いちばんきれいな水


(2006年 日本)(上映時間1時間30分)
監督:ウスイヒロシ
出演:加藤ローサ、菅野莉央、カヒミ・カリィ、南果歩、田中哲司、松田洋治、
峯村リエ、 高谷基史
* ユナイテッド・シネマ豊洲ほかにて公開
ホームページ http://www.cplaza.ne.jp/kireina-mizu/
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<ストーリー>
小学6年生の夏美(菅野莉央)の姉・愛(加藤ローサ)は19歳だが、病気のた
め11年間も眠り続けていた。夏休みのある日、母の妹・真理子が南米で事故に
巻き込まれたとの連絡が入り、両親は現地へと向かう。その夜、愛が突然目を
覚ます。精神年齢は8歳のまま奔放に振る舞う愛に振りまわされる夏美だった
が……。

<レビュー>
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1回きりの夏を楽しむ姉妹のキラキラした物語。さわやかです
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原作は短編コミック。映画はアイデアとキャラクターが重要だということを、
あらためて思い知らされる作品です。

難病で眠り続ける姉がいる妹。父と母との日常はごく普通の生活。そんな中、
写真家の叔母が海外で事故にあったという報せが入り、両親は慌てて旅立って
しまう。残されたのは妹と姉の2人。そして、突然奇跡が起きる……。

11年間も眠り続けた姉が突然目覚めるというネタ。これがとても魅力的。19歳
の女性が、8歳の精神年齢のまま行動するから、そこに様々な出来事が生まれ
てくるのです。

しかも、妹のキャラクターを塾通いのガリ勉で、子供らしい遊びをしない女の
コにしたのがミソ。つまり、それによって姉妹の立場が逆転してしまうワケ。

中盤以降は、夏の数日間の奇妙な姉妹のふれあいが描かれます。天真爛漫な姉
と子供らしくない妹。妹を振りまわす姉に対して、困惑しつつも従う妹。

「この夏は1回きりなんだよ〜」という姉・愛の言葉が、とても印象的です。
一度しかない夏を楽しむ姉妹の姿が生き生きと描かれています。姉妹がいる人
は、子供の頃のことを思い出してしまうかもしれません。

そして、2人はある場所へと向かいます。そこはとても神秘的な場所。しかも、
そこには姉にとって心の傷になっている大きな秘密が隠されているのです。こ
のクライマックスの組み立て方もなかなか巧みです。何よりも「水」の美しさ、
透明感を見事に生かしきっています。

たった3日間の夏の日の姉妹。
そして、この映画の最大のポイントは、妹である夏美の成長物語であるという
ことです。突然目覚めた姉との生活を通して、夏美は確実に変化し、成長を遂
げるのです。姉を演じる加藤ローサの主演が話題ですが、ドラマ的には菅野莉
央演じる夏美が主役といってもいいかもしれません。

結末はすべてがハッピーというわけではありませんが、あと味はさわやかで、
未来への希望を感じさせてくれます。

気になったのは、最初のほうで姉妹を2人きりにするために、両親を不在にす
る仕掛けがやや強引なところ。とはいえ、その原因となった母の妹がカメラマ
ンという設定で、彼女の写真をドラマのスパイスにしているのは効果的。

また、途中で唐突にアニメが登場するのが気になったのですが、あれはラスト
近くで登場する絵日記の伏線として使ったものなのでしょうか。だとすれば、
これも許せるところかな。何しろその絵日記には、「いちばんきれいな水」の
場所に秘められた真実が描かれているのですから。

加藤ローサの天真爛漫さはホントに子供のようです。菅野莉央は年齢を感じさ
せない演技力が素晴らしい。映画初出演のカヒミ・カリィも良い味を出してい
ます。監督はミュージックビデオ出身のウスイヒロシ。一青窈、大塚愛、椎名
林檎などを手がけてきたそうです。

真夏が舞台の映画ですがギラギラした暑さではなく、そよ風のようにさわやか
で、観終わって心がポカポカ温かくなる映画です。キラキラした姉妹の輝きと、
妹の成長ぶりがとてもまぶしい……。

《ぽちのオススメ度》
★★★☆☆(+1/2★)
(小品だし、あまり期待していなかったのですがとてもステキな映画でした。
女性、特に姉妹のいる方には特にオススメ)
                            <ぽち>
〔鑑賞データ〕
2006年10月3日(火)ユナイテッド・シネマ豊洲にて。特別上映


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