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フィッシュストーリー
（2009年 日本）（上映時間1時間52分）
監督：中村義洋
出演：伊藤淳史、高良健吾、多部未華子、濱田岳、森山未來、大森南朋、渋川
清彦、大川内利充、眞島秀和、江口のりこ、山中崇、波岡一喜、高橋真唯、石
丸謙二郎
＊シネクイント、シネ・リーブル池袋ほかにて全国公開
ホームページ http://fishstory-movie.jp/
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＜ストーリー＞
2012年。彗星の衝突まであと５時間と迫った地球。地球滅亡を前にしながら、
あるレコード店では、いつもと同じ営業を続けていた。そこで流されたのは
『フィッシュストーリー』という曲。それは、早すぎたパンクバンド"逆鱗"が、
1975年にレコーディングした最後の１曲だった……。
＜レビュー＞
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バラバラに思えたエピソードが最後で一気につながる快感
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伊坂幸太郎の短編小説の映画化。監督は同じく伊坂幸太郎原作の『アヒルと鴨
のコインロッカー』の中村義洋。この人、『チーム・バチスタの栄光』『ジェ
ネラル・ルージュの凱旋』なども監督していますが、まだ若いのに本当にうま
い監督です。
冒頭に登場するのは、2012年の地球。なんと彗星の衝突まであと5時間という状
況。そこを起点に、1982年の気の弱い大学生のお話、1999年のノストラダムス
の大予言をめぐるお話、2009年のシージャック事件のお話、そして1975年に解
散したパンクバンド「逆鱗」のお話などが展開します。
観ている途中で「逆鱗」の「フィッシュストーリー」という曲や、「正義の味
方」というキーワードなどが、いくつかのエピソードに関連していることがわ
かります。しかし、それ以上のことは何もわかりません。違う時代の別々の人
物による物語が、ちょうどオムニバス映画のように展開していきます。
それらは単独でも面白いお話。気弱な青年が決起する自分探しのドラマ、地球
滅亡を前にした愚かな人間たちのドラマ、売れないバンドのキラキラする青春
ストーリー、シージャックをネタにしたヒーロー物語など、どれもかなりぶっ
飛んでいて、ヘンな人たちがたくさん登場する、ユーモアたっぷりのお話です。
それにしても、いったいこれらのエピソードはどうつながるのか？ 上映時間
も残りわずかなのに、どう落とし前をつけるのか？ まさかこのまま何もなか
ったりして……。
と思ったら、最後の最後に見事なオチが披露されます。一見無関係に思えたす
べてのエピソードが、「フィッシュストーリー」という曲がかかる間に、一気
につながってしまうんです。
いやあ、これには参りましたね。謎をほんの少しずつ明らかにして、最後の最
後で１本の糸でつなげる巧みな仕掛け。おかげで観客は、最後にスッキリした
気分になって映画館を後にできます。
途中で明かされる「フィッシュストーリー」の不思議な歌詞（「ボクの孤独が
魚だったら……」）の秘密が、映画全体のポイントになっています。まさに
「フィッシュストーリー」そのものの映画。そういえば、英語の「fish stor
y」って、そういう意味でしたね。
それぞれのエピソードを通して、もう少しテーマ性が見えてきてもよかった気
はするけれど、まあそこまで欲は言いますまい。なにしろ「fish story」です
から……。
《ぽちの満足度》
★★★☆☆（＋1／2★）
《ぽちのオススメ度》
★★★☆☆
（観客の興味をずっと引っ張って、最後に一気に種明かしするところが見事。
よくできた映画です。）
（田中ひろあき（ぽち））
〔鑑賞データ〕
2009年3月21日（土）シネ・リーブル池袋にて。午後2時の回
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