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長江哀歌（エレジー）（三峽好人）
（2006年 中国）（上映時間１時間53分）
監督・脚本：ジャ・ジャンクー
出演：チャオ・タオ、ハン・サンミン、ワン・ホンウェイ、リー・チュウビン、
マー・リーチェン ヤオメイ、チョウ・リン、ホァン・ヨン
＊ シャンテシネほかにて公開。順次全国公開
ホームページ http://www.bitters.co.jp/choukou/
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＜ストーリー＞
長江の三峡ダム建設によって水没することが決まっている三峡の街・奉節。16
年前に別れた妻子を探しに山西省からやってきた炭鉱夫ハン・サンミン（ハ
ン・サンミン）だったが、かつて妻が住んでいた場所はすでに水没していた。
一方、同じく山西省から、２年間も音信不通の夫を探しにやってきた女シェ
ン・ホン（チャオ・タオ）は、夫が働いていた工場を訪ねるが、そこに彼はも
ういなかった……。
＜レビュー＞
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ダムに沈む街を舞台に展開する２人の男女の物語。哀愁とたくましさと……
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『一瞬の夢』『プラットホーム』『世界』など、急激な経済発展の狭間で揺れ
動く中国の人々の姿をリアルに捉えてきたジャ・ジャンクー監督による新作。2
006年のヴェネチア国際映画祭グランプリ受賞作。
今回の舞台は、長江の巨大プロジェクト三峡ダム建設によって、まもなく水没
する街・奉節。そこに愛する人を探しにきた２人の男女が主人公。といっても、
両者が直接関わることはありません。それぞれの姿が並行して描かれます。
前半は、16年前に別れた妻子を探しにき炭鉱夫ハン・サンミンの物語。妻のい
た場所はすでに水没し、他の場所に働きに出ている。そこで、建物の解体現場
で働きながら、妻が戻るのを持つことにする。その中で、地元の労働者や若者
などとふれあっていく。
中盤は、音信不通の夫を探しにきた女シェン・ホンの物語。働き場所の工場に
夫の姿はなく、夫の友人の協力を得て夫を探す。その中で、彼女は開発で豊か
になった人々を目にしていく。
この２人の人間ドラマは、実に奥行きが深いものになっています。微妙な男女
の心理を巧みに切り取るジャ・ジャンクー監督の手腕が見事です。
過去の作品でもおなじみの長回しの映像。セリフを極力削ぎ落とし、行間で登
場人物の微妙な心理をすくい取っていきます。しかも、今回はＳＦのような現
実離れした映像も織り込んで、より豊かな映像世界を構築しています。もちろ
ん、長江の美しい大自然も鮮やかに映し出されます。
やがて、シェン・ホンと夫との関係にはある結論が出ます。それはとても苦く
て、切ないもの。シェン・ホンの愛憎渦巻く複雑な心理が巧みに描写されます。
そして、その後は炭鉱夫ハン・サンミンと妻との関係にも、一応の区切りがつ
きます。こちらも苦味はあるものの、それを上回るたくましさが感じられる展
開。
物語の中心は、この２人の男女の物語ですが、同時に、周囲の失われゆく街と
人々の生き様が描かれます。諦めと絶望に包まれながらも、それでも力強く生
き抜こうとする市井の人々の姿には、圧倒されるばかりです。
過去の作品と同様に、監督自身のメッセージが強烈に伝わってくることはあり
ません。中国の「今」をそのまま、あるがままに切り取るのがこの監督の持ち
味。今回も、それは不変です。ある意味で、ドキュメンタリーよりもドキュメ
ンタリーらしく、現代中国を描いた映画といえるでしょう。
ただし、過去の作品が若者を描いていたのに対して、今回は中年以降の男女を
描いているため、従来のような鮮烈さや衝撃はあまりありません。その代わり、
独特の哀愁やユーモアがより強く感じられる作品になっています。
主演の２人、チャオ・タオ、ハン・サンミンはいずれもジャ・ジャンクー作品
の常連。特にチャオ・タオの内に秘めた感情表現が印象的。同じく常連のワ
ン・ホンウェイもいつも通りの存在感で、良い味を出しています。
巨大プロジェクトに翻弄される人々を通して、中国の今をリアルに映し出した
映画。それは中国だけでなく、世界中のどこにでも見られる情景なのかもしれ
ません。中国は、そして世界はどこに行くのか……。
《ぽちの満足度》
★★★☆☆（＋1／2★）
《ぽちのオススメ度》
★★★☆☆
（無名の市民たちを描き続けるジャ・ジャンクー監督らしい映画。人々の息吹
がリアルに伝わってきます。ただし、ストレートな感動物語ではないのでご注
意を。）
＜ぽち＞
〔鑑賞データ〕
2007年8月25日（土）シャンテシネにて。午後2時25分の回。
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