グーグーだって猫である


(2008年 日本)(上映時間1時間56分)
監督・脚本:犬童一心
出演:小泉今日子、上野樹里、加瀬亮、林直次郎、伊阪達也、大島美幸、村上
知子、黒沢かずこ、マーティ・フリードマン、大後寿々花、小林亜星、松原智
恵子、高部あい、柳英里紗、田中哲司、村上大樹、でんでん、山本浩司、楳図
かずお
* シネマライズほかにて全国公開
ホームページ http://www.gou-gou.jp/
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<ストーリー>
吉祥寺に暮らす漫画家の麻子(小泉今日子)は、最愛の猫サバを亡くして以来、
悲しみで仕事が手につかなくなる。そんなある日、麻子はペットショップで運
命的に出会ったアメリカン・ショートヘアの子猫を、グーグーと名付けて飼い
始める。やがて不思議な青年、青自(加瀬亮)と出会い、新作の構想も浮かぶ
など、元気を取り戻していく麻子だったが……。

<レビュー>
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犬童監督らしい優しい映画。猫の可愛さと一人の女性の人間ドラマが融合
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人気漫画家・大島弓子が綴った自伝的エッセイ漫画を、『ジョゼと虎と魚た
ち』『メゾン・ド・ヒミコ』などの犬童一心監督が映画化。脚本も自ら担当し
ています。

タイトルだけ聞くと、全編に猫ちゃんのカワイさがあふれた映画のように思う
かもしれませんが、もっと色々な要素が詰まった映画です。

主人公の漫画家と子猫との関係を軸にしつつも、彼女の繊細な心理を写し取っ
た人間ドラマを展開。さらに、アシスタントの女の子など、その周辺の人々の
人間模様を描くとともに、舞台となる東京・吉祥寺のタウンガイド的な要素ま
で入っています。これだけたくさんの要素を詰め込んでも消化不良になってい
ないのだから、犬童監督さすがです。

前半は、人気漫画家の麻子がアシスタントたちとともに締め切りに追われる
日々の中で、愛猫サバを亡くしたのをきっかけに、スランプになる様子が描か
れます。愛猫を失った麻子の喪失感を、抑制的に淡々と描写しているのが印象
的。

中盤は、新たな猫グーグーと出会い、元気になって行く麻子の姿が描かれます。
不思議な青年に恋心を抱き、新作の構想も浮かぶ麻子。

そのあたりからは、麻子とグーグーが運命的に出会うシーンなど、ユニークな
演出があちこちで見られるようになります。グーグーがひたすらメス猫を追い
かけるシーンなど、コミカルで笑えるシーンもタップリ。

その後の犬童監督の脚本&演出は、かなり大胆に羽ばたいていきます。麻子の
アシスタントのナオミが、彼氏と浮気相手を追いかけるところなど、まるで爆
笑コメディーのような展開。しかし、ただ笑えるだけでなく、その次に用意さ
れたシリアスな展開とのコントラストが見事です。一見、無駄に思える人物の
行動が、後で意外な意味を持ってくるところにも感心させられました。

後半は、過去の犬童作品と同じように、人生の大きな岐路に差しかかった麻子
の微妙な心理が、繊細に描きこまれています。猫ちゃんの登場シーンは減るも
のの、クライマックスには、とてもファンタジックなシーンが用意されていま
す。生と死の狭間に立った主人公と、ある人物(?)との穏やかで美しい対話
のシーンです。

大島弓子の漫画も、ところどころで効果的に使われています。特に新しい人生
を踏み出す漫画の主人公と、麻子を重ね合わせた展開が巧みです。

揺れ動く主人公を演じた小泉今日子に加え、アシスタント役の上野樹里、森三
中の3人が好演。マーティ・フリードマンなどのユニークな配役も面白いとこ
ろ。

色々な要素を巧みに織り込んだ作品。でも、この作品の最大の魅力は、全編に
流れる温かで優しい視線かもしれません。おかげで観終わって、穏やかな気持
ちになれます。もちろん猫のカワイらしさもそれを後押ししています。

《ぽちの満足度》
★★★☆☆

《ぽちのオススメ度》
★★★☆☆
(いろんな要素の中にも犬童監督らしさが発揮された優しい映画。笑えるとこ
ろもたくさんあるし、猫嫌いな方以外は観ても損はないはず。)
                              (ぽち)
〔鑑賞データ〕
2008年9月7日(日)ユナイテッド・シネマとしまえんにて。午後2時30分の回


[「く」のページ]




グーグーだって猫である
犬童一心
小泉今日子
上野樹里