|
ココ・アヴァン・シャネル（COCO AVANT CHANEL）
（2009年 フランス）（上映時間1時間50分）
監督：アンヌ・フォンテーヌ
出演：オドレイ・トトゥ、ブノワ・ポールブールド、エマニュエル・デュボス、
マリー・ジラン、アレッサンドロ・ニボラ
＊丸の内ピカデリーほかにて全国公開
ホームページ http://wwws.warnerbros.co.jp/cocoavantchanel/
■■■■■■■■■■■■■■■■■■■■■■■■■■■■■■■■
＜ストーリー＞
姉とともに田舎の孤児院で育ったガブリエル・シャネル（オドレイ・トトゥ）
は、やがて仕立屋でお針子として働きながら、ナイトクラブの歌手として歌う
ようになる。そんなある日、貴族のエティエンヌ・バルザン将校に見初められ
愛人関係になる。だが、そんな生活に不満を持つようになったシャネルは、彼
女の才能を理解するイギリス人実業家ボーイ・カペルと親しくなって……。
＜レビュー＞
〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜
シャネルの生き方とファッションの原点となった若き日の恋愛を描く
〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜
誰でも知っている世界的ファッション・デザイナー、ココ・シャネル。彼女の
人生を描いた伝記映画です。
というと、ファッションデザイナーとしての華やかな活躍ぶりを思い浮かべる
かもしれませんが、この映画で描かれるのは、彼女がデザイナーになる前のお
話。しかも、２人の男性との恋愛模様が中心です。
母が死に、父に見捨てられて、姉とともに孤児院で育ったシャネル。成長する
とお針子をしながら、ナイトクラブで歌手として歌います。そこに現れたのが
貴族で将校のエティエンヌ。しばらくして彼の豪華な屋敷に押しかけて、その
まま居座ったシャネルは愛人となって何不自由のない生活を手に入れます。し
かし、次第に現状に飽き足らなくなってくる中で、帽子のデザインで才能を見
せ始めます。そんな彼女の前に現れたのが実業家のボーイ。彼女の才能を評価
してくれる彼と親しくなるシャネルですが……。
劇的な出来事はほとんどありません。タッチも全体に抑制的。その代わりに、
シャネルの心の内面を繊細に描き出していきます。
ユニークなのは、シャネルが最初から反骨精神の持ち主で、ズケズケと遠慮な
くものを言う女性であること。下層階級の娘が人生を変えるには玉の輿に乗る
以外にない時代に、こういうタイプの女性は貴重な存在。だからこそ新しい時
代の先駆者になれたのでしょう。
恋愛ドラマが中心の映画とはいっても、監督が描きたかったのは恋愛そのもの
よりも、それを通して様々なことを身につけ、成長していったシャネルの姿で
す。男に媚びて尽くすことを拒否し、自立する生き方を選択するようになった
彼女の原点がそこに見えます。
また、それは彼女のデザインの原点でもあります。コルセットで体を締め付け、
派手な装飾を施した当時の女性のファッションとは違い、シンプルかつ斬新で、
着心地もよいシャネルのファッションが、彼女の人生そのものから生まれたこ
とがよくわかります。
もちろん、彼女にも悩みや苦しみがあります。特に結婚に関しては、人並みに
心が揺れ動きます。それでも、最後には決然として自立した道を選び、２人の
男性との恋愛遍歴を無駄にすることなく生きたシャネル。ラストのショーで喝
采を浴びる誇らしげな笑顔が印象的です。
『アメリ』のオドレイ・トトゥはシャネルにピッタリです。強気で力強い表情
だけでなく、その影に見え隠れする弱さもきちんと表現しています。
女性が自立することが困難な時代に、様々な経験を重ねてたくましく生きたシ
ャネルの原点がよく伝わってくる映画です。
《ぽちの満足度》
★★★☆☆
《ぽちのオススメ度》
★★★☆☆
（派手さはないけれど、シャネルのことがよくわかる映画。ただし、デザイ
ナーとしての活躍は描かれないのでご注意を。）
（田中ひろあき（ぽち））
〔鑑賞データ〕
2009年9月22日（火）新宿ピカデリーにて。午後1時50分の回
[「こ」のページ] |