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自虐の詩
（2007年 日本）（上映時間1時間55分）
監督：堤幸彦
出演：中谷美紀、阿部寛、西田敏行、遠藤憲一、カルーセル麻紀、ミスターち
ん、金児憲史、竜雷太、佐田真由美、蛭子能収、岡珠希、丸岡知恵、島田洋八、
松尾スズキ、斉木しげる、名取裕子、Ｍｒ．オクレ、アジャ・コング
＊シネクイント、シネ・リーブル池袋ほかにて全国公開中
ホームページ http://www.jigyaku.com/
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＜ストーリー＞
通天閣を見上げる大阪の下町。幸江（中谷美紀）は、ボロいアパートで元ヤク
ザのイサオ（阿部寛）と暮らしていた。イサオは仕事もせずに酒とパチンコの
日々。気に入らないことがあるとすぐにちゃぶ台をひっくり返す。周囲の人々
は別れるようにすすめるが、幸江はイサオと一緒にいるだけで幸せだと感じ、
別れようとしない。そんなある日、幸江の妊娠が明らかになるのだが……
＜レビュー＞
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爆笑の後で、やがて涙の夫婦愛の物語。堤監督の最高傑作！？
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"日本一泣ける４コマ漫画"ともいわれる業田良家の同名コミックの映画化。で
すが、当方は原作のことはまったく知りません。なので、原作との比較は不可
能ですので悪しからず。
早い話が不幸のどん底の女性の話。子供の頃は超貧乏。母は家出し、父は銀行
強盗で逮捕。そして今は、やたらにちゃぶ台をひっくり返す元ヤクザの乱暴男
と暮らしていて、苦労が絶えない毎日。
こんな究極の不幸女の話を、ベタベタの暗〜い映画にされた日には、これはも
うやってられません。落ち込んで、うつむきながら映画館を出て、そのままヤ
ケ酒でもあおりたくなりそうです。
しかし、ご安心を。この映画は、不幸話を徹底的に笑い飛ばす爆笑コメディー。
主人公幸江の少女時代の貧乏話をはじめ、ひたすら笑えるネタのオンパレード。
だいたい阿部寛のパンチ頭を見ただけで笑えちゃいますもの（途中でロン毛も
あり）。
堤幸彦監督といえば、大げさな演出が売りもの。いつもは浮きまくりで「そり
ゃ、いくらなんでもやり過ぎでしょ」と思わされることが多いのですが、この
映画にはその大げささがピッタリです。特にイサオのちゃぶ台返しを、特殊カ
メラで撮影した映像は絶品。何度観ても笑えてしまいます。
ワキ役もみんな魅力的で笑えます。カルーセル麻紀扮する隣のおばちゃん、遠
藤憲一扮する幸江に思いを寄せるラーメン店主、西田敏行扮する幸江の父など、
いずれも強烈な個性の持ち主。その他もクセモノ揃いで抜群の存在感。少女時
代の幸江を演じた岡珠希、その友人役の丸岡知恵も実に生き生きとした演技で
す。
舞台を大阪の下町に設定したのも正解です。これを東京のお話にしたら、おそ
らく浮きまくりで笑えなかったことでしょう。大阪だからこそ、主人公カップ
ルをはじめ強烈キャラの人々が違和感なく溶け込めたのだと思います。
まあ、とにかく途中までは爆笑の連続でした。このまま最後まで爆笑で突っ走
るのかと思いきや……。なんと後半は一転して涙の感動物語に突入してしまう
のです！！
ある日、幸江の妊娠が発覚します。それをきっかけに、とんでもない事件が起
きます。そこで描かれるのが幸江の過去。実は、それ以前にも彼女の少女時代
などが描かれているのですが、肝心なところは抜け落ちていたんですよね。と
ころが、今度はそこもキッチリと描かれます。
そして、明らかになるのが思わぬ事実。どうして幸江があんなダメダメ男と別
れないのか。その理由が見えてくるんです。そこにあるのは、あまりにも一途
で不器用な愛。感動的な夫婦愛。
いやぁ〜、ベタな展開とはいえ、つい涙してしまう心憎い仕掛けです。前半が
爆笑の展開なので、なおさら泣けてきてしまいます。ホロッ。ラストで流れる
安藤裕子の「海原の月」もいいんですよねぇ〜。
ほとんどセリフのない役で感情を表現する阿部寛の演技は見事ですが、やはり
今回の最大の熱演は中谷美紀でしょう。不幸女は『嫌われ松子の一生』で経験
済みですが、今回はさらに磨きがかかっています。なんたって、あれ、完全な
スッピンでしょ。スゴすぎますよ。女優魂がサクレツ！
はっきり言って、これまでは苦手だった堤監督の作品。ここまで感動したのは、
今回が初めてでした。もしかしたら最高傑作かも！？
最後に注意！ エンドロールで席を立つ人が多いようですが、最後まで座って
いてください。そこに素敵なシーンが用意されています。それを見れば誰もが
幸せな気分になれるはず。「幸薄いワタクシでも、もしかしたら幸せになれる
かも」な〜んて思わせられてしまいますヨ。
《ぽちの満足度》
★★★★☆
《ぽちのオススメ度》
★★★☆☆（＋1／2★）
（個人的には、今まで観た堤作品で文句ナシにナンバー１。爆笑の末に涙する
とてもステキな映画でした。）
（ぽち）
〔鑑賞データ〕
2007年11月1日（木）ユナイテッド・シネマとしまえんにて。午後2時15分の回。
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