BECK


(2010年 日本)(上映時間2時間25分)
監督:堤幸彦
出演:水嶋ヒロ、佐藤健、桐谷健太、忽那汐里、中村蒼、向井理、カンニング
竹山、倉内沙莉、水上剣星、古川雄大、桜田通、川野直輝、高橋努、竹中直人、
フロイド・リー、サンキ・リー、松下由樹、中村獅童
*丸の内ピカデリーほかにて全国公開
ホームページ http://www.beck-movie.jp/
■■■■■■■■■■■■■■■■■■■■■■■■■■■■■■■■

<ストーリー>
つまらない毎日を送っていた高校生のコユキ(佐藤健)は、ニューヨーク帰り
の天才ギタリスト、南竜介(水嶋ヒロ)と知り合う。彼から古いギターをもら
ったコユキは次第に音楽にのめり込む。そんな中、竜介は、ボーカルの千葉
(桐谷健太)とベースの平(向井理)をスカウトし、飼い犬にちなんで命名し
た新バンド"BECK"を結成する。一方、懸命にギターの練習に励むコユキは、
同じ高校のサク(中村蒼)とともに"BECK"に参加するのだが……。

<レビュー>
〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜
バンドをめぐる青春ドラマ。なぜ歌が聞こえない???????
〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜

大ヒット・コミックを「20世紀少年」シリーズなどで知られる堤幸彦監督が実
写映画化。

不良のパシリをさせられるなど、つまらない毎日を送っていた高校生のコユキ
が、アメリカ帰りの天才ギタリスト竜介と知り合って音楽に目覚め、やがて彼
のバンドに参加してフェスティバルのステージに立つまでを描きます。

バンドをネタにした映画は数々ありますが、その中でもバンドに関する描写は
比較的ちゃんとしています。初心者のコユキがギターの腕を上げていくところ
なども、ウソくさくなく描かれています。

しかし、それ以外はあまり観るべきところがありません。この映画の肝になる
ドラマは、ダメダメだった主人公のコユキが音楽と出会い、仲間とともに成長
し、傷つきながらも夢をかなえていく青春ドラマのはず。ところが、そのドラ
マがあまりにも薄味で心に響いてきません。

何しろ、たくさんの要素が詰まりすぎています。バンドのいざこざ、竜介とラ
イバルのギタリストとのバトル、竜介とアメリカ人のスーパーギタリストとの
友情物語、竜介が彼から譲られたワケありギターをめぐるエピソード(なんと、
それに関連してギャングまで登場)、主人公のコユキと竜介の妹とのラブス
トーリーなどなど。

それをいかにも堤幸彦監督らしく、笑いやアクションまで盛り込んで描きます。
その過剰なサービス精神が逆に勢いをそいだ感じです。不良、ギャング、大物
プロデューサーなど、登場人物にステレオタイプな人物が多いのもつまらない
ところ。

そして最も腑に落ちないのが、コユキの歌声が聞こえないこと。人々に啓示を
与えるようなスゴイ歌声らしいのですが、肝心の場面になると口パクでまった
く聞こえません。その代わり、彼の歌声が呼び起こすらしいイメージを映像で
描く不思議な演出。

それでもきっと最後にはステキな歌声を聞かせてくれるはず……と思いながら
観たクライマックスは、"BECK"がついに大フェスティバルに出演する場面。
一生懸命に盛り上げているものの、観客動員を競うという設定はどうなんでし
ょう? およそロックにふさわしくない陳腐な設定でガッカリです。

しかも、なんとなんと、コユキの歌声は、最後の最後まで聞こえないのです。
なんじゃ、そりゃ? プロの歌手の吹き替えでもいいから、ちゃんと歌声を聞
かせてくれないと不完全燃焼で、どうにも納得できません。何を狙ってあんな
演出にしたのか、さっぱりワケがわかりません。最後の最後まで不満の残る映
画でした。

≪ぽちの満足度≫
★☆☆☆☆(+1/2★)

≪ぽちのオススメ度≫
★★☆☆☆
(見どころもそれなりにありますが、肝心の青春ドラマが貧弱ではどうしよう
もありません。肝心の歌声が聞こえないのも奇異。)
                           (田中ひろあき(ぽち))

2010年9月29日(水)池袋シネマサンシャインにて。午後2時10分の回。


[「へ」のページ] [「アルファベット」のページ]