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ケンタとジュンとカヨちゃんの国
（2009年 日本）（上映時間2時間11分）
監督・脚本：大森立嗣
出演：松田翔太、高良健吾、安藤サクラ、宮崎将、柄本佑、洞口依子、多部未
華子、美保純、山本政志、新井浩文、小林薫、柄本明
＊新宿ピカデリー、ユーロスペースほかにて公開
ホームページ http://www.kjk-movie.jp/
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＜ストーリー＞
同じ施設で一緒に育ったケンタ（松田翔太）とジュン（高良健吾）。ひたすら
壁を壊すだけの解体工事の仕事で生計を立てる2人は、低賃金で重労働という環
境に加え、先輩からの陰険ないじめに苛立っていた。ある日、2人は街でブスな
女の子カヨ（安藤サクラ）と出会い、ジュンは彼女と暮らすようになる。そん
な中、2人は日頃の恨みを晴らすために会社の事務所をぶち壊し、先輩の愛車を
破壊。カヨも連れて3人で盗んだ車に乗り、ケンタの兄・カズのいる網走を目指
すのだが……。
＜レビュー＞
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閉塞感に包まれた若者たちの旅の果てにあるものは……
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現在の日本で生きる3人の男女によるロードムービー。監督はデビュー作『ゲル
マニウムの夜』が高く評価された大森立嗣。
ケンタとジュンは、愛を知らずに育ち、孤独で、自分の人生を選択することさ
え許されない青年。彼らは、自分たちをいじめる先輩や勤務先に一矢報いて旅
に出ます。そんな2人に同行するのが、ナンパした女カヨ。自分がブスだと自覚
する彼女は、誰とでも簡単にセックスします。
この3人に共通するのは、孤独で、愛を求めているものの満たされない日々を送
っていること。そして、どこにも行き場のない閉塞状況にあること。それを何
とか打ち破ろうとする旅が始まります。
旅の途中で、とりたてて劇的なことは起きません。そもそもカヨちゃんは、け
っこう早いうちにケンタとジュンに置き去りにされてしまいます。ケンタとジ
ュンも盗んだ銅線を買い取ってくれた男と出会ったり、旧友と再会したりと、
それなりにいろいろなことはあるものの、けっして現状打破につながるような
出来事には遭遇しません。
そんな旅を通して、ケンタとジュンが抱える思いが強烈に伝わってきます。特
に印象的なのが、障がいを持つ人々と触れ合う場面。社会的に弱い立場にある
ところに共感するのか、この時の2人は実に生き生きとしています。しかし、同
時に「こいつらどこにも行き場がないんだよなぁ」という言葉に、我が身を重
ね合わせて暗澹とした気持ちになります。
やがてカヨちゃんと再会し、3人は網走の刑務所にケンタの兄に会いに行きます。
ところが、ケンタにとってそれは予想もしない面会になります。すべてを「ぶ
っ壊す」ことで、新たな道が開けると信じていたケンタ。しかし……。
ラストには衝撃的なことが起きます。その前から、ケンタとジュンの関係にや
や変化が訪れていたのが伏線になっています。そして、最後に映し出されるカ
ヨの美しい表情。いったい3人の視線の先には何があったのでしょうか。バック
に流れる岡林信康の名曲をカバーした「私たちの望むものは」が印象的。
全編を通じて感じるのはジリジリするような息苦しさです。それはケンタ、ジ
ュン、カヨの3人が抱えた息苦しさでもあります。感動も爽快感もなく、安直な
感情移入さえ拒否するような作りになっていながら、結果として彼らと同じ感
情を共有するという不思議な映画です。
個人的な趣味としては、もう少し話を転がすなどして、メリハリを持たせたほ
うが好みではありますが……。
ケンタ役の松田翔太、ジュン役の高良健吾もいいけれど、この映画の最高のキ
ャストは安藤サクラ。これまでの出演作でもいい味を出していましたが、今回
も絶品。役柄どおりに美人ではありませんが（失礼）、バツグンの存在感を持
つ女優です。これからどうなっていくのか楽しみです。
≪ぽちの満足度≫
★★★☆☆（＋1／2★）
≪ぽちのオススメ度≫
★★★☆☆
（ストレートな感動も爽快感もありませんが、不思議な魅力のある映画。今を
生きる若者たちの焦燥感ややり場のない怒りが伝わってきます。）
（田中ひろあき（ぽち））
〔鑑賞データ〕
2010年6月13日（日）テアトルダイヤにて。午後1時15分の回
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