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バーダー・マインホフ 理想の果てに
（THE BAADER MEINHOF COMPLEX）
（2008年 ドイツ・フランス・チェコ）（上映時間2時間30分）
監督：ウリ・エデル
出演：マルティナ・ゲデック、モーリッツ・ブライブトロイ、ヨハンナ・ヴォ
カレク、ナディヤ・ウール、ヤン・ヨーゼフ・リーファース、スタイプ・エル
ツェッグ、ニルス・ブルーノ・シュミット、ヴィツェンツ・キーファー、ジモ
ン・リヒト、アレクサンドラ・マリア・ララ、ハンナー・ヘルツシュプルング、
ゼバスティアン・ブロンベルク、ハイノ・フェルヒ、ブルーノ・ガンツ
＊シネマライズにて公開。順次全国公開
ホームページ http://baader-meinhof.jp/
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＜ストーリー＞
1967年の西ドイツ。女性ジャーナリストのウルリケ・マインホフ（マルティ
ナ・ゲデック）は、デモのさなか、学生が警官に射殺された事件を取材したの
をきっかけに、左翼運動に傾倒していく。翌年、ベトナム戦争に抗議してデ
パートに放火し逮捕されたアンドレアス・バーダー（モーリッツ・ブライブト
ロイ）らの思想に共鳴した彼女は、彼らの脱走を手引きし、抵抗運動に身を投
じる。"バーダー・マインホフ"グループは、やがてドイツ赤軍として武装闘争
を繰り広げるのだが……。
＜レビュー＞
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革命を夢見て滅んでいった若者たちに起きた出来事を再現した迫真のドラマ
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1960年代後半から70年代にかけて、ベトナム戦争の泥沼化などを背景に、世界
各国の若者たちが権力に対して抵抗の叫びを上げ、その一部が過激化していき
ました。日本では連合赤軍などが有名ですが、ドイツでは「バーダー・マイン
ホフ・グループ」のちのドイツ赤軍（ＲＡＦ）。彼らのスタートから終焉まで
をドキュメンタリータッチで描いたのがこの映画です。
デモで学生が警官に射殺される事件が起こったことをきっかけに、左翼運動に
傾倒していく女性ジャーナリストのウルリケ・マインホフ。そして、恋人のグ
ドルン・エンスリンとともにベトナム戦争に抗議してデパートに放火したアン
ドレアス・バーダー。この2人を中心に結成されたのが「バーダー・マインホ
フ・グループ」です。
監督のウリ・エデルは、けっして彼らに肩入れしたり、感情移入しているわけ
ではありません。そうかといって、権力側を擁護しているわけでもありません。
グループが行ったテロの数々、それに対抗する権力の姿、グループ内部の対立
など、事実だと思われることをできるだけ忠実に再現しようとしています。銃
撃シーンでは、実際に使われた弾丸の数まで調べる徹底ぶり。
といっても、事実を淡々と描写しているのではありません。銀行強盗のシーン
や警察や犯人との対決シーンなどは、緊迫感タップリ。まるでエンタメ映画顔
負けの盛り上げ方です。
それにしても、いったいなぜ彼らは過激化していったのか。当時の時代背景な
どを織り込んで描いているものの、それでもよくわかりません。おそらくウ
リ・エデル監督自身にも、明確にはわからないのでしょう。そういうところで
ヘンな解釈をせずに、事実だけをそのまま提示する姿勢には好感が持てます。
後半は前半とは雰囲気が違ってきます。グループはどんどん追い詰められ、主
要メンバーが逮捕されてしまいます。刑務所の中でも対抗を続けるメンバーた
ち。裁判でも過激な闘争を展開します。しかし、それは拘束前の自由な戦いと
は明らかに違います。刑務所の狭い空間に閉じ込められた彼らの心に、どんど
ん闇が忍び寄ってきます。
しかし、その間に、驚くべきことが起きます。なんと、彼らも知らない新しい
メンバーが次々に登場し、彼らを解放するために過激なテロを繰り返していく
のです。しかし、そうした中で、主要メンバーたちには大きな悲劇が……。
悲劇的なラストによって、時代に翻弄された彼ら一人ひとりの人間ドラマがク
ッキリと見えてきます。過剰な感情移入を排除していることで、かえって心が
揺さぶられます。
濃密でスリリングでスピーディーな2時間30分。欠点を言えば、あまりにも様々
な出来事が起きるので、予備知識がないとわかりにくいところがある点でしょ
うか。
今の時代にこの映画を製作することはとても意味のあることだと思います。パ
レスチナをめぐる争いをはじめ、世界はテロの連鎖を断ち切れずにいます。
バーダーたちの後継者が次々と登場したように、力で抑え込んでもテロはなく
なりません。もっと根っこのところを考えないとねえ……。
《ぽちの満足度》
★★★☆☆（+1／2★）
《ぽちのオススメ度》
★★★☆☆（+1／2★）
（事実を徹底的に再現したドラマ。時代の熱気を感じさせるスリリングな実話
もので見応えタップリ）
（田中ひろあき（ぽち））
〔鑑賞データ〕
2009年7月26日（日）シネマライズにて。午後4時30分の回
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