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フェアウェル さらば、哀しみのスパイ（L'AFFAIRE FAREWELL）
（2009年 フランス）（上映時間1時間53分）
監督・脚本：クリスチャン・カリオン
出演：エミール・クストリッツァ、ギョーム・カネ、アレクサンドラ・マリ
ア・ララ、インゲボルガ・ダプクナイテ、アレクセイ・ゴルブノフ、ディナ・
コルズン、フィリップ・マニャン、ニエル・アレストリュプ、フレッド・ウ
ォード、デビッド・ソウル、ウィレム・デフォー、エフゲニー・カルラノフ、
バレンチン・バレツキー
＊シネマライズほかにて全国公開
ホームページ http://www.farewell-movie.jp/
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＜ストーリー＞
1980年代初頭、ブレジネフ政権下のソ連。ＫＧＢの幹部、グリゴリエフ大佐
（エミール・クストリッツァ）は、ＫＧＢの極秘情報を東西冷戦の敵側陣営で
あるフランスに流していた。その仲介役となったのは、フランスの民間人ピ
エール（ギョーム・カネ）。危険な任務に戸惑うピエールだったが……。
＜レビュー＞
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ユニークなキャストで描く迫真の実録スパイドラマ
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旧ソ連崩壊のきっかけをつくったともいわれる1980年代のスパイ事件を描いた
実録ドラマです。監督は『戦場のアリア』のクリスチャン・カリオン。
ＫＧＢのグリゴリエフ大佐が、極秘情報をフランスに流します。その仲介役と
なったのは、上司に命じられて引き込まれたフランスの民間人ピエール。この2
人のやりとりがドラマの中心です。
グリゴリエフ大佐は、祖国の未来を考えて、見返りを求めることもなく危険な
行為にのめりこみます。一方、嫌々引き込まれたピエールですが、大佐と触れ
合ううちに次第に心を動かされていきます。
そんな2人のようすと同時に描かれるのは、それぞれの家族たち。大佐もピエー
ルもスパイ行為について家族にウソをついています。しかも、大佐には愛人の
存在まで……。そんな苦しみや葛藤がつぶさに描かれます。
実話だけに当時の時代性も背景として織り込まれます。ボルグＶＳマッケン
ローのテニスの試合、クイーンの「ウィ・ウィル・ロック・ユー」のライブ
シーンなど。また、レーガン（自分の出演映画を観て喜ぶのが笑えます）、ミ
ッテラン、ゴルバチョフなど世界の指導者も登場（もちろん役者が演じていま
す）。グリゴリエフ大佐の流した情報をめぐって、丁々発止の国家間のやり取
りが展開されます。
大佐とピエールを中心としたスパイ劇が面白いし、それぞれの人物の心情もよ
く描かれています。しかし、さすがに実録ドラマだけに、ドラマチックさやス
リリングさにやや欠ける感じが……。
と思ったら、後半は圧巻でした。大佐とピエールの身に危険が迫り、一瞬も目
が離せない緊迫の展開。あわやの場面が続いた後に、信じられないどんでん返
しも出現。本当に実話なのだろうかと疑ってしまうほどの盛り上がりです。
そして、ラストはタイトルにもある「哀しみ」に満ちた終焉。国家の非情な論
理の前では、個人の運命など木の葉のようなものだということを思い知らされ
ます。ハリウッド映画だったら、こんなエンディングにはならなかったので
は？
それにしても見事なのがグリゴリエフ大佐を演じたエミール・クストリッツァ。
本職は『アンダーグラウンド』などで知られる映画監督ですが、こんな繊細な
演技ができるとは。「愛する息子と祖国の未来のため」とスパイ行為の理由を
説明するものの、「本当はウラに何かあるのでは？」と思わせるいかにもスパ
イらしい微妙な雰囲気。そして後半で危機を迎えた時の家族に対する痛切な思
いなど、迫真の演技でした。
出番は少ないながら、ウィレム・デフォーの存在感が相変わらずバツグン。お
まけに、あらまあなつかしや、『刑事スタスキー＆ハッチ』のデビッド・ソウ
ルもご出演ではありませぬか。
≪ぽちの満足度≫
★★★☆☆（＋1／2★）
≪ぽちのオススメ度≫
★★★☆☆
（リアルでスリリングなスパイ映画。クストリッツァ監督の演技をはじめ見ど
ころたっぷり）
（田中ひろあき（ぽち））
〔鑑賞データ〕
2010年8月7日（土）シネマライズにて。午後5時15分の回
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