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インビジブル・ウェーブ（INVISIBLE WAVES）
（2006年 タイ・オランダ・香港・韓国）（上映時間１時間55分）
監督：ペンエーグ・ラッタナルアーン
出演：浅野忠信、カン・ヘジョン、エリック・ツァン、光石研
＊シネマート六本木ほかにて公開
ホームページ http://www.cinemart.co.jp/iw/
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＜ストーリー＞
香港のレストランの料理人キョウジ（浅野忠信）は、店主であるボスの妻と不
倫関係にあったが、ボスから彼女の殺害を命じられ、やむなく毒殺する。任務
を果たしたキョウジは、ボスの手配でタイのプーケット島へと向かうことにな
り、船に乗り込む。船上で彼は、ノイ（カン・ヘジョン）という女性と出会う
のだが……。
＜レビュー＞
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ミステリアスな雰囲気が漂うアジアの才能が集結したロード・ムービー
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アジアのスタッフが国境を越えて集結する映画が増えてきました。この映画も
タイ、日本、韓国、香港など、アジア各国のスタッフや出演者が集合した映画。
『地球で最後のふたり』のタイ人監督ペンエーグ・ラッタナルアーンと浅野忠
信が再び顔を合わせました。
ボスの妻と不倫関係にあった男が、ボスに命じられて彼女を殺害して、香港か
らタイへ逃亡する。その船上で不思議な女と出会う。そして、やがて意外な結
末が……。というロード・ムービー。
愛する女性を命じられるままに殺害した罪悪感を抱えた主人公が、何とも痛々
しくて切ない……。と言いたいところですが、そういう感じは全くなし。演じ
る浅野忠信がノホホンとした雰囲気で、とても心の傷を抱えているようには見
えないのです。
しかし、それがこの映画だと違和感がないから不思議なもの。それというのも、
あまりにも素晴らしい映像のせい。ウォン・カーワイ監督作品でおなじみのク
リストファー・ドイルの映像は、まさにアートとしていいようがありません。
そんな映像美を生かして、セリフやドラマチックな展開に頼ることなく、主人
公キョウジの魂の漂泊を描いていきます。
前半は、香港からタイへ向かう船の中。ボロボロの船室に悩まされたり、見知
らぬ男に声をかけられたり、奇妙な体験をするキョウジ。船内をさまよう彼の
姿はまさに亡霊のよう。ミステリアスで先の読めない雰囲気が、ユラユラ揺れ
るキョウジの胸のうちを表しています。
やがて船内で見知らぬ女ノイと知り合うキョウジ。ノイを演じるのは『オール
ド・ボーイ』『トンマッコルへようこそ』の韓国の女優カン・ヘジョン。彼女
がラストの展開に大きな影響を与えます。
その後は、タイのプーケットで不思議な出来事に遭遇し、衝撃的な運命に翻弄
されるキョウジ。そして、再び舞台は香港へ……。
最後の最後まで、何が起きるのかわからない謎めいた空気に包まれています。
実際のところは、このテの犯罪劇にありがちなことしか起きないのですが、独
特の雰囲気のおかげで不思議な魅力が生まれています。
観ているうちに、生死の境が曖昧に感じられてくるのが印象的。ラストのキョ
ウジの運命が、悲しいというよりも穏やかな余韻を残してくれるのは、そうし
た感覚から導き出されるものでしょう。
ノイとの出会いによってキョウジがどう変化したかといったあたりが、今ひと
つきちんと描かれていなかったりして、不満もあるにはあります。しかし、個
性的な映画なのは間違いありません。このスタッフでなければ、こういう映画
にはならなかったはず。
『インファナル・アフェア』などで知られる香港のエリック・ツァンが、ほん
のちょっとの登場ながら相変わらずの存在感を発揮。日本の光石研も良い味を
出しています。
《ぽちの満足度》
★★★☆☆
《ぽちのオススメ度》
★★★☆☆
（ミステリアスな雰囲気に包まれたロード・ムービー。それにしても美しいク
リストファー・ドイルの映像。これだけでも観る価値があるかも……。）
＜ぽち＞
〔鑑賞データ〕
2007年6月8日（土）シネマート新宿にて。午後4時45分の回。
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