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誰も守ってくれない
（2008年 日本）（上映時間1時間58分）
監督：君塚良一
出演：佐藤浩市、志田未来、松田龍平、石田ゆり子、佐々木蔵之介、佐野史郎、
津田寛治、 東貴博、冨浦智嗣、木村佳乃、柳葉敏郎
＊有楽座ほかにて全国公開
ホームページ http://www.dare-mamo.jp/
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＜ストーリー＞
未成年の兄が小学生姉妹殺人事件の容疑者として逮捕されてしまった15歳の沙
織（志田未来）。刑事の勝浦（佐藤浩市）は、マスコミに追われ世間の非難に
さらされる彼女の保護を命じられる。だが、直後に沙織の母が自殺。必死で沙
織を匿おうとする勝浦だったが、マスコミはその度に居場所を突き止めて追い
かけてくる。やがて勝浦は沙織を連れて、地方へと向かうのだが……。
＜レビュー＞
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傷ついた少女と刑事の逃避行を描いた人間ドラマ
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少年犯罪の加害者の妹と、それを保護する刑事の物語。
最初に気になったのは、登場するマスコミや警察、世間の人々の描き方がステ
レオタイプなこと。事件が明るみに出ると同時に、被害者の家にマスコミが殺
到して、激しいバッシングが始まるというのは自然な展開ですが、ディテール
がどうにも不自然です。
たとえば、佐々木蔵之介演じる新聞記者。「加害者の家族も同罪だ」という主
旨の発言を平気でするのは、いかがなものか。内心そう思っても、本当の新聞
記者なら、そんなこと人前で堂々と言わないでしょう。そういうところが、と
ってもウソくさいのです。
もしかしたら、これは意図した不自然さかもしれません。何しろテーマが重た
く暗い映画です。少しでもわかりやすい展開にして、エンターティメント性を
高めようとしたのかもしれません。最初のほうではカーチェイスまで出現！…
…ですもの。
だって製作はフジテレビ。「踊る大捜査線」のチーム。監督の君塚良一（共同
脚本も担当）も、もともとテレビドラマの脚本家で売れた人ですからね。
そのおかげで、せっかくの社会的テーマがリアルに響いてきません。少年犯罪
とそれをめぐるマスコミ、警察、世間の態度。特にネット社会の恐ろしさなど
に、大きな問題提起をしているにもかかわらず、その問いかけが虚ろに聞こえ
てしまいます。
ただし、そうした社会派の側面をあまり意識しすぎないで、人間ドラマとして
観るとけっこう見応えがあります。
突然信じられない形で家族を失い、世間から追われる少女。そして、過去の大
きなトラウマを引きずり、家族崩壊に直面している中年刑事。そんな２人が出
会い、心を通わせたり、反発したり、周囲と戦いながら、やがて変化していき
ます。
さらに、そこに刑事のトラウマと大きく関わるある家族を登場させ、「家族」
というキーワードをより色濃く打ち出した人間ドラマです。
劇的な変化が訪れるわけではなく、安易なハッピーエンドが待っているわけで
もありません。それでも、ほんの少しだけ、そして確実に、彼らは前に進んで
いきます。
ラストは、かすかながら明るい光を見せてくれます。タイトルにあるように、
少女を誰も守ってくれません。彼女は自分で自分を守らなければいけないので
す。しかし、それはけっして孤独だということではありません。どんなにひど
い仕打ちを受け、傷つけられても、温かい手を差し伸べてくれる人がどこかに
必ずいるはず。そんなことを感じさせてくれるラストでした。
人間ドラマとしてはリアルで、心を揺さぶられる映画です。冒頭などのドキュ
メンタリータッチの映像も見応えがあります。逃走先の海の美しさも印象的。
佐藤浩市をはじめ、石田ゆり子、柳葉敏郎といったベテラン・中堅の演技はさ
すがですが、驚いたのは志田未来の演技。とにかく目の力がすごいんです。
『カナリア』で初めて谷村美月を観た時の衝撃に匹敵するかも……。今後がと
ても楽しみです。
《ぽちの満足度》
★★★☆☆
《ぽちのオススメ度》
★★★☆☆
（社会的なテーマはリアルに響いてきませんでしたが、人間ドラマとしてはけ
っこう見応えがありました。）
（田中ひろあき（ぽち））
〔鑑賞データ〕
2009年2月7日（土）ユナイテッド・シネマとしまえんにて。午後2時の回。
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