラーザ）は、代わりの子守役が見つからず、仕方なく
子供たちも連れて息子の結婚式のためメキシコへ帰郷する。そんな中、銃撃事
件に使われたライフルの所有者として、東京の会社員ヤスジロー（役所広司）
の名が浮ぶ。彼の聾唖の娘チエコ（菊地凛子）は、孤独と絶望の日々を送って
いた……。
＜レビュー＞
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心して観よ！ 誰ともわかり合えない、このドンづまりの世界を……
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なんという絶望的な空気なのだろう。
オープニングのモロッコのエピソードが始まったとたん、すでにスクリーンに
は重苦しく、暗い雰囲気が漂っている。そして、案の定、最初の悲劇が起きる
……。
『アモーレス・ペロス』『２１グラム』の鬼才アレハンドロ・ゴンサレス・イ
ニャリトゥ監督によるこの映画は、観客に重たくシビアなテーマを突きつけて
きます。
描かれるのはモロッコ、メキシコ、アメリカ、日本の悲劇。
最初に起きるモロッコの銃撃事件。その犠牲になったアメリカ人観光客夫妻。
その夫妻が残してきた子供がとんでもない目にあう。一方、銃撃事件に使用さ
れた銃に関わる日本人とその娘の身にもある出来事が起きる。
ここで起きる悲劇は、すべてがほんのちょっとした手違いによるもの。けっし
て悪意によって起きたのではありません。だからこそ、なおさらツライのです。
全編を通してテーマとなっているのは、コミュニケーションの断絶。親子、夫
婦、権力と民衆、異国人同士。立場が違うだけで、お互いがうまく意思疎通で
きず、理解し合えない人々。コミュニケーション手段が発達し、グローバリズ
ムが世界を覆う現代においてなお、こうした事態に直面してしまう。そのもど
かしさが観客の胸を締め付けます。
タイトルの"バベル"がこの映画のテーマを的確に表しています。もともと同じ
言語を話していた人々が、バベルの塔をきっかけに神の怒りを買い、異なる言
語を話すようになったという有名な聖書の話です。
「結局、人間は、わかり合うことなんてできないのか？」と観ているうちに、
ますます絶望的な気分に陥ってきます。しかも、わかり合えない登場人物が、
一丁の銃によってのみ結びつくという皮肉な構図。
ドキュメンタリータッチの映像が、リアルに、容赦なく、人間たちのドンづま
りの世界を描き出していきます。
とはいえ、暗いままにラストになだれ込むわけではありません。そこには、ほ
んの微かながら光が垣間見られます。死の淵からの生還、再びつながりかける
親子の絆、本当に微かな微かな光ではあるけれど、私たちにまだ希望が残って
いることを、イニャリトゥ監督は示唆して終わるのです。
おそらく、まだ私たちにも希望の光はあるのだ。かろうじて……。
俳優陣では、なんといっても菊地凛子が話題。最初は全然女子高生には見えな
かったのに、観ているうちに違和感がなくなるから立派なもの。ハダカも全開
なれど、必然性があるのでいやらしくはありません。
それ以上に見事なのが、メキシコ人乳母役のアドリアナ・バラーザによる迫真
の演技。ブラピをはじめ、その他の人々も印象的な演技です。
まあ、これだけの映画をつくれるのは、イニャリトゥ監督をおいて他にはいな
いでしょう。現代を生きる人間の本質をグイグイと突いています。重たくて、
ズシリとくる映画です。エンタメ映画のような軽い気持ちで観に行ったらヤケ
するかも。心して観よ！！
《ぽちのオススメ度》
★★★★☆
（見応えありすぎの問題作。現代という時代や、そこで生きる人間に興味のあ
る方は必見。スカッと爽快なエンタメ映画ばかりではなく、たまにはこういう
映画もいかが？）
＜ぽち＞
〔鑑賞データ〕
2007年4月28日（土）ユナイテッド・シネマとしまえんにて。午後6時20分の回
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