カムイ外伝


(2009年 日本)(上映時間2時間)
監督:崔洋一
出演:松山ケンイチ、小雪、大後寿々花、金井勇太、土屋アンナ、PANTA、芦名
星、佐藤浩市、イーキン・チェン、伊藤英明、小林薫
*丸の内ピカデリーほかにて全国公開
ホームページ http://www.kamuigaiden.jp/
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<ストーリー>
最下層の子として生まれ強くなるために忍者となったカムイ(松山ケンイチ)。
だが、掟に縛られた世界が嫌になり、自由を求めて「抜忍」となり逃亡生活を
送る。ある日、カムイは漁師の半兵衛(小林薫)を助けたことから、彼の村で
暮らすようになる。そこで出会った半兵衛の妻は、14年前に抜忍となり少年時
代のカムイと戦ったスガル(小雪)だった。やがて、カムイは半兵衛一家とと
もに追われ、渡衆と呼ばれる人々と遭遇するのだが……。

<レビュー>
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追われる忍者をアクション+人間ドラマで迫力満点に描く
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白土三平の伝説的な劇画を『血と骨』などでおなじみの崔洋一監督が実写映画
化。脚本が宮藤官九郎ということで、「奇をてらった映画になるのでは?」と
心配したものの、正攻法の骨太のアクション映画になっていました。

被差別民として生まれ、強くなるために忍者になったカムイ。しかし、掟に縛
られた世界が嫌になって抜忍となり、常に追われる身となる。そんな中で、漁
師の半兵衛と出会い彼の村に行くと、半兵衛の妻は抜忍で少年時代のカムイと
戦ったスガルだった。相手が自分のことを組織に密告するのではないかとお互
いに疑心暗鬼になる2人。それでも、村に住み着いたカムイは、一時の平穏を
得る。しかし、その平穏も長くは続かず……。

基本はあくまでもアクションエンターティメントです。必死でカムイを追う追
っ手。忍術を駆使して逃れるカムイ。森の中での空中アクション、海の中での
戦いなど見応えタップリ。特に印象的なのが、カムイがひたすら走りまくると
ころ。最初から最後まで突っ走るスピード感に圧倒されます。

「変移抜刀霞斬り」などの忍術も、CGを使ってきちんと再現しています。ま
あ、さすがにハリウッドのケタはずれにお金をかけたCGに比べれば、不自然
さも目立ちますけどね。それでも、日本映画としては破格の迫力です。

それより何より、この映画にはハリウッドのアクション映画ではあまり見られ
ない、きちんとした人間ドラマがあります。特に中盤以降、カムイがスガルと
再会したあたりから、彼の心の中がとてもよく表現されています。出会った相
手が敵かもしれないという猜疑心を持ちながら生きる苦しみ、信じかけていた
相手に裏切られた悲しみや怒り、そうしたカムイの心情が痛切に伝わってきま
す。

映画全体を包むのは異様な緊張感。それはまさに、一瞬たりとも気を抜けない
カムイ自身が抱えた緊張感そのものなのです。

クライマックスは、それまでチラチラと登場していたナゾの絵師が驚きの正体
を披露。そして、その後に繰り広げられる砂浜での1対1の手に汗握るバトル。
戦いの後に残るのは、どうしようもない苦さです。自分のせいで多くの人が死
んでしまったことに対するカムイの複雑な思いが、スクリーンを覆います。最
後に登場する狂信的な武将の姿が、カムイの絶望感をより深く浮き立たせてい
ます。

カムイを体当たりで演じた松山ケンイチの奮闘ぶりが見事。小雪、伊藤英明ら
も体を張った演技を披露しています。役者はもちろんスタッフも含めて、ギリ
ギリの状態の中で頑張った熱い思いが伝わってきました。山崎努のナレーショ
ンも説得力があります。

アクションだけでなく、きちんとした人間ドラマも盛り込んだところが、いか
にも崔洋一監督らしいところ。日本製のアクションエンタメ映画としては、最
上の部類に入る映画だと思います。

《ぽちの満足度》
★★★★☆

《ぽちのオススメ度》
★★★☆☆(+1/2★)
(骨太な時代活劇。体を張ったアクションも重厚な人間ドラマも見応えがあり
ます。)
                             (田中ひろあき(ぽち))

〔鑑賞データ〕
2009年9月19日(土)ユナイテッド・シネマとしまえんにて。午後1時15分の回


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