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ボーダータウン 報道されない殺人者
（BORDERTOWN）
（2006年 アメリカ）（上映時間1時間52分）
監督・脚本：グレゴリー・ナヴァ
出演：ジェニファー・ロペス、アントニオ・バンデラス、マヤ・サパタ、マー
ティン・シーン、ファン・ディエゴ・ボト、ソニア・ブラガ、フアネス
＊シャンテシネほかにて公開。順次全国公開
ホームページ http://www.bordertown.jp/
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＜ストーリー＞
シカゴの新聞社の女性記者ローレン（ジェニファー・ロペス）は、メキシコと
アメリカの国境の街、フアレスで起こっている連続女性殺害事件の取材を命じ
られ現地へと向かう。そこで新聞社を経営する元同僚ディアス（アントニオ・
バンデラス）と再会したローレンは、一人の少女エバと出会う。彼女は、一連
の事件で奇跡的に生還した被害者だった。エバの証言を糸口に、事件の真相究
明に乗り出すローレンだが……。
＜レビュー＞
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殺人事件事件を追う女性記者を通して、社会の闇に迫ったサスペンス
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ジェニファー・ロペスといえば、押しも押されもしない大スター。そんな彼女
がこんな社会派映画に出てしまうところが、アメリカ映画界の奥深いところか
も……。
彼女が演じるのは、シカゴの新聞社の敏腕女性記者ローレン。上司に命じられ
て連続殺人事件の取材のために、メキシコのアメリカ国境の街へ。そこで殺人
鬼に襲われながら奇跡的に生還した少女と出会い、かつての同僚で現在は反政
府系新聞社を経営するディアスの協力を得ながら、事件の真相に迫っていきま
す。ところが、そこには恐ろしい闇が隠れていて……。
基本的な物語の構図は、一人の女性記者が殺人事件の真相に迫るサスペンス。
最初は嫌々取材を始めた彼女が、どんどんのめりこんでいって、危険な目にあ
いながらも悪に立ち向かう姿がスリリングに描かれます。
映像も鮮烈でメリハリがきいています。犯罪シーンや町の風景などを中心にド
キュメンタリータッチの映像を織り込みながら、緊張感を持続させます。
途中にはアクションシーンもあるし、人気歌手のフアネスの演奏などもあり、
エンターティメントとして十分に楽しめるように配慮されています。ごく普通
のサスペンスとして観ても、かなり面白い映画だと思います。
それでも、やはり単なるエンタメ映画とは違います。この映画は実話に基いた
ドラマ。現地では、10数年前から女性が犠牲となる殺人事件が急増し、一説で
は行方不明の女性は5000人にも及ぶといわれているそうです。しかも、その多
くが未解決事件。
どうして、そんなことになっているかというと、その背景にはＮＡＦＴＡ（北
米自由貿易協定）の存在があり、大儲けをしている国家や企業が、都合の悪い
ことをできるだけ隠そうとしている事実があります。警察も情報を隠蔽し、ま
ともな捜査をしません。それによって泣きを見るのは労働者。特に女性たちで
す。
事実を報道しなければいけないマスコミも、ビジネスの論理の前では無力。主
人公の書いた記事をめぐるトラブルで、編集長が吐いた言葉が強烈です。「も
う調査報道の時代じゃない。タイプライターと一緒に死んだんだ」。
この映画では、そうした世の中の状況を痛烈に批判しています。これはメキシ
コの話ですが、グローバル化による弊害が起きているすべての国に当てはまる
問題かもしれません。
後半、主人公の捨て身の作戦で犯人が明らかになります。それで終わりかと思
ったら、その後にはまだひと波乱もふた波乱も用意されていました。このあた
りの盛り上げ方も手が込んでいます。
ラストも単純なハッピーエンドではなく、観客に多くのことを考えさせる余韻
の残るつくりになっています。
主人公と元同僚との過去の関係、主人公の幼少時にあった悲劇的な出来事など
も盛り込まれているため、あまりにギッシリで消化不良の部分があるのが多少
残念なところ。
とはいえ、社会派の要素とエンターティメントの要素をバランスよく並べて、
大きな問題提起をしているところは見応え十分。間違いなく一級品の社会派サ
スペンスです。
《ぽちの満足度》
★★★☆☆（＋1／2★）
《ぽちのオススメ度》
★★★☆☆（＋1／2★）
（１つの殺人事件をめぐるサスペンスから、大きな社会的テーマに迫る切り口
が素晴らしい！）
（田中ひろあき（ぽち））
〔鑑賞データ〕
2008年10月26日（日）シャンテシネにて。午後2時の回
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