博士の愛した数式 （2005年　日本）（上映時間１時間57分） 監督・脚本：小泉堯史 出演：寺尾聰、深津絵里、齋藤隆成、井川比佐志、頭師佳孝、茅島成美、吉岡 秀隆、浅丘ルリ子 ＊ 渋谷東急ほか松竹・東急系にて全国公開 ホームページ　http://www.hakase-movie.com/ ■■■■■■■■■■■■■■■■■■■■■■■■■■■■■■■■ ＜ストーリー＞ 家政婦として働くシングルマザーの杏子（深津絵里）は、数年間で担当が９人 も替わったという顧客を紹介される。面接に行くと、夫を亡くした老婦人（浅 丘ルリ子）が応対し、離れに住む数学博士の義弟（寺尾聰）を担当してほしい と言う。その博士は、交通事故により80分しか記憶がもたないのだった……。 ＜レビュー＞ 〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜 数学って愛！？　さわやかで、温かな感動が伝わる小泉監督らしい映画 〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜 はっきり言って、数学が苦手です。ダメです。わかりません。そんなボクが、 「へえ〜、数学って意外におもしろいじゃん」と思ってしまった映画。 芥川賞作家・小川洋子のベストセラーを映画化。 シングルマザーの杏子が家政婦として派遣されたのは、10年前に交通事故にあ い、記憶がたった80分しかもたなくなってしまった数学博士。そのため、毎日 「初対面の人」としか認識されず、同じ会話を繰り返す。やがて、彼女に10歳 の息子がいると知った博士は、放課後に連れてくるように命じる。それから、 ３人の楽しい時間が始まる。毎日一緒に夕食を食べたり、宿題をしたり……。 記憶のトラブルを抱えた博士と、シングルマザー、その息子との心の交流を描 いた映画。『雨あがる』『阿弥陀堂だより』の小泉堯史監督らしく、さわやか で、ちょっぴり泣けて、温かな感動が味わえます。　（⌒−⌒） 数学の話が前面に出ているところがユニーク。素数、完全数、友愛数、階乗な ど、難しいことも博士がやさしく語ってくれます。しかも、大人になって数学 の教師になった少年が、生徒たちに語るという物語の設定なので、なおさらわ かりやすくなっています。 一見味気なく思える数学が、実はとってもヒューマンで、愛にあふれているこ と。それを心から愛する博士もまた愛にあふれた、優しい人物であることが、 よくわかります。 そんな博士に家政婦親子が心を寄せていくところも、ごく自然に受け止められ ます。 もちろん、博士には重い障害があるだけに、悲しみや苦しみも描かれます。障 害のもととなった事故に、義姉とのある関係が絡んでいることも、悲しみをよ り深くします。 しかし、その反面、ユーモラスで笑えるところもたくさんあります。すぐに記 憶を失ってしまう博士、そして彼の奇行の数々。観ていて自然に笑ってしまい ます。 感動、涙、悲しみ、ユーモアなどをバランスよく描いて、押し付けでなく心を 揺さぶってくるのが、小泉監督の真骨頂。 ファンタジーっぽいラストも、これまたさわやかで、温かで、心地よさを残し てくれます。四季の美しい風景も心に残りますねぇ〜。　（￣◇￣） 主演の寺尾聰は、持ち前の朴とつな感じが博士のキャラクターにうまくマッチ。 その義姉役の浅丘ルリ子、成長した息子役の吉岡秀隆も、存在感のある演技。 でも、ボクが最も注目したのは深津絵里の内面からにじみ出るような自然な演 技。そんなに華のある女優さんではないだけに、よけいに演技の深みが感じら れます。彼女の明るさ、温かさがこの映画のポイントかもしれません。 あまりにも、さわやかなので、「もっと人間ってドロドロしてるんじゃない の？」と思う人もいるでしょうが、それは別な監督の作品に期待してください。 何かと騒がしい世の中だからこそ、こういう映画が胸にしみるのです。 《ぽちのオススメ度》 ★★★☆☆（＋1／2★） （さわやかで、温かな感動に浸りたい方にオススメ。数学が苦手な人でも大丈 夫です。） 　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　＜ぽち＞ 〔鑑賞データ〕 2006年１月21日（土）ユナイテッド・シネマとしまえんにて。午後５時15分の回 [レビュートップページ][「は」のページ]