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抱擁のかけら（LOS ABRAZOS ROTOS）
（2009年 スペイン）（上映時間2時間8分）
監督・脚本：ペドロ・アルモドバル
出演：ペネロペ・クルス、ルイス・オマール、ブランカ・ポルティージョ、ホ
セ・ルイス・ゴメス、ルーベン・オチャンディアーノ、タマル・ノバス
＊新宿ピカデリー、TOHOシネマズ六本木ヒルズほかにて全国公開
ホームページ http://www.houyou-movie.com/
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＜ストーリー＞
かつて映画監督として活躍していたマテオ・ブランコ（ルイス・オマール）は、
事故で失明して以来ハリー・ケインと名乗って脚本家となっていた。そんなあ
る日、ライ・Ｘと名乗る男が彼の前に現われ、自分が監督する映画の脚本を執
筆してほしいと持ちかける。やがて、マテオは男が14年前のある事件に関係し
ていることに気づく。当時、マテオは富豪の愛人レオ（ペネロペ・クルス）と
恋に落ちたのだったが……。
＜レビュー＞
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幾重にも紡がれたミステリータッチの愛憎劇
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『オール・アバウト・マイ・マザー』『ボルベール／帰郷』などで知られるス
ペインのペドロ・アルモドバル監督の最新作。ペネロペ・クルスとは、これが
４度目のコンビです。
物語は、富豪の愛人をめぐる愛憎劇。そこにミステリー的な要素が絡んできま
す。
主人公のマテオ・ブランコは、元映画監督。ところが14年前に事故で失明して
からは、ハリー・ケインという別名を名乗って脚本家となっています。そんな
彼の前に謎の男が現れ、脚本の執筆を依頼。実は、その男が14年前の事件と関
わっていることがわかり、それをきっかけにその時何があったのかが明らかに
なります。
さすがアルモドバル監督です。相変わらず巧みな構成。冒頭は盲目のハリーが
若い女性を連れ込んでエッチをするシーン。ただし、そこにさりげなく富豪の
死のニュースを織り込みます。その人物こそが14年前の事件のカギを握る人物。
まもなく、場面は一転して12年前に。ペネロペ・クルス演じるレオという女性
が、重病の父を抱えて困難に直面するところを富豪に救われます。そこまで観
ても、いったい何がどうなっているのかさっぱりわかりません。観客は疑問を
抱えつつスクリーンを注視してしまいます。
やがて、ライ・Ｘという謎の男の出現により、ハリー自身がかつて起きた出来
事をアシスタント役の青年に語り始めます。それは富豪の愛人となったレオが
女優志望としてハリーの前に現れたところから始まります。やがて２人は激し
い恋に落ちます。しかし、レオに執着する富豪は嫉妬の炎を燃やします。それ
が恐ろしい事態を引き起こします。
こうして14年前の事件の謎がスリリングに種明かしされていきます。同時に、
官能的な場面なども描きつつ、愛憎劇を演じる人物たちの胸の内も見せていき
ます。ハリーの女性エージェントやその息子もうまく絡ませて、幾重にも物語
を紡いでいきます。メロドラマとしても、ミステリーとしても、なかなか楽し
める展開です。
また、映画ネタが多いのも特徴。舞台となるのは映画の撮影現場。そこでは劇
中劇「謎の鞄と女たち」が撮影されています。さらに、その撮影現場を富豪の
息子が撮影しているという仕掛け。最後のほうで「謎の鞄と女たち」を再編集
するという展開も、興味深いものです。アルモドバル監督の映画に対する熱い
思いが感じられます。
アルモドバル監督の映画といえば、鮮やかな色彩感覚によって生み出された映
像も特徴的。今回もラストのバラバラになった写真を並べたシーンをはじめ、
その魅力が堪能できます。
《ぽちの満足度》
★★★☆☆（＋1／2★）
《ぽちのオススメ度》
★★★☆☆
（映画への愛も感じられるミステリータッチの愛憎劇。アルモドバル監督らし
い映画だと思いました。）
（田中ひろあき（ぽち））
〔鑑賞データ〕
2010年2月13日（土）新宿ピカデリーにて。午後2時40分の回
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