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グエムル 〜漢江の怪物〜（THE HOST）
（2006年 韓国）（上映時間２時間）
監督・脚本：ポン・ジュノ
出演：ソン・ガンホ、ピョン・ヒボン、パク・ヘイル、ペ・ドゥナ、コ・アソ
ン、イ・ジェウン、イ・ドンホ、ヨン・ジェムン、キム・レハ、パク・ノシク
＊有楽町スバル座ほかにて全国公開
ホームページ http://www.guemuru.com/
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＜ストーリー＞
ソウルの中心を流れる大河、漢江に突然、正体不明の巨大な生き物が出現。逃
げまどう人々を次々と食い殺し始めた。河川敷で売店を営むパク一家のカンド
ゥ（ソン・ガンホ）は、中学生になる一人娘ヒョンソ（コ・アソン）の手をと
って逃げ出すが、混乱の中でヒョンソは怪物に連れ去られてしまう。その後、
政府はグエムルがウィルスの宿主だと発表、パク一家は強制的に隔離されてし
まう。そんな中、カンドゥの携帯に死んだと思われたヒョンソから助けを求め
る電話が入る。残された一家４人はヒョンソの救出に向かうのだが……。
＜レビュー＞
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ポン・ジュノ監督らしいユニークすぎるモンスター映画の快作！！
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大河に出現した怪物を描いた作品。ただし、よくあるハリウッド流モンスター
映画や日本の怪獣映画を想像して観ると、大混乱に陥ること必至のユニークな
映画です。
なんたって、監督はあのポン・ジュノですから。
長編デビュー作『ほえる犬は噛まない』で、飼い犬の疾走事件を通して団地の
人間模様を描き、前作の『殺人の追憶』で未解決殺人事件を通して刑事たちの
人間ドラマを描いた彼が、そのテイストを引き継いで、ひと味もふた味も違う
モンスター映画をつくりあげました。
ソウルの中心を流れる漢江に、突然、正体不明の巨大生物が出現。河川敷で売
店を営むパク一家の孫娘ヒョンソがさらわれてしまい、彼女を救うために一家
が立ち上がるというお話。
しかし、モンスターと立ち向かうはずのカッコいいヒーローは、どこを探して
もいません。父親のカンドゥは居眠りばかりするし、祖父も頼りないし、大卒
フリーターの叔父も落ちこぼれで、アーチェリー選手の叔母もイマイチ勝負弱
い。まさにダメダメ一家大集合。こんな人たちが怪獣とガチンコ勝負をするの
だから、そこには自然に笑いが起きてしまいます。
細かなネタは内緒にしておきますが、とにかく全編が笑いに包まれています。
ユーモアがテンコ盛りなのは過去のポン・ジュノ作品と同じ。しかも、ドタバ
タコメディーにならないように寸止めしているところは、相変わらずの手腕。
毒を感じさせるシニカルな笑いも多くて、韓国政府やアメリカへの批判もチラ
チラと感じられます。
もちろんいくらダメダメ人間とはいえ、そこはモンスター映画ですから、ハラ
ハラドキドキのシーンは、ちゃ〜んと用意されています。クライマックスの家
族による連係プレーなんて、そりゃあもう痛快。火炎瓶や弓なんて、考えてみ
りゃチープな武器なのに、それをあんなふうに使って盛り上げるんですから。
過去の作品よりは格段にエンタメ度がアップしているのは確かです。モンス
ターのキャラクター製作のために、ニュージーランドの『キングコング』
『ロード・オブ・ザ・リング』のスタッフ、アメリカの『ハリーポッターと炎
のゴブレット』『デイ・アフター・トゥモロー』のスタッフなどを起用。
それでもねぇ、どこかチャチな感じがしてしまうのですヨ。良い意味での泥臭
さが漂っているのが、逆に楽しかったりして。 （⌒―⌒）
普通のモンスター映画だと、最初のうちチラチラとしかモンスターを見せずに
ラストに近づいてようやく全貌が！！！
てな手段をよく使ったりするものですが、それもまったくありません。
いきなりモンスター全開です。
それでも、まったくつまらなくない。いや、それどころか後半に進むにつれて
どんどんおもしろくなるのです。
過去の作品同様に、今回も人間ドラマはきちんと描いています。ダメダメ家族
が必死で立ち上がるその姿に、家族のあり方を考えさせられる人も多いかもし
れません。
ちょっと予想外のラストもいいよねぇ〜。ただのハッピーエンドではなく、
かといって悲劇でもない。いかにもポン・ジュノ映画らしい終わり方。
考えようによっては、『ほえる犬は噛まない』の犬の失踪事件や『殺人の追
憶』の殺人事件が、今回は怪獣大暴れ事件に変わっただけで、映画の基本的な
構図やテイストは同じといえるかも。これぞポン・ジュノの世界！！
ソン・ガンホ、パク・ヘイル、ペ・ドゥナ、ビョン・ヒボンといった過去のポ
ン・ジュノ映画の出演者の起用も、そんな感を強くさせます。みんな相変わら
ずいい味出してるわぁ〜。ペ・ドゥナのジャージ姿もいいなぁ〜。なにを着て
も、どんな役をやってもキマるんだよねぇ〜。娘役の女の子（ユ・アソン）も、
なかなかの熱演ぶり。
なので、ボクのように過去の作品を堪能した人間にとっては、そのテイストを
引き継いだ本作も十分に楽しめました。笑い、人間ドラマ、風刺、アドベンチ
ャーなどなど……。とにかくいろんな要素が詰まったユニークなモンスター映
画です。
ただし、ポン・ジュノ映画未体験で、「韓国のモンスター映画」という予備知
識だけで観に行くと、痛い目にあうかも。エンタメ度がアップしているとはい
え、よくあるモンスター映画の雰囲気とはまったく違いますから。そのへんは、
くれぐれもご注意のうえ、ご覧になってくださいませ。
ちなみに、今回試写会で観た筆者は、劇場でもう一回観たいと思います。
個人的には、そのぐらいおもしろかったです。
《ぽちのオススメ度》
★★★☆☆（＋1／2★）
（みなさんへのオススメ度という点ではこんなものですが、僕だけの採点
では文句ナシに★★★★。
ポン・ジュノ監督らしい映画なので、過去の作品が好きな方はぜひ。そうで
ない方は、モンスター映画という固定観念にとらわれずに観てください。）
＜ぽち＞
〔鑑賞データ〕
2006年８月18日（金）＠ニフティ独占試写会（一ツ橋ホール）にて。
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