チェ 28歳の革命(CHE: PART ONE)


(2008年 スペイン・フランス・アメリカ)(上映時間2時間12分)
監督・撮影:スティーブン・ソダーバーグ
出演:ベニチオ・デル・トロ、デミアン・ビチル、サンティアゴ・カブレラ、
エルビラ・ミンゲス、カタリーナ・サンディノ・モレノ、ロドリゴ・サントロ、
ジュリア・オーモンド
*日劇3ほかにて全国公開
ホームページ http://che.gyao.jp/
■■■■■■■■■■■■■■■■■■■■■■■■■■■■■■■■

<ストーリー>
1955年、アルゼンチン人の青年医師エルネスト・ゲバラ(ベニチオ・デル・ト
ロ)は、南米大陸の旅を続ける。そんなゲバラはある日、独裁政権に牛耳られ
た祖国キューバで革命を計画する反体制派フィデル・カストロと出会い意気投
合する。28歳の若さで無謀とも思えるゲリラ戦に身を投じるゲバラだったが…
…。

<レビュー>
〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜
ソダーバーグとベニチオ・デル・トロの情熱が伝わってくるゲバラの伝記映画
〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜

いくらソダーバーグ監督&ベニチオ・デル・トロ主演コンビの映画とはいえ、
チェ・ゲバラの伝記映画ならば単館系での上映だろう……と思っていたら、な
〜んと全国ロードショー。しかもけっこうな動員のようです。みんなゲバラが
好きなんですねぇ。というボクも昔からゲバラが好きで、Tシャツやバッジを
買ったりしたものです。

そんなカリスマともいえるゲバラを神格化せずに、できるだけありのままを描
き出したのがこの映画。2部作、総上映時間4時間25分の大作の第1部です。

中心となるのはゲリラ戦。ゲバラと周囲の人々の言動を、つぶさに描いていき
ます。ジャングルでのゲリラ戦が多いので、そんなにハデな戦闘シーンではな
いのですが、さすがにドキュメンタリータッチを得意とするソダーバーグ監督
だけあって、リアルで迫力あるシーンが連続します。

しかも、ゲバラを主人公に据えながら、カメラは周囲の様子も丹念に映します。
いわばゲバラ目線の映像が多いせいで、見ているこちら側がゲバラになって、
ゲリラ戦に参加しているような気分になってきます。

前半は、元々は医者のゲバラが、持病の喘息に苦しみながらも、少しずつゲリ
ラの指導者として成長していきます。部下をコントロールするのに苦労する姿
や、カストロはじめ仲間たちとの微妙な人間関係なども描かれます。

それと並行して、革命達成後にアメリカに渡って、国連で演説をしたり、イン
タビューに答えたりする姿も登場します。それによって、ゲバラがどういう人
物で、何を考えてゲリラ戦に参加したのかが明確に伝わってきます。

後半になると、ゲリラ戦もいよいよクライマックスに突入。街中でのドハデな
銃撃戦や爆破シーンなどもあり、かなりの迫力。手持ちカメラを多用したスリ
リングなシーンは、普通の戦争映画としてもなかなかのもの。

全編を通して感じたのはゲバラの純粋さ。革命の源泉を「愛」と言い切る革命
家は彼ぐらいなのでは?

不正や不公正に対して厳しいのも特徴。住民をひどい目に合わせた仲間の兵士
を容赦せずに処刑する一方で、負傷兵を置き去りにしない人間性も持ち合わせ
ています。

こういう純粋さってうらやましいですね。今の時代にこういう人がいたなら、
世界は少しはマシになっていたかも……。

ゲバラに興味のある人はもちろん、そうでない人も観る価値がありそうです。
ただのカリスマとして描かなかったことで、ゲバラの新たな魅力が見えてきま
す。

ゲバラを演じるベニチオ・デル・トロのすさまじい存在感だけでも元は取れそ
う。何も言わずに立っているだけでオーラが出まくりです。自身が製作にも関
わっているということで、ソダーバーグ監督ともども、熱い情熱が伝わってき
ます。

第2部にも大期待!!!

《ぽちの満足度》
★★★★☆

《ぽちのオススメ度》
★★★☆☆(+1/2★)
(ベニチオ・デル・トロの渾身の演技だけでも観る価値あり。第2部への期待
も込めて……。)
                              (田中ひろあき(ぽち))
〔鑑賞データ〕
2009年1月11日(日)ユナイテッド・シネマとしまえんにて。午後4時の回。


[「ち」のページ]