ベンジャミン・バトン 数奇な人生
(THE CURIOUS CASE OF BENJAMIN BUTTON)


(2008年 アメリカ)(上映時間2時間47分)
監督:デヴィッド・フィンチャー
出演:ブラッド・ピット、ケイト・ブランシェット、タラジ・P・ヘンソン、ジ
ュリア・オーモンド、ジェイソン・フレミング、イライアス・コーティーズ、
ティルダ・スウィントン、ジャレッド・ハリス、エル・ファニング
*丸の内ピカデリー1ほかにて全国公開
ホームページ http://wwws.warnerbros.co.jp/benjaminbutton/
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<ストーリー>
1918年、ニューオーリンズ。80代の老人のような赤ん坊が誕生する。ショック
を受けた父親に老人ホームに置き去りにされた赤ん坊は、施設で働く黒人女性
クイニーに拾われベンジャミンと名付けられる。長くは生きられないといわれ
たが、成長するにつれ若返って元気になっていくベンジャミン(ブラッド・ピ
ット)。そんなある日、ベンジャミンは、施設入居者の孫娘で6歳の少女デイ
ジーと出会い、ひとめぼれするのだが……。

<レビュー>
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数奇な男の恋と人生を淡々と描いた見事に計算されたドラマ
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F・スコット・フィッツジェラルドが1920年代に著わした短編をもとに、80歳
の老人として生まれ、年を取るごとに若返っていく男の波瀾に富んだ人生を描
いたドラマ。よくできた映画ですが、ストレートな感動を求めると裏切られま
す。

主人公ベンジャミンがかつて愛した女性デイジーが死の床につき、そこで自分
の娘にベンジャミンの日記を読ませ、彼の人生を振り返るという構成。

冒頭に登場するのは、戦争で子供を亡くした時計職人が、逆周りの時計をつく
るという象徴的なエピソード。誰もが思うことであり、絶対にかなわないこと
だけに、物語のプロローグとして効果的なエピソードです。

その後は、生まれてすぐに母を亡くし、父に捨てられたベンジャミンが、老人
ホームで大切に育てられ、成長していく姿が描かれます。

第二次世界大戦をはじめ20世紀のアメリカに起きたことを背景に、船乗りにな
ったり、貴婦人と禁断の恋に落ちたりと、起伏に満ちた人生が描かれるのです
が、その描き方は実に淡々としています。これといった盛り上がりもなく、
サーッと流れていく感じ。

デイジーとの関係にしても、貴婦人との関係にしても、のちに再会する父親と
の関係にしても、なんだか薄味な描き方です。

しかも、物語の中心になるデイジーとの悲恋話が本格的にスタートするのは、
映画が始まって1時間半ほど過ぎてから。それも最初のうちは、ひたすら両者
の思いが空回りしてすれ違うばかり。これでは「感動のドラマ」になどなるは
ずがありません。

ただし、その後、2人が本格的に付き合い始めるようになると、ジンワリとし
た感動が訪れます。

どんどん若返るベンジャミン。そして、どんどん年をとっていくデイジー。2
人の関係はまさに究極のすれ違い。一度はハッピーになるかと思いきや、乗り
越えがたいすれ違いに翻弄されるその姿には、切なさを覚えてしまいます。後
半はなかなかよくできたメロドラマです。

しかも、絶対に後戻りできない人生について、観客にあれこれと考えさせるよ
うなつくりにもなっています。

それにしても、風変わりな人物の人生を描くのはアカデミー賞受賞作によくあ
るパターン(最近では『ビューティフル・マインド』など)。ストレートな感
動を追求せず抑制的に描くのも同じ。アメリカの歴史を散りばめるところも、
よくあるパターン。ということは、これって、もしかして完全に賞ねらいの映
画? な〜んて思ってしまったのでした。

まあ、そのぐらい計算されてつくられていますよ。監督は『セブン』『ファイ
ト・クラブ』『ゾディアック』のデビッド・フィンチャーですが、デイジーの
交通事故のエピソードの描き方や、雷に打たれる老人の話など一部に個性的な
面は発揮されているものの、基本的にはおとなしめの演出。きっちりと賞ねら
い映画に仕上げています。

ブラッド・ピット、ケイト・ブランシェットの演技を引き立てているのも、計
算されたワザ。特殊メイクやCGも含めて見事な仕事ぶりです。

《ぽちの満足度》
★★★☆☆

《ぽちのオススメ度》
★★★☆☆
(とにかく、よく計算されてつくられた映画。2時間半以上の長さを感じさせ
ません。ただし、個人的にはあまりに計算されすぎていて、ちよっと違和感が
……。)
                             (田中ひろあき(ぽち))
〔鑑賞データ〕
2009年2月8日(日)ユナイテッド・シネマとしまえんにて。午後3時15分の回。


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