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クロッシング（BROOKLYN'S FINEST）
（2009年 アメリカ）（上映時間2時間12分）
監督：アントワン・フークア
出演：リチャード・ギア、イーサン・ホーク、ドン・チードル、ウェズリー・
スナイプス、 ウィル・パットン、エレン・バーキン、ヴィンセント・ドノフリ
オ、ブライアン・Ｆ・オバーン、マイケル・ケネス・ウィリアムズ、リリ・テ
イラー
＊TOHOシネマズシャンテ、新宿武蔵野館ほかにて全国公開
ホームページ http://www.cross-ing.jp/
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＜ストーリー＞
ニューヨーク、ブルックリンの犯罪多発地区で、警官による強盗事件が発生す
る。マスコミの非難を恐れたニューヨーク市警は、犯罪の取締り強化でイメー
ジ回復を狙う。そんな中、引退を1週間後に控えたベテラン警官エディ（リチ
ャード・ギア）、麻薬捜査課の刑事サル（イーサン・ホーク）、覆面捜査官の
タンゴ（ドン・チードル）は、それぞれに深い悩みを抱えていた……。
＜レビュー＞
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苦悩する3人の警官の心の闇をリアルに描く
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ニューヨーク・ブルックリンの3人の警官の生き様と心の闇を描いた群像劇。
その3人とは、リチャード・ギア扮するベテラン警官エディ、イーサン・ホーク
扮する麻薬捜査官サル、ドン・チードル扮する潜入捜査官タンゴ。
退職をあと数日後に控えたエディは、これといった功績もなく、妻とは別居し、
なじみの娼婦に安らぎを見出す日々。一方、サルは病身の妻や子のために家を
買おうとして、悪事に手を染めています。そして、ギャング組織に潜入するタ
ンゴは、早く昇進してオフィスに戻りたいのに、なかなか願いがかなわず妻に
も離婚を迫られています。
映画の冒頭は、車中での会話。突然、発砲音が響くショッキングなシーンでド
ラマの幕が開きます。ここからすでに重苦しく、ヒリヒリするような緊張感が
スクリーンを覆います。この緊張感は、最後の最後まで途切れることがありま
せん。
その後、ブルックリンの犯罪多発地区で、警官による強盗事件が発生。マスコ
ミの非難を恐れたニューヨーク市警は、イメージ回復のために犯罪の取締りを
強化します。
そんな中で、エディは若い警官の教育係を命じられ、やる気満々の若手に手を
焼きます。サルは家の頭金が用意できずに焦燥感にさいなまれます。そして、
タンゴは命の恩人のギャングを罠にはめるように指示されて戸惑います。
3人ともまさにドン詰まりの人生。袋小路から抜け出せません。どこにも持って
いきようのない苦悩を抱えて、善と悪の狭間で身もだえしながら、どうにか現
実に踏みとどまっています。
『トレーニング・デイ』『ザ・シューター／極大射程』のアントワン・フーク
ア監督が、3人の警官の心理を巧みにえぐり出します。それぞれの気持ちがリア
ルに伝わってきて、観ているこちらも切なくなってきます。後半に進むにつれ
て、3人の苦悩はますます深まり、焦燥感も増していきます。
終盤、それまでほとんど交わることのなかった3人が、同じ場所に集まります。
そこで、彼らの運命が大きく交差し、衝撃的なドラマの結末を迎えます。光を
求めてもがいていたサルとタンゴの背後に、ああいう形で光を映し出すフーク
ア監督の皮肉な演出。あまりにも切なすぎるシーンです。そして、エディはど
こへ向かうのか……。
リチャード・ギアの従来のイメージを覆すような演技が印象的。イーサン・
ホークの苦悩に満ちた演技も冴えています。
ニューヨークの警官の話ではありますが、今の時代（特にアメリカの現状）と
そこで生きる人々の心の奥底に迫るような深みのあるドラマです。見応えは十
分。こういう、重くて、暗くて、救いのない映画がヒットするのだから、アメ
リカの映画界も捨てたものではありません。それに比べて日本は……。
≪ぽちの満足度≫
★★★★☆
≪ぽちのオススメ度≫
★★★☆☆（＋1／2★）
（重くて救いのない展開なので気軽に楽しめるわけではありませんが、深みの
ある人間ドラマで見応えは十分です。）
（田中ひろあき（ぽち））
〔鑑賞データ〕
2010年11月1日（月）新宿武蔵野館にて。午後1時の回
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