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渇き（THIRST）
（2009年 韓国）（上映時2時間13分）
監督：パク・チャヌク
出演：ソン・ガンホ、キム・オクビン、シン・ハギュン、キム・ヘスク、オ・
ダルス、パク・イナン、ソン・ヨンチャン
＊ヒューマントラストシネマ有楽町、新宿武蔵野館ほかにて公開
ホームページ http://kawaki-movie.com/
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＜ストーリー＞
神父のサンヒョン（ソン・ガンホ）は、アフリカの研究所で進められている謎
のウイルスのワクチン開発の実験台となる。まもなく彼は発病し命を落とすが、
正体不明の血液を輸血され奇跡的に生き返る。帰国したサンヒョンは、幼なじ
みのガンウと再会し、虐げられている彼の妻テジュ（キム・オクビン）と出会
う。彼女に心惹かれるサンヒョンだが、その時彼はすでにヴァンパイアへと変
貌していた……。
＜レビュー＞
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エロチックでユーモラスで切ないユニークなヴァンパイア映画
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ヴァンパイヤ（吸血鬼）映画です。しかし、そのへんのヴァンパイヤ映画とは
違います。『オールド・ボーイ』『親切なクムジャさん』などの復讐三部作で
知られるパク・チャヌク監督らしいユニークな映画です。
神父のサンヒョンが、自ら志願して原因不明のウイルスのワクチン開発の被験
者になります。発病して一度命を失うものの、正体不明の血液を輸血されて奇
跡的に蘇生します。韓国に帰国した彼は「奇跡の人」と人々からあがめられま
す。しかし、実は彼は輸血のせいで吸血鬼になっていたのです。そんな中、幼
なじみのガンウと再会し、彼の妻テジュと知り合うサンヒョン。彼女を好きに
なったものの……。
他人の血を吸わなければ生きていけなかったり、太陽の光が苦手だったり、吸
血鬼のセオリーをふまえつつも、自身の世界を自由かつ大胆に展開するチャヌ
ク監督。
中心に描かれるのは、サンヒョンとテジュの禁断の愛。神父という立場上女性
と関係を持ってはいけないサンヒョン。しかも、テジュは知人の妻。一方、義
母と夫に虐げられてきたテジュにとって、サンヒョンとの出会いはまさに地獄
に仏、じゃなくて神父。そんな複雑な背景が、２人の愛を燃え上がらせます。
それほど過激ではないのに、あまりにも官能的なセックスシーンが印象的です。
サンヒョンは吸血鬼になっても、罪の意識を抱えながら苦しみます。人を襲っ
て血を吸うのはイヤ。その代わりに病院に忍び込んで患者の血液をチューブで
吸います。こうしたユーモラスなシーンも随所に散りばめられています。
やがて２人の愛は暴走し、とんでもない事件を引き起こします。それが２人の
関係を大きく変えます。相変わらず罪の意識を抱え、吸血鬼としての欲望を抑
え込もうとするサンヒョンに対して、欲望のおもむくままに行動するテジュ。
後半は先の読めない展開で、どんどんスクリーンに引き込まれました。死者を
リアルに登場させるなど、空想と現実をない交ぜにした描写も魅力。まさに何
でもありの世界で面白すぎます。
この物語には、信仰、愛、献身、罪、欲望などの深いテーマが横たわっていま
す。虚構の世界を舞台にしながら、人間の本質に鋭く迫ります。しかし、観て
いる間はあまりそれを意識させません。
ラストは、ヴァンパイア映画にはよくある結末。とはいえ、とびっきり美しく
て切ないシーンです。
主演は名優ソン・ガンホ（『殺人の追憶』『グエムル／漢江の怪物』）。およ
そ西洋のヴァンパイヤとは異質なタイプですが、それが逆にいい味になってい
ます。その相手役のキム・オクビンも、キャリアが浅いながらも堂々の演技。
人間の本質に迫る深いテーマを背景に、官能的で滑稽で切ない不思議な世界を
作り出したパク・チャヌク監督。こんな吸血鬼映画を作れるのは、間違いなく
世界で彼だけでしょう。
《ぽちの満足度》
★★★★☆
《ぽちのオススメ度》
★★★☆☆
（エロチックでユーモラスで切ないユニークなヴァンパイヤ映画。アクが強い
映画なので、誰にでもオススメとはいきませんが、個人的には大満足。）
（田中ひろあき（ぽち））
〔鑑賞データ〕
2010年2月28日（日）新宿武蔵野館にて。午後12時45分の回
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