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純喫茶磯辺
（2008年 日本）（上映時間1時間53分）
監督・脚本・編集：吉田恵輔
出演：宮迫博之、仲里依紗、濱田マリ、近藤春菜、ダンカン、和田聰宏、ミッ
キー・カーチス、斎藤洋介、麻生久美子
＊テアトル新宿、渋谷シネ・アミューズほかにて全国公開
ホームページ http://www.isobe-movie.com/
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＜ストーリー＞
妻に家出され、高校生の娘・咲子（仲里依紗）と暮らす磯辺裕次郎。父親の急
死によって多額の遺産を手にし、仕事を辞めて怠惰な生活を送る。だが、ある
時、ただの思いつきで喫茶店をオープン。客の入りはさっぱりだったが、美人
の素子（麻生久美子）をバイトに雇ったことから運命が変わり……。
＜レビュー＞
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ダメダメ中年男と娘によるひと夏の出来事を描いたハートフル・コメディ
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ダメダメ人間を描いた物語って、どうしてこんなに魅力的なんでしょ。ヒー
ローにない人間臭さが、温かな雰囲気を醸し出すんですよねぇ〜。そう思うの
は、自分もダメダメ人間だからか？
この映画も、ダメダメ人間が主人公。妻に逃げられ、高校生の娘・咲子と2人で
暮らす磯辺裕次郎。工事現場で働くものの、父親が死んで遺産が入ったことか
ら、仕事を辞めて自堕落生活。それでも咲子に「仕事をしろ」とうるさく言わ
れ、偶然入った喫茶店でマスターと美女がイチャつく姿を目撃したことから、
喫茶店オープンを決意。その名も「純喫茶磯辺」だッ！
て、なんなんだ？ このダサダサな名前は。しかも、メッセージボードには
「おいしいコーヒー」ではなく、「おいにいコーヒー」ですもの。笑っちゃう
しかありません。
そんな調子だからお客など入るはずもなく、閑古鳥が鳴く毎日。アルバイトに
美人の素子を雇った当初も、客足は伸びず。しかし、彼女に超ミニの色っぽい
制服を着せたら、これが大ウケ。そんな中で、素子にホの字の裕次郎。年甲斐
もなく若い女性に心をときめかす父親に対して、咲子は冷たい態度。さてさて、
裕次郎の恋はどうなるのか？ 咲子はそれにどう反応する？
ダメダメ男と娘、そして喫茶店に集う人々を温かな視点で描いているこの映画。
劇的な要素を排除して、淡々とユーモラスに彼らの生態を描き出しています。
細かなところまで突き詰めないし、見方によっては物足りないんでしょうけど、
その分、ホンワカした良い雰囲気が漂っています。
しかし、まあ宮迫博之演じる中年男が絶品ですね。悪い人じゃないんだけど、
何をやってもデタラメだし、みっともない。これなら、離婚されるのも当然。
ただし、娘に対する愛情はとても強くて、娘もそれを感じているから、反発し
つつも離れないのでしょう。
実はダメダメなのは裕次郎だけじゃないんですよ。娘の咲子もしっかりしてい
るようで、意外にワキが甘くて、おかげで危ない目にあったりします。
裕次郎が夢中になる素子も、かなりのダメ人間で、メチャクチャな人生を送っ
ていたりするわけです（演じる麻生久美子が相変らず良い味ですねぇ）。つい
でに、店に来る客たちも……ダメだなぁ〜、コイツらも。
そういう人たちのダメさ加減が絶妙です。あんまり大げさにするとウソっぽく
なるけど、そうならないキャラのつくり方が見事。裕次郎にしろ、咲子にしろ、
素子にしろ「ああいう人いるよね〜」と納得してしまいます。素子みたいな危
ない女の人っているもんなぁ〜。そんな若いコに惹かれる裕次郎の気持ちもよ
くわかるし。
ラストもホンワカです。「ダメダメでも、いいんだよ」と肯定されているよう
で、とても気持ちがいい。ギスギスした世の中だけに、なおさら心に染みてく
るのかもしれません。
温かさと哀愁がほどよく漂う映画。ダメダメ人間も、案外、捨てたもんじゃあ
りませんね。
《ぽちの満足度》
★★★☆☆（＋1／2★）
《ぽちのオススメ度》
★★☆☆☆（＋1／2★）
（大したことも起きないし、盛り上がりに欠けるけれど、なかなか味のある作
品。どなたにでもオススメとはいきませんが、個人的にはとても楽しかったで
す。）
（ぽち）
〔鑑賞データ〕
2008年7月6日（日）テアトル新宿にて。午後1時50分の回
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