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イキガミ
（2008年 日本）（上映時間2時間13分）
監督：瀧本智行
出演：松田翔太、塚本高史、成海璃子、山田孝之、柄本明、劇団ひとり、金井
勇太、佐野和真、井川遥、笹野高史、塩見三省、風吹ジュン
＊TOHOシネマズ六本木ヒルズほかにて公開
ホームページ http://www.ikigami-movie.jp/
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＜ストーリー＞
"国家繁栄維持法"が施行されている世界。全国民は子供の頃に体内に特殊なカ
プセルを埋め込まれ、1000人に１人の割合で18歳から24歳になると、あらかじ
め設定された日時に死を迎える仕組みになっていた。厚生保険省の職員である
藤本賢吾（松田翔太）は、該当者に24時間前に政府発行の死亡予告証＝イキガ
ミを配達する役目を担うのだが……。
＜レビュー＞
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近未来を舞台にファシズムの恐怖と生きる意味を問う力作
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間瀬元朗の同名コミックの映画化。なんといっても面白いのがその設定。国家
繁栄のために生命の価値を高めるとして、国民の1000人に１人に子供の頃にカ
プセルを埋め込み、18歳から24歳で死亡するように設定。該当者には死の24時
間前にそれを通知。その死亡予告証、通称「イキガミ」を配達する主人公を狂
言回しに、あと24時間の余命を宣告された３人の若者の姿を描きます。
余命わずかとなった人物が、いかに生きるかを追求した物語はたくさんありま
すが、余命がわずか24時間、それも国家によって抹殺されるというのは他に類
を見ないお話。近未来が舞台とはいえ、太平洋戦争における召集令状＝赤紙や
治安維持法を連想させる設定は、けっして荒唐無稽とは思えません。絵空事で
はないリアルさがあります。
登場する３人の若者は、メジャーデビュー間近のストリートミュージシャン。
保守系女性議員を母に持つ引きこもりの青年。そして事故で失明した最愛の妹
のために角膜移植を決断する青年。
ストリートミュージシャンの青年は、突然の死の宣告をきっかけに、ようやく
自分にとって大切なものに気づきます。議員の息子は親への怒りから思わぬ暴
走を始めます。そして、角膜移植を決断する青年は、最後まで必死で妹に尽く
します。
三者三様ではあるものの、いずれも死を前にしたギリギリの行動。残された時
間で何をするかを追い求めた結果だけに、観客の胸を打つドラマばかりです。
特に盲目の妹と兄のエピソードは感動必至。
ただし、残念なのがそれらのエピソードに広がりがないこと。「生きる意味を
問う」という点ではそれなりの効果を上げていますが、そこから先へ続きませ
ん。感動物語の原因をつくったファシズムに対する恐さなど、より深く重たい
テーマへとつながらないのがもったいないところ。
まあ、興行的には深くて重たいテーマよりも、ストレートに感動できる映画の
ほうがいいんでしょうけど。
そうは言っても、ラスト近くの展開にはハッとさせられました。最後になって
「死にたくない！」と本音を吐き出す盲目の妹の兄、国家繁栄維持法廃止に向
けて立ち上がろうとするひきこもり青年の父の姿などを通して、ファシズムの
脅威が描き出されます。そして、何よりコワイのが、劇団ひとりの変身ぶり…
…。
監督は『犯人に告ぐ』の瀧本智行。骨太でスリリングな演出は今回も健在。監
視カメラを通した映像など冴えた映像が次々に飛び出します。
俳優では塚本高史、成海璃子、山田孝之といった若手もいいのですが、柄本明、
笹野高史、塩見三省、風吹ジュンといったベテランの演技にも注目して欲しい
ところ。
《ぽちの満足度》
★★★☆☆
《ぽちのオススメ度》
★★★☆☆
（イマイチ物足りなさはありますが、それなりに面白い映画です。３つのドラ
マそれぞれがよくできています。）
（田中ひろあき（ぽち））
〔鑑賞データ〕
2008年10月1日（火）ユナイテッド・シネマとしまえんにて。午後4時の回
[「い」のページ] |
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