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バッシング
（2005年 日本）（上映時間１時間22分）
監督・脚本：小林政広
出演：占部房子、田中隆三、香川照之、大塚寧々、加藤隆之、本多菊次朗、板
橋和士
＊ シアター・イメージ・フォーラムにて公開。順次全国公開
ホームページ http://www.bashing.jp/
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＜ストーリー＞
北海道のとある海辺の町で暮らす高井有子（占部房子）は、突然、アルバイト
先のホテルをクビになる。彼女は、中東の戦時国でボランティア活動をしてい
る最中、武装グループに拉致・監禁されて人質となり、無事に解放されて帰国
したものの、"自己責任"を問われ、世間から激しいバッシングを受けていた。
ホテルの支配人もそんな世間の目を気にしてクビを言い渡したのだ。だが、彼
女にとって不幸はまだ始まったばかりだった……。
＜レビュー＞
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イラク人質事件をヒントに日本人の閉鎖性、排他性をあぶりだした社会派映画
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2004年にイラクで起きた日本人人質事件はまだ記憶に新しいところ。その時に
日本国内で起きた人質に対する激しい批判をヒントにつくられた映画です。
北海道の海辺の町に住み、中東で人質になった主人公が帰国後にどんな目にあ
い、どんな心境になったかを克明に描き出しています。
とはいえ、映画はあくまでもフィクションとしてつくられています。主人公を
はじめ登場人物の設定や、映画の中で起きる出来事はすべて架空。それによっ
て単にこの事件にとどまらない、普遍的なテーマを持つ映画になっています。
人質事件の後、帰国後に世間の激しい批判を浴び、アルバイト先をクビになり、
暴力をふるわれ、嫌がらせを受ける有子。そんな彼女を父や継母は温かく見守
るが、有子は悩み、苦しみ、憔悴していく。「私がしたことって、そんなに悪
いことなの？」
そして、さらに過酷な運命が家族に襲いかかる……。
セリフを最小限に抑え、手持ちカメラやアップを多用したドキュメンタリータ
ッチの映像でドラマは進行していきます。主人公や家族の心情が手に取るよう
にリアルに伝わってきます。
有子を演じる占部房子の存在感もあって、何かとてつもなく大きなものが、ス
クリーンのこちら側にのしかかってくる感じがします。重く、息苦しい雰囲気
に包まれたまま、スクリーンから目が離せません。
それは日本人の、いや人間の醜さを見せ付けられたことによって生まれた感情
かもしれません。まったく主人公に非がないとは言えないにしても、よってた
かって彼女をイジメ、苦しめ、家族までも過酷な運命に向かわせる世間の人々。
あそこまでやる権利が彼らにあるのでしょうか。あなたたちはそれほど品行方
正で高潔な人々なのでしょうか。少しでも異端と見れば排除し、徹底的に叩き
潰す人々。何より嫌なのが、明らかにそれをストレス解消の道具にしているバ
カどもです。
別に自分があの事件の時に、世間のバッシングを批判していたから言うわけで
はありませんが、あの時に「自己責任」なるものを持ち出してきたバカ政治家、
それをきっかけに人質批判を始めたワイドショーを中心としたアホなマスコミ、
そしてその尻馬に乗って行動した一般ピープル。お前らまとめて人間のクズだ
ぜ！！！！！！！！
というわけで、観ているうちにどんどん怒りが募ってきたのですが、できれば
もうちょっと違う面も見せて欲しかった気がします。少数とはいえ、世間の風
評を批判していた人間がいたわけだし、マスコミでもたとえば明確に世間のバ
ッシングを批判していた人がいるわけだし、そういう主人公に優しい人々の動
きもアクセント的に少しは見せても良かったかな、という気がします。
それにしても、よくぞこれだけの難しいテーマに挑んだものです。カンヌに正
式出品され、東京フィルメックスでグランプリを獲得したにもかかわらず、な
かなか上映が決まらず、ようやく小規模ながら上映された作品。よくぞ上映し
てくれたと思う反面、こういう映画が大々的に上映されない日本の映画界は狂
っとるゾ！！！ とも思うのです。
やるせないよなぁ〜。ツライよなぁ〜。また同じことが起きたら、また同じこ
とをするのではあるまいか。この国の政治家、マスコミ、一般ピープルは。
あの時、バッシングに加わった人々はこれを観て自己批判せよ！ そして、結
果的にそういう連中をのさばらせたバッシングに加わらなかった人々も、もう
一度よく考えましょうね。
こんなおかしなことが起きる国なのに、愛国心だ、国を愛せなんて言われても
なぁ〜。ようついて行けまへんワ。まったく。
《ぽちのオススメ度》
★★★★☆
（社会的テーマをフィクションの中に見事に織り込んだ秀作。あまりにも重た
い映画です。日本人なら必見！！！！！！）
＜ぽち＞
〔鑑賞データ〕
2006年６月７日（水）シアター・イメーシ・フォーラムにて。午後１時15分の回
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