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キングダム／見えざる敵（THE KINGDOM）
（2007年 アメリカ）（上映時間1時間50分）
監督：ピーター・バーグ
出演：ジェイミー・フォックス、クリス・クーパー、ジェニファー・ガーナー、
ジェイソン・ベイトマン、アシュラフ・バルフム、アリ・スリマン
＊スバル座、TOHOシネマズ六本木ほかにて全国公開
ホームページ http://www.kingdom-movie.jp/
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＜ストーリー＞
サウジアラビアの外国人居住区で死傷者300人以上の大規模テロが起きる。ＦＢ
Ｉ捜査官フルーリー（ジェイミー・フォックス）は政府の意向を無視して現地
捜査に乗り出す。わずか５日間という限られた時間の中、法医学調査官のメイ
ズ、爆発物専門家のサイクス、情報分析官のレビットとともに捜査を始めるフ
ルーリーだが……。
＜レビュー＞
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テロをめぐるスリリングで骨太なサスペンス。ラストシーンは必見！
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9．11同時テロから時間が経つにつれて、続々登場してきたテロをめぐる映画。
その中でも、このアクション・サスペンスは、かなり異質です。
オープニングに登場するのは、石油を媒介にアメリカと深い関係にあるサウジ
アラビアに関する簡潔な説明。これを観て、国際情勢や政治が色濃く反映され
た社会派映画かと早合点してしまいました。
ところが実際は完全なエンターティメント映画。社会派の要素はそれほど強く
ありません。
サウジアラビアの外国人居住区で大規模な自爆テロが起きて、ＦＢＩの捜査官
も犠牲になってしまう。そこで、仲間を失ったジェイミー・フォックス扮する
ＦＢＩ捜査官が現地捜査を願い出る。しかし、なるべく事を荒立てたくないサ
ウジ政府の意向を受けたアメリカ政府はこれを拒否。するとフルーリーは独自
の手段で駐米サウジ大使を脅しにかかり、秘密裏に現地捜査を始めることに成
功する。
こうして3人のスペシャリストとともにサウジに降り立ったものの、捜査期間は
わずか5日間。しかも、彼らを快く思わないサウジ側は、常にサウジ警察が同行
するという厳しい制限をつける。そんな中で、悪戦苦闘しつつ、わずかな証拠
を糸口にフルーリーたちは犯人に迫っていく……。
この手の映画の中でもスリリングさはピカイチ。最初から最後まで緊張感がま
ったく途切れません。手持ちカメラを多用した不安定な映像を中心に、ドキュ
メンタリータッチの迫力ある映像が続きます。
この映画の監督は、『コラテラル』に出演していた俳優のピーター・バーグで
すが、製作を担当したのはその『コラテラル』のマイケル・マン監督。彼の過
去の作品と共通する骨太のアクションが目を引きます。
特にスゴイのがラストの30分にも及ぶ壮絶なバトル。犯人グループと捜査陣が
命がけの戦いを展開します。手に汗握るカーアクション、激しい銃撃戦など一
瞬も気が抜けません。息を飲む展開の連続です。
ドラマの背景には、アメリカとサウジの微妙な関係、アメリカ、サウジ両国政
府の複雑な内部事情などがありますが、それが前面に出てくることはありませ
ん。社会的な視点はできるだけ抑えて、エンターティメントに徹しています。
しかし、単純な勧善懲悪のドラマにはなっていません。たとえば、ＦＢＩ捜査
官とサウジの警察官は、最初のうち激しく対立します。ところが、そのうちに
お互いに理解し合い、協力するようになるのです。ここではアメリカ＝善、イ
スラム＝悪という単純な図式は成立しません。
また、その他のサウジの人々を見つめる視線も、彼らを異端視したり、卑下す
るものではありません。もちろんテロリストは悪人として描かれますが、彼ら
にも家族がいて、普通の生活があることが同時に描かれます。
そして、そして、この映画で一番驚かされたのがラストです。事件が解決した
にもかかわらず、ＦＢＩ捜査官たちの表情は明るくありません。テロリストの
家族も当然ながら暗い顔。そこで、彼らは共通の「ある言葉」を吐くのです！
このラストシーンは、「暴力の連鎖」が続く現在の世界を端的に表現した見事
なシーンです。ここで、それまでのエンタメ映画に社会派の要素がキッチリ加
わります。このラストシーンは必見！
エンタメ映画でありながら、観終わった後で今の時代の空気まで感じさせてく
れる。そんな重みのある映画といえるでしょう。
《ぽちの満足度》
★★★☆☆（＋1／2★）
《ぽちのオススメ度》
★★★☆☆（＋1／2★）
（無条件に楽しめるスリリングなサスペンス。同時に、それだけに留まらない
重厚さも感じさせます。ラストシーンをしっかり目に焼き付けてください！）
＜ぽち＞
〔鑑賞データ〕
2007年10月13日（土）池袋HUMAXシネマズ4にて。午後1時40分の回。
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