|
ヒーローショー
（2010年 日本）（上映時間2時間14分）
監督：井筒和幸
出演：後藤淳平、福徳秀介、ちすん、米原幸佑、桜木涼介、林剛史、阿部亮平、
石井あみ、永田彬、結城しのぶ、大森博史、筒井真理子、木下ほうか、升毅、
光石研
＊角川シネマ新宿ほかにて全国公開
ホームページ http://www.hero-show.jp/
■■■■■■■■■■■■■■■■■■■■■■■■■■■■■■■■
＜ストーリー＞
お笑い芸人を目指しながらも中途半端な毎日を送る青年ユウキ（福徳秀介）は、
元相方の先輩・剛志に誘われヒーローショーのバイトを始める。ある日、バイ
ト仲間のノボルが剛志の彼女を寝取ったことから、２人はショーの舞台で乱闘
を繰り広げる。怒りの収まらない剛志は、知り合いのチンピラに頼んでノボル
をゆする。だが、ノボルは元自衛官の勇気（後藤淳平）に頼んで報復に出る。
抗争はエスカレートし、ユウキもそこに巻き込まれてしまうのだが……。
＜レビュー＞
〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜
井筒監督が若者たちによる暴力の連鎖と奇妙な友情を描く
〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜
『パッチギ！』の井筒和幸監督が、お笑いコンビ「ジャルジャル」の後藤淳平、
福徳秀介を主演に迎えて描いた青春映画。
最初に登場するのは、お笑い芸人を目指しながらも、中途半端な毎日を送って
いるユウキという男。元相方に誘われてヒーローショーのバイトを始めるもの
の、同じバイト仲間が元相方の彼女を寝取ったことから大騒ぎに。元相方はチ
ンピラを使ってバイト仲間をゆすらせるものの、ゆすられたバイト仲間は元自
衛官の勇気という男に頼んで報復に出て、とんでもない事態に突入します。
前半は、ユウキがひょんなことから凄惨な事件に関わることになる経緯が、壮
絶な暴力描写とともに描かれます。最初は彼女を取った取られたという次元の
話が、どんどんエスカレートしていって、暴力の連鎖が思わぬ悲劇を招くあた
りは、かなりコワイ展開。
ただし、そこから伝わってくるものは希薄。暴力の連鎖の虚しさを訴えたかっ
たのだとしても、青春のやり場のないエネルギーの暴走を見せたかったのだと
しても、どう転ぶかわからない人生の不可思議さを伝えたかったのだとしても、
井筒監督の意図が十分に伝わってくるとは言い難い。
後半になると、ユウキと勇気という2人の男のロードムービー的な展開になりま
す。最初は敵対関係の2人。勇気はユウキにサラ金から金を借りさせようとしま
す。そこに勇気の彼女とその子供も加わって、奇妙な４人の旅が続きます。
その旅を通して、ユウキと勇気の間には不思議な絆が生まれます。それぞれい
ろいろなものを背負った２人の心が共鳴していくところは、なかなか面白い展
開です。
何だか観ているうちに、この映画の肝はここではないかと思えてきました。名
前は同じだけれど、まったく境遇の違う２人が最悪の形で出会って、心を通わ
せてお互いに変化していくドラマ。だとすれば、前半の暴力シーンをはじめ、
もっと違った描き方をしたほうがすんなりと入り込めた気がするのですが……。
全体を通して、暴力、友情、家族愛などなど、いろんなものを詰め込みすぎた
せいで、散漫な印象です。井筒監督の意図が空回りしている感じ。
また、お笑いを目指す青年が登場することもあって、ときどきコミカルなシー
ンが登場するものの、それがあまり笑えないのも欠点。もっとギャグも工夫し
ないとね。
それでもラストは単純なハッピーエンドにはせず、「わかりやすい映画は嫌い
だ」と公言する井筒監督らしく、観客に考えさせる結末にしているのは有限実
行で潔いところ。
主演の「ジャルジャル」は可もなく不可もない演技。むしろ、勇気の彼女役の
ちすんが光っています。
≪ぽちの満足度≫
★★☆☆☆（＋1／2★）
≪ぽちのオススメ度≫
★★☆☆☆（＋1／2★）
（全体に散漫で訴えるものが足りない感じ。『パッチギ！』『パッチギ！ LOV
E&PEACE』が良すぎたせいもあって、今回は物足りなく感じてしまいました。）
（田中ひろあき（ぽち））
〔鑑賞データ〕
2010年5月29日（土）シネマ・ロサにて。午後1時の回
[「ひ」のページ] |
|