|
イントゥ・ザ・ワイルド（INTO THE WILD）
（2007年 アメリカ）（上映時間2時間28分）
監督・脚本：ショーン・ペン
出演：エミール・ハーシュ、マーシャ・ゲイ・ハーデン、ウィリアム・ハート、
ジェナ・マローン、キャサリーン・キーナー、ビンス・ボーン、クリステン・
スチュワート、ハル・ホルブルック
＊シャンテシネ、テアトルタイムズスクエアほかにて全国公開
ホームページ http://intothewild.jp/
■■■■■■■■■■■■■■■■■■■■■■■■■■■■■■■■
＜ストーリー＞
1990年夏、ジョージア州の大学を優秀な成績で卒業した22歳の青年、クリス・
マッカンドレス（エミール・ハーシュ）は、通帳にあった預金を慈善団体に寄
付し、家族に何も告げず、無一文でアラスカへ向けて旅に出る。その途中、
様々な人々と出会うクリスだったが……。
＜レビュー＞
〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜
青春の純粋さが招いた悲劇をありのままに描いたロードムービー
〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜
俳優ショーン・ペンの長編監督４作目となる作品。実話に基づくジョン・クラ
カワーのノンフィクション「荒野へ」を10年がかりで映画化したとのこと。両
親への反抗心などから大学卒業ともに家出して、無一文でアラスカまで旅をし
て、そして死んでいく青年の旅を描いたロードムービーです。
1990年夏、ジョージア州の大学を卒業したクリス・マッカンドレスは、卒業祝
いに新車を買ってあげるという両親の申し出を断り、預金をすべて慈善団体に
寄付し、家族に何も告げずに行方をくらましてしまう。実は、彼はアラスカを
目指して旅に出たのだった……。
主人公の青年クリスの家庭は、かなりヒドイ状況。とはいえ、彼に共感できる
かは微妙なところ。理由は何であれ、あそこまで極端な行動を取るのはどうな
んだ？ と疑問に感じる人も、けっこういそうです。
だからなのか、監督のショーン・ペンはクリス個人の特別な事情を掘り下げる
だけでなく、もっと普遍的な視点で彼を見つめています。つまり、若者特有の
純粋さ、妥協しない生き方が彼を動かしたのであり、誰にでもそれは起こりう
ることなのだ、という切り口で描いているのです。
それに加えて、クリスが生来の冒険心の持ち主であることも強く打ち出します。
そして、彼が憎んでいた両親の悲しみや苦悩もしっかりと描いて、一面的な見
方を排除しています。
たとえ彼に共感できないとしても、見応えは十分にあります。ロードムービー
の醍醐味にあふれた映画で、特に美しく荒々しい大自然の映像が素晴らしい！
川下り、ハンティングなど、大自然を舞台にしたアドベンチャー映画として
の魅力もあります。
そして、その途中の様々な人々との出会いも印象的。サウスダコタの陽気な労
働者、ヒッピーのコミューンで出会った夫婦（彼らの子供も音信不通）、歌の
うまい美しい少女、孤独な老人。そうした人々との交流がクリスの心に大きな
影響を残していきます。
主人公に愛着を感じつつも、予断や思い入れを排除して、ありのままを描くこ
とに心を注いだショーン・ペン。主人公と微妙な距離感にある妹による独白を
中心にした構成も、効果を上げています。おかげで、2時間28分という長い映画
ながら、少しも飽きることがありませんでした。
ラストでは、ようやくクリスが大切なことに気づきます。それを通して、観客
に確かなメッセージが発信されます。結局、人間は別人になんてなれないのだ
から、逃げずに真正面から問題に向き合うしかないのです……。
ただし、ラストにああいう気づきが用意されているのなら、そこに至るクリス
の心の変化を、もう少しわかりやすく描いたほうがよかったかも。
主役のエミール・ハーシュは、体当たりの熱演。これだけハードな役をやれば、
あとはコワイものなし？！ マーシャ・ゲイ・ハーデン、ウィリアム・ハート、
ジェナ・マローン、キャサリーン・キーナー、ビンス・ボーン、ハル・ホルブ
ルックなどの実力派脇役陣にも注目。
ちなみに、美しい少女トレイシー役のクリステン・スチュワートは、『パニッ
ク・ルーム』であのジョディ・フォスターの娘役をやっていたそうです。いや
〜、立派に成長して……。
《ぽちの満足度》
★★★☆☆（＋1／2★）
《ぽちのオススメ度》
★★★☆☆（＋1／2★）
（主人公にそれほど共感はできなかったけれど、見応えはかなりありました。
ロードムービーの魅力がタップリ）
（ぽち）
〔鑑賞データ〕
2008年9月13日（土）テアトルタイムズスクエアにて。午後4時35分の回
[「い」のページ] |
