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ヒストリー・オブ・バイオレンス（A HISTORY OF VIOLENCE）
（2005年 アメリカ・カナダ）（上映時間１時間36分）
監督：デヴィッド・クローネンバーグ
出演：ヴィゴ・モーテンセン、マリア・ベロ、エド・ハリス、ウィリアム・
ハート、アシュトン・ホームズ、ハイディ・ヘイズ、ピーター・マクニール
＊東劇ほかにて全国公開
ホームページ http://www.hov.jp/
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＜ストーリー＞
インディアナ州の田舎町で小さなダイナーを経営するトム・ストール（ヴィ
ゴ・モーテンセン）は、弁護士の妻と２人の子どもとともに穏やかな日々を送
っていた。そんなある日、彼の店が２人組の強盗に襲われる。だが、トムは２
人を一瞬にして倒して、マスコミで取り上げられて一躍ヒーローとなってしま
う。それから数日後、不気味な男たちが店を訪れ彼をジョーイと呼ぶ。人違い
だと否定するトムだったが、男たちは執拗に家族につきまとい始めるのだった
……。
＜レビュー＞
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１人の男の暴力の歴史を人類の暴力の歴史へと昇華させた重たい映画
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鬼才と呼ばれる人はたくさんいるけれど、まさに鬼才としか言いようがないデ
ヴィッド・クローネンバーグ監督の映画。
オープニングがコワすぎぃ〜〜。 （ノ￣□￣）ノ
２人のいかにも危険な感じの男たちが登場するのだが、これがハンパでなくヤ
バいのだ。
でもって、すぐにバイオレンスな世界に突入！！
ところが、続いて一転して平和な家族が登場。小さな食堂を経営するトムと弁
護士の妻、そして２人の子ども。いったい彼らは、あの男たちとどんな関係が
あるのか？？？
やがて両者が結びつく。トムの店に連中がやってきたのだ。そして……。
強盗を射殺して、英雄となった父親に忍び寄る危険。どうやら彼の過去には何
かがあったらしい。そんな状況に戸惑う妻や子供たち。
というわけで、平凡な男に隠された過去の秘密をめぐるサスペンスの様相で、
物語の前半が展開していきます。しかし、その秘密は中盤であっさりとバレて
しまいます。
その後に何があるかといえば、タイトルに注目してください。そうです。"暴力
"の歴史です。そこにあるのはあまりにも絶望的な事実。暴力を断ち切るために、
暴力に頼るしかないというドン詰まりの姿です。その前では愛でさえ無力な存
在。いや、そこでは愛は暴力と裏腹の存在なのです。
そうやって、ある男の暴力の歴史を通して、アメリカという国における暴力の
歴史を映し出していきます。さらに、それは人類そのものの暴力の歴史へと広
がっていくのです。隣人とのいさかいから、国家同士の戦争まで、人間は暴力
なしには平和を獲得することはできないのでしょうか。
サスペンス的な興味が途切れたにも関わらず、後半の緊迫感はけた外れ。物語
が進むにつれて、観ていてどんどん息苦しくなっていきました。 （＞▽＜）
ラストの家族の食卓風景がとてつもなく重く感じられます。家族それぞれの表
情が切なく、苦〜い。あのあと、彼らはどこへ向かったのか。また、元の日常
へと帰っていったのか。それとも……。うーむ、やけにヘヴィーな結末だぜ。
クローネンバーグの映画といえば、偏執狂的なこだわりがあって、エグイ場面
がテンコ盛なんですが、今回はやや控えめです。とはいえ、銃で吹っ飛ばされ
た人間の顔のリアルな描写とか、服についた肉片とか、やっぱりエグイよなぁ
〜。でも、それが暴力のスゴミをリアルに突きつけてくるんですよ。
主役夫婦のヴィゴ・モーテンセン、マリア・ベロが、どちらも複雑な心情をキ
ッチリ表現しています。特にヴィゴの変身ぶりは背筋ゾクゾクもの。『ロー
ド・オブ・ザ・リング』での彼とはずいぶん違った表情が見られます。
でも、それ以上にコワイのはやっぱりエド・ハリスとウィリアム・ハートの演
技派２人のギャングだよなぁ〜。絶対会いたくないよなぁ〜。町の中で会った
ら逃げ出すよなぁ〜。てなぐらいコワイです。
欲を言えば、あと15分長くして、主人公がああいう行動に至った過去の心情な
どを描いて欲しかった。本当に過去を忘れていたのか、そう思い込もうとして
いたのか、そのあたりも含めてもう少し詳しく描いて欲しかった気がします。
でも、まあスゴイ映画ですよ。表面的にはヘンな映画を撮っていても、人間の
深い奥底を描いてきたクローネンバーグの面目躍如たる作品。こだわりの世界
を心して見よ！！！
《ぽちのオススメ度》
★★★☆☆（＋1／2★）
（限りなく★４つに近い★３つ半。暴力というものの底の深さを再認識して慄
然とさせられる映画。クローネンバーグのファンでなくても観る価値あり。）
＜ぽち＞
〔鑑賞データ〕
2006年３月25日（土）ユナイテッド・シネマとしまえんにて。午後３時の回。
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