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ブッシュ（W.）
（2008年 アメリカ）（上映時間2時間10分）
監督：オリバー・ストーン
出演：ジョシュ・ブローリン、エリザベス・バンクス、エレン・バースティン、
ジェームズ・クロムウェル、リチャード・ドレイファス、スコット・グレン、
トビー・ジョーンズ、ステイシー・キーチ、ブルース・マッギル、タンディ・
ニュートン、ジェフリー・ライト、コリン・ハンクス、ヨアン・グリフィズ
＊角川シネマ新宿ほかにて公開
ホームページ http://www.bush-movie.jp/
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＜ストーリー＞
名門ブッシュ家に生まれたジョージ・Ｗ・ブッシュ（ジョシュ・ブローリン）
だが、エール大学に入ったものの、トラブルばかり起こすようになり、父の期
待は弟ジェブに向けられる。やがて政治家を目指すが、1988年の大統領選で父
の選挙戦を手伝ううちに、ますます自分の存在が小さく思えてくる。だが、あ
る日、「お前が大統領になるのだ」という神の啓示を聞いて……。
＜レビュー＞
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ブッシュ元大統領の愚行の原点はコンプレックスだった！？
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過去に『ＪＦＫ』『ニクソン』と2人のアメリカ大統領を映画にしてきたオリ
バー・ストーン監督が、今度はブッシュ前大統領を描いた映画。
人気パンク・ロックバンドのグリーン・デイに「アメリカン・イディオット」
と歌われるまでもなく、アホとして知られるブッシュ。しかし、そのアホぶり
を徹底的にコキおろしたコメディー・タッチの映画というわけではなく、けっ
こうマジメな人間ドラマです。
舞台となるのはイラク戦争開戦前のホワイトハウス。ブッシュとその側近がい
かにして戦争に突入していったかを描くのと並行して、若き日のブッシュを描
き、彼の行動の原点にあるものを探ります。
名門の家に生まれ、父は議員、兄は超優秀。なのになぜか自分はダメダメ。し
ょっちゅう問題ばかり起こして、仕事も長続きせず、父から兄と比較される
日々。一念発起して挑んだ選挙にも落選して、ますますコンプレックスの塊に
……。
というわけで、父親に対するコンプレックスが、ブッシュの愚行の根底にある
というのがオリバー・ストーン監督の解釈。イラク戦争の背景にも、湾岸戦争
でフセインを殺さなかったパパ・ブッシュを乗り越えようとする心理が見えま
す。
そこに微妙な影を落とすのがチェイニー副大統領をはじめとする側近たち。パ
パ・ブッシュの側近だった者も多く、本来ならブッシュを押しとどめなければ
ならないのに、逆に煽るだけ煽る始末です。
それにしても、夢の中にまで父親が出てきてうなされるブッシュを見ているう
ちに、なんだか憐れになってしまいました。もしも彼が大統領になんかならな
ければ、本人にとってもアメリカにとっても幸せだったでしょうに。器でない
人物が大統領に選ばれてしまう恐ろしさを痛感させられます。
後半は、いよいよイラク戦争間近の状況を描く政治ドキュメンタリー的な展開。
その開戦を決定する経緯は、信じられないお粗末さ。不確かだった大量破壊兵
器の存在が、いつの間にか確実なものとされ、さらに石油利権など自国の利益
のみを追求する側近たち。アメリカの横暴に振り回された世界はいい迷惑です。
やがて自らが間違いを犯したらしいことを理解するブッシュ……。いまさら遅
いっつうの！！
ブッシュに扮したジョシュ・ブローリンの演技が絶品です。以前はあまり演技
派には思えなかったものの、最近は『ノーカントリー』『ミルク』などで抜群
の存在感を披露。今回も完全に本人になりきった演技でした。
父親役のジェームズ・クロムウェル、チェイニー副大統領役のリチャード・ド
レイフェスなど脇を固めるのも演技派ばかり。本人たちの特徴を的確につかん
だ演技が見事です。
「もう二度とあんなのを大統領にするのはやめようぜ」てなオリバー・ストー
ンのメッセージが聞こえてきそうな映画。日本だって他人事ではありませんよ
ね。
《ぽちの満足度》
★★★☆☆（＋1／2★）
《ぽちのオススメ度》
★★★☆☆（＋1／2★）
（悪い意味で歴史に名を残した大統領の人生を描いただけに、一見の価値はあ
ると思います。）
（田中ひろあき（ぽち））
〔鑑賞データ〕
2009年5月16日（土）角川シネマ新宿にて。午後3時55分の回
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