グッドナイト&グッドラック(GOOD NIGHT, AND GOOD LUCK)


(2005年 アメリカ)(上映時間1時間33分)
監督・脚本:ジョージ・クルーニー
出演:デヴィッド・ストラザーン、ロバート・ダウニー・Jr、パトリシア・
クラークソン、ジョージ・クルーニー、レイ・ワイズ
* TOHOシネマズ六本木ヒルズほかにて全国公開
ホームページ http://www.goodnight-movie.jp/
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<ストーリー>

1953年、ソ連との冷戦が激化する中、アメリカではマッカーシー上院議員らに
よって共産主義者排斥運動の"赤狩り"が実施されていた。その標的は、政府に
反対する者すべてに及び、一般市民やマスコミは沈黙してしまう。そんな中、
CBSテレビの人気ニュースキャスター、エド・マロー(デヴィッド・ストラ
ザーン)とプロデューサーのフレッド・フレンドリー(ジョージ・クルー
ニー)は、マッカーシーを批判し、彼こそが自由の敵だと訴える番組を放送す
るのだが……。

<レビュー>
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ジャーナリストたちの闘いを通して今のテレビ界を痛烈に批判した意欲作
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テレビドラマ『ER』に出演していた当時、ジョージ・クルーニーがこれほど
のスターになり、俳優としてはもちろん、監督としてオスカーにノミネートさ
れるようになるとは誰が予想したでしょうか。
『コンフェッション』に続く監督第2作の今作は、ニュースキャスターだった
父の職場であり、自身がかつて活躍の舞台にしていたテレビを題材にした映画
です。

1950年代初頭、ソ連との冷戦が激化するアメリカで、マッカーシー上院議員が
先頭に立って共産主義者を排斥する"赤狩り"が実施されていた。そんな中、C
BSテレビの人気ニュースキャスター、エド・マローと番組スタッフたちは、
マッカーシーの欺瞞を暴く番組を放送する……。

いわば、言論の自由を守るために果敢に闘ったジャーナリストたちの物語。で
も、けっして彼らを偉人として描いているわけではありません。全編モノクロ
の映像、当時のフィルムも織り込んで、まるでドキュメンタリーのように、
淡々と、そして客観的に描いていきます。

舞台の中心となるのはエド・マローの番組とその制作過程。それ以外の部分は
極力そぎ落としています。ありがちな家族の物語など感動の人間ドラマは、ほ
とんど見られません。およそ劇的な要素は排除されています。

そんな構成と演出が、濃密で、緊迫感あふれる空間を生み出しています。ジ
ャーナリストたちの気骨、権力と闘うことの難しさや苦しさ、それでも闘わね
ばならない使命感などが、スクリーンを通してしっかりと伝わってきます。

主役のエド・マローを演じるのはデヴィッド・ストラザーン。日本ではあまり
知られていませんが、かなりの実力派俳優で、怒りや悲しみ、苦しさを押し殺
しつつ、ほんのわずかな目の動きなどで感情を表現する演技が見事です。監督
のジョージ・クルーニーに加え、ロバート・ダウニー・Jr、レイ・ワイとい
った他の俳優陣も印象的。

バックに流れるジャズも良い雰囲気で時代を感じさせます。当時のCMや番組
内でタバコをスパスパというシーンにも、当時の世相があらわれています。

反対者にレッテルを貼って追い落とす権力者。それをストップさせるジャーナ
リズム。その使命は今も変わらないはず。特にイラク戦争以降のアメリカのテ
レビ・ジャーナリズムに対する問題提起が、この映画には込められているので
はないでしょうか。

同時にそこにはテレビ界全体に対する批判も込められています。実はこの映画
はエド・マローのスピーチでサンドイッチされた構成になっているのですが、
そのスピーチは「テレビが娯楽と逃避の道具なら価値がない!」という痛烈な
もの。

日本もアメリカも最近のテレビ界は、まさに娯楽と逃避の道具になっていませ
んか? だとしたら、誰がそうしているのか。テレビ局の人間だけでなく、そ
れを許している視聴者にも責任があるのではないですか? タレントのバカ話
や大食い大会もいいけれど、そればっかりのテレビじゃねぇ〜。

もともと1時間半程度と短い映画ですが、その濃密さのおかけでもっともっと
短く感じられました。
ド派手なエンタメ映画だってつくれるのに、こういう映画を監督するジョー
ジ・クルーニーの骨っぽさに脱帽。 ( ̄∇ ̄ノノ"

《ぽちのオススメ度》
★★★★☆
(ジャーナリズムに関心のある人はもちろん、テレビ視聴者ならぜひ観ておい
たほうがいい映画です。)
                             <ぽち>
〔鑑賞データ〕
2006年5月17日(水)池袋シネマサンシャインにて。午後12時30分の回


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