いけちゃんとぼく


(2009年 日本)(上映時間1時間47分)
監督・脚本:大岡俊彦
出演:深澤嵐、ともさかりえ、萩原聖人、モト冬樹、蓮佛美沙子、柄本時生、
江口のりこ、 岡村隆史、吉行和子、蒼井優(声の出演)
*角川シネマ新宿ほかにて全国公開
ホームページ http://www.ikeboku.jp/
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<ストーリー>
小学生のヨシオ(深澤嵐)は、いつの頃からか「いけちゃん」という謎の生き
物が見えていた。いじめっ子に痛めつけられ、父親を事故で亡くすなど、つら
い日々を送るヨシオにとって、いけちゃんとの交流は心の支えだったが……。

<レビュー>
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謎の生命体とともに生きる少年のひと夏の成長物語
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人気漫画家、西原理恵子の初めての絵本の実写映画化。西原作品としては、阪
本順治監督の『ぼくんち』以来の映画化です。

とてつもない貧乏や破格の暴れん坊家族の存在など、不幸のどん底の中でも明
るくたくましく生きる人々が登場するのが西原ワールド。絵本ということもあ
って、今回はそれほど毒気はないものの、根っこのところはやっぱり西原ワー
ルド。

いじめっ子にやられっぱなしで、父親にも事故死される(しかも愛人宅近所の
どぶにはまって死亡)不幸な少年ヨシオが主人公。逆境の中で、少しずつ大人
になっていくヨシオのひと夏の物語です。

そこでユニークなのは、ヨシオにしか見えない「いけちゃん」という謎の生物
の存在。色や形を変えながら、ヨシオのそばに寄り添ういけちゃんがCGで登場。
声の出演は蒼井優。その風貌といい声といい、なんともユーモラスでポカポカ
した雰囲気が感じられます。物語自体はありがちな子どもの成長物語ですが、
いけちゃんの存在がとても効果的で、心地よい映画になっています。

演出の基本は淡々としていて、ビックリするようなところはありません。それ
でも、ファンタジーらしく、ところどころで大胆な映像や音楽なども使われま
す。ユーモラスなところもたくさんあります。

いじめっ子に勝つために努力したり、父の死の現場まで冒険に出かけたり、成
長の過程で様々な体験をするヨシオ。そのそばにはいつも、いけちゃんの存在
がありました。しかし、大人になるということは別れもあるわけで……。

初めてヨシオがリーダーとなって臨んだ野球の試合のあとで、いけちゃんが自
分の正体を明らかにするクライマックスは、なかなか感動的です

正直なところ、いけちゃんの正体については、そんなにヒネってどうするの?
という感じではあったのですが、ただの子どもの成長物語ではなく、大人の愛
のドラマとして描きたかったということなのでしょうね。

子ども中心の映画らしく、子どもたちがみんな生き生きとしているのがよいと
ころ。また、ヨシオの母親役のともさかりえの抑え目の演技も印象的。蓮佛美
沙子の大変身には大笑いだったし、モト冬樹には最後まで気がつかなかったな
ぁ。

いけちゃんがカワイイので、ただの子ども映画だと誤解するかもしれませんが、
かつて子どもだった大人も十分に楽しめる映画です。

ボクにも、子どものころ、いけちゃんがいたらよかったのになぁ……と、つい
思ってしまいました。

《ぽちの満足度》
★★★☆☆

《ぽちのオススメ度》
★★★☆☆
(ユニークないけちゃんのおかげで、ポカポカと温かな映画。原作の絵本を読
んでいなくても楽しめます。)
                             (田中ひろあき(ぽち))

〔鑑賞データ〕
2009年6月28日(日)角川シネマ新宿にて。午後4時の回


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