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川の底からこんにちは
（2009年 日本）（上映時間1時間52分）
監督・脚本：石井裕也
出演：満島ひかり、遠藤雅、相原綺羅、志賀廣太郎、岩松了
＊ユーロスペースにて公開。順次全国公開
ホームページ http://kawasoko.com/
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＜ストーリー＞
上京して5年目のOL木村佐和子（満島ひかり）は、目標もなく妥協の日々を送っ
ていた。そんなある日、父親が末期がんで余命わずかだという知らせが入る。
一人娘の佐和子に実家のしじみ工場の跡を継いて欲しいという。最初は断る佐
和子だったが、恋人でバツイチ子持ちの健一が乗り気で、結局、帰郷するはめ
に。ところが、工場は倒産寸前で、従業員のオバチャンたちにはイジメられっ
放し。佐和子は、もはや妥協もできないところまで追い詰められる……。
＜レビュー＞
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オフビートな笑いを通して伝わる、開き直りの大切さ
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数々の新人監督を輩出している「ぴあフィルムフェスティバル」でグランプリ
を受賞した石井裕也監督の商業映画デビュー作。第19回PFFスカラシップ作品。
前回のPFFスカラシップ作品『不灯港』（内藤隆嗣監督）同様に、こちらもユ
ニークで楽しい映画です。
最初に登場するのは、主人公佐和子の腸内洗浄シーン。どうやらそれが彼女の
習慣のようです。上京して5年目、勤務するのは5つめの会社、付き合っている
のは5人目の彼氏。仕事もダメならプライベートもダメ。ダメダメな毎日を送り
つつ、「どうせ大した人間じゃないんだから、中の下なんだから、しょうがな
い」と妥協を繰り返す佐和子。
そんな彼女のもとに、叔父さんからの連絡。父親がガンで倒れ、余命わずかな
ので帰郷して、実家のしじみ工場を継げとのこと。しかし、帰りづらい事情の
ある佐和子は拒否。ところが交際中のバツイチ子持ちの彼氏が乗り気で、なぜ
か彼氏と子供とともに帰郷。
最初は今までどおりに妥協の日々を送る佐和子。しかし、工場のオバサン従業
員にいじめられ、会社は倒産寸前。さらに、彼氏まで同級生に取られるという
どん底状態に至って、ついに佐和子は立ち上がるのでした。「どうせ大した人
間じゃないから、しょうがない。でも、頑張るしかない！」。
佐和子の成長を通して、頑張ることの大切さを描いたドラマ。といってもシリ
アスなドラマではなく、全編にオフビートな笑いが散りばめられたコメディー。
思わずクスクス笑ってしまうユル〜イ笑いが満載です。
佐和子と彼氏が言い合うシーンなど、独特の会話もユーモラス。あれはアドリ
ブなのでしょうか。微妙な間や言葉遣いが妙にリアルです。
毎朝佐和子が肥えまきをしたり、漁師のオッサンが女子大生と不倫したりと変
なシーンが続出。佐和子が開き直った後で取った行動が、新しい社歌を作るこ
とだというのも笑わせてくれます。しかも、その歌詞ときたら「政府を倒
せ！」ですから（笑）。
本来なら怒涛の感動シーンになるはずのラストのお骨をまくシーンでも、オフ
ビートな笑いが炸裂。ほとんどの従業員が「新しいお母さん」だったって、そ
んなのアリですか？（笑）
こうして全編にユル〜イ笑いを振りまきながら、それでも開き直ることの大切
さがちゃんと伝わってくる映画。佐和子の開き直りっぷりがあっぱれです。
佐和子を演じた満島ひかりが、場面場面でいろいろな表情を見せてくれます。
オバチャンたちを前にした大演説がカッコいいし、複雑な心理を抱えながら父
親と心を通わせていくところも印象的。これからますます活躍しそうな予感が
します。
石井監督のダメダメ人間に対する温かな視線とオフビートな笑いは、山下敦弘
監督あたりと共通するかも。今後が楽しみな監督です。
≪ぽちの満足度≫
★★★☆☆（＋1／2★）
≪ぽちのオススメ度≫
★★★☆☆
（ユル〜イ笑いに包まれた人生ドラマ。ダメダメな人間なのを自覚して「しょ
うがない」と言いつつ開き直る佐和子に拍手。）
（田中ひろあき（ぽち））
〔鑑賞データ〕
2010年5月2日（日）ユーロスペースにて。午後4時15分の回
[「か」のページ] |
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