腑抜けども、悲しみの愛を見せろ


(2007年 日本)(上映時間1時間52分)
監督:吉田大八
出演:佐藤江梨子、佐津川愛美、永作博美、永瀬正敏、山本浩司、土佐信道
(明和電機)、上田耕一
*シネマライズほかにて公開
ホームページ http://www.funuke.com/
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<ストーリー>
北陸のある村で、和合曽太郎と妻加津子が交通事故死を遂げる。葬式の日、女
優を目指して上京していた長女・澄伽(佐藤江梨子)が4年ぶりに和合家に舞
い戻る。迎えたのは、後妻である加津子の連れ子の兄・宍道(永瀬正敏)、そ
の妻・待子(永作博美)、妹・清深(佐津川愛美)。澄伽は、自分が売れない
のは、妹が起こしたある事件が原因だと逆恨みして、執拗ないじめを繰り返す
のだが……。

<レビュー>
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姉による陰湿な妹イジメの先にあるものは……。ユニークな復讐劇?
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劇団の主宰者で作家としても活躍する本谷有希子の同名舞台劇の映画化。それ
にしても、よくもまあ、こんなインパクトのあるタイトルを考えたものです。

主人公にサトエリをキャスティングしたのが良いセンス。「演技が下手で、性
格の悪い女優志望の女」って、まさにピッタリのイメージ。あ、いや、もちろ
んイメージだけの話ですが(笑)。

両親が目の前で事故死して、失意の妹のもとに東京で女優を目指している姉が
4年ぶりに里帰りしてくる。なぜか、妹は姉を極端に恐れている。そして、兄
もなぜかギクシャクした感じ。それを不思議そうに見守る底抜けに明るい兄嫁
……。

家庭環境はかなり複雑。兄は父の後妻の連れ子。つまり姉妹とは血が繋がって
いません。また、兄嫁は施設育ちの天涯孤独の身の上。

そして、さらに事態を複雑にしているのが、かつて姉妹の間にあった出来事。
女優になることを親に反対された姉のとんでもない行状を観察した妹が、それ
をマンガにしてコンクールに応募。見事に賞を取って雑誌に掲載され、姉は村
中の好奇の視線を浴びたのです。

姉はそれが自分が売れない原因だと言いがかりをつけて、妹に陰湿なイジメを
繰り返します。いくら妹に傷つけられたといっても、「ここまでやるか?」て
なスサマジイ行為の連続。永作博美演じる兄嫁が、能天気なほど明るい性格な
ので、サトエリ演じる姉の陰湿さが、よけいに目だってしまいます。

そんな姉を諌めつつも、あまり強気には出られない兄。それはそうでしょう。
実はこの2人には、信じられない関係があったのですから。

こうした家族の実像を回想シーンや、姉が映画監督に送るファンレターという
形で綴りながら、現在進行中の家族の姿を描いていきます。

姉による妹イジメのシーンが続々登場しますが。シニカルなユーモアに包まれ
て、クスクス笑えるところもあったりするので、気持ちが悪くなるほどの不快
感はありません。今回が長編デビューの吉田大八監督は、CMを手がけてきた
というだけに、センスの良い映像を繰り出しながら、ポップなタッチで姉妹を
中心とした家族のドラマを描いています。

やがて、ラスト近くになって明かされる妹の反撃の企み。途中からだいたい真
相は見えているのですが、それでも思わず喝采。それまで陰湿なイジメを受け
ていただけに、シンプルな復讐劇として楽しめてしまいます。

また、妹の自立のドラマとしてもなかなか興味深いところ。姉妹といっても所
詮は他人。いつか姉の呪縛を逃れて、新しい場所へと旅立つのは当然の成り行
きでしょう。

ただし、「家族」のドラマとしては物足りなさが残ります。複雑な家庭環境ゆ
え、兄や兄嫁は「家族だから」「家族だから」と何度も口にします。しかし、
目の前で展開するのはマイナスの側面ばかり。どす黒い欲望や私利私欲がうご
めいて、家族はみ〜んなバラバラ。

「だから、家族ってどーなのよ???」という問題提起が感じられるものの、
ただそれだけ。つくり手が何を言いたいのかよくわかりませんでした。

兄嫁役の永作博美の不自然なほどの明るさが印象的。映画監督役の明和電機の
社長もいい味を出していました。

《ぽちの満足度》
★★★☆☆

《ぽちのオススメ度》
★★★☆☆
(アクの強い姉妹のバトル話としては、かなり面白い。あまり深いものを求め
なければ、それなりに楽しめます)
                            <ぽち>
〔鑑賞データ〕
2007年7月21日(土)シネマライズにて。午後12時30分の回。


[「ふ」のページ]




腑抜けども、悲しみの愛を見せろ
佐藤江梨子
佐津川愛美
永作博美
永瀬正敏