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花のあと
（2009年 日本）（上映時間1時間47分）
監督：中西健二
出演：北川景子、甲本雅裕、宮尾俊太郎、市川亀治郎、藤村志保、伊藤歩、柄
本明、國村隼
＊丸の内TOEI2ほかにて全国公開
ホームページ http://www.hananoato.com/
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＜ストーリー＞
江戸時代、東北の小藩の海坂藩で組頭を務める武士の一人娘、以登（北川景
子）は、父に教えられた剣の使い手だった。ある日彼女は、下級武士ながら藩
随一の剣士といわれる江口孫四郎（宮尾俊太郎）と出会う。その後、以登は父
に頼み込んで、たった一度だけ孫四郎と竹刀を交える。以登は孫四郎に恋心を
抱くが、彼女にはすでに片桐才助（甲本雅裕）という許嫁がいたため、孫四郎
への想いを断ち切ろうとするのだが……。
＜レビュー＞
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主人公の凛とした生き方がすがすがしい藤沢周平原作の映画
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山田洋次監督の『たそがれ清兵衛』『武士の一分』、田中麗奈と東山紀之が共
演した『山桜』などと同じ藤沢周平の短編小説の映画化です。東北の架空の小
藩、海坂藩が舞台なのは他の藤沢作品の映画化と同じ。全体のテイストも他の
作品と似ています。
主人公は海坂藩の武士の娘で、剣の使い手の以登。桜見物に出かけた彼女は、
そこで剣の達人の下級武士・孫四郎と出会い、好意を持ちます。父に頼んで一
度だけ竹刀を交わし、ますます孫四郎を好きになるものの、すでに許婚がいる
彼女はあきらめるしかありません。
前半は、自由恋愛など許されない時代に、お互いに淡い恋心を抱いた以登と孫
四郎の姿が、ていねいに描かれます。２人の内に秘めた思いが、繊細に描写さ
れています。
中盤は、他家の婿となって出世した孫四郎が、陰謀に巻き込まれてしまいます。
このあたりの展開も、これまでの藤沢作品と共通しています。ただし、その陰
謀の背景に不倫劇が絡むというのは、ちょっと現代的で面白いかも。
そして陰謀の存在を知った以登は、予想もしない行動に出ます。
クライマックスは、権力者の理不尽な振る舞いに対して、まっすぐな思いを貫
く主人公が決死の覚悟で立ち上がるという、これも藤沢作品でおなじみのパ
ターン。ただし、今回は立ち上がるのが武士ではなく、武家の娘だというのが
面白いところ。しかも、その殺陣がなかなかの迫力です。女だからなどと侮っ
てはいけません。
勝負の決め手になるのが、前半で父からもらった短刀だというのも粋な展開で
す。
そして、もう一つの大きな特徴が、この復讐劇で以登の許婚が重要な役割を果
たすこと。前半でいかにもダメダメに描かれている許婚が、後半では違った姿
を見せます。最初は、彼を「なんだコイツは」と冷めた目で見ていた以登が、
最後のほうでにこやかに見つめるようになるのが印象的。
以登を演じた北川景子は、想像以上の演技。ふだんの控えめで堅苦しい表情と、
剣を手にした時の力強い姿の対照が素晴らしい。許婚役の甲本雅裕のダメダメ
ぶりとその後にチラッと見せる男らしさもいい味。そして敵役の市川亀次郎の
悪党ぶりも堂に入っています。
エンディングに流れる一青窈の主題歌も、この映画にぴったりです。
以登の筋を通した凛とした生き方が心にすがすがしさを残してくれる映画。け
っしてすべてがハッピーエンドになるわけではないのに、後味はさわやかです。
≪ぽちの満足度≫
★★★☆☆
≪ぽちのオススメ度≫
★★★☆☆
（過去の藤沢作品が好きな人は、気に入るはず。それ以外の人も、さわやかな
気持ちになりたかったらどうぞ。）
（田中ひろあき（ぽち））
〔鑑賞データ〕
2010年3月13日（土）新宿バルト9にて。午後2時5分の回
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