消えた天使(THE FLOCK)


(2007年 アメリカ)(上映時間1時間45分)
監督:アンドリュー・ラウ
出演:リチャード・ギア、クレア・デインズ、アヴリル・ラヴィーン、ケイデ
ィー・ストリックランド、レイ・ワイズ、ラッセル・サムズ
*スバル座ほかにて全国公開
ホームページ http://www.kieta.jp/
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<ストーリー>
性犯罪登録者の監察を続けてきた公共安全局のエロル・バベッジ(リチャー
ド・ギア)は退職を間近に控え、後任のアリスン・ラウリー(クレア・デイン
ズ)の指導を任される。そんな中、若い女性が行方不明になる。自分が監視し
続けている登録者の中に犯人がいると確信したバベッジは、アリスンと共に犯
人の追跡を開始するのだが……。

<レビュー>
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社会の闇を見せ付けるサスペンス。アンドリュー・ラウ監督らしさは不変
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『インファナル・アフェア』シリーズのアンドリュー・ラウ監督がハリウッ
ド・デビューを飾ったのが本作。こういうケースだと、ハリウッドに流されて
本来の良さが消えてしまう監督サンが多いため、正直、あまり期待していませ
んでした。しかし、想像したよりも、はるかにおもしろい映画でした。

性犯罪者による猟奇事件をめぐるサスペンス。性犯罪者を監視してきた退職間
近の主人公が、後任になる新人女性職員と対立しつつも、事件の真相を探って
いきます。

まあ、これ自体はありがちなストーリーです。ただし、この映画の場合には、
アメリカ社会の病巣が背景にあります。性犯罪歴のある者は登録されて公開さ
れる制度。それでも依然として性犯罪の件数が驚異的に多いという現実。

実際に、この映画で描かれる性犯罪は、実にオゾマシイものです。だからこそ、
犯罪者を登録して防止しようとするのでしょうが、あまり効果が上がっていな
いどころか、その制度が悪用されてしまうこともあるのです。

そんな絶望的な雰囲気を漂わせながら、スリリングなサスペンスが展開されま
す。話に厚みを加えているのが、リチャード・ギア扮する主人公が、正義感に
満ちあふれているがゆえに、深い闇にズンズンと足を踏み入れ、狂気に近い精
神状態になってしまうこと。それに対して、クレア・デインズ扮する新人職員
が強く反発するという図式です。

この映画に並々ならぬ緊迫感を生み出しているのが、アンドリュー・ラウ監督
らしい鮮烈な映像。『インファナル・アフェア』を観た方ならわかると思いま
すが、オープニングから細かな映像テクを駆使して、スピーディーで、スリリ
ングで、スタイリッシュなシーンを積み重ねていきます。

ともすればやりすぎになりそうなところを、直前で寸止めするのがこの監督の
見事なところ。ハリウッドに行っても、持ち味が十分に発揮されています。

オープニングとラストで教訓めいたことを述べるのも、なんだか『インファナ
ル・アフェア』の「無間地獄」の話を連想させておもしろいですね。

後半に行くにつれて主人公がどんどん狂気に走り、事件の真相が明らかになっ
て行きます。後半の緊迫感は強烈で、観ていて息苦しくなるほどでした。

結末も、それなりによく考えられているし、何よりも壮絶な人間の闇を見せ付
けてくれます。

リチャード・ギアといえば、どちらかというとナイスガイな役が多いのですが、
今回はそれとは違うコワい顔を見せてくれます。対する新人役のクレア・デイ
ンズも安定した演技。

しかし、一番ぶっ飛んだキャスティングは人気シンガーのアヴリル・ラヴィー
ンでしょう。いくら事件のカギを握る存在とはいえ、女優としての本格デビ
ューにあんな役を選ぶとは……。なんだかパンクな人です。

素材がハマッた印象はあるものの、アンドリュー・ラウらしさが発揮されてい
て、なかなか楽しめる映画でした。今後の作品にも期待できそうです。

《ぽちの満足度》
★★★☆☆

《ぽちのオススメ度》
★★★☆☆
(サスペンス好きならかなり楽しめそうな映画です。ただし、性犯罪というこ
とで、ちょっとエグいところもあるのでご注意を。)
                            <ぽち>
〔鑑賞データ〕
2007年8月4日(土)シネマ・ロサにて。午後2時の回。


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アンドリュー・ラウ
リチャード・ギア
クレア・デインズ
アヴリル・ラヴィーン