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傷だらけの男たち（CONFESSION OF PAIN）
（2006年 香港）（上映時間１時間51分）
監督：アンドリュー・ラウ、アラン・マック
出演：トニー・レオン、金城武、スー・チー、シュー・ジンレイ、チャップマ
ン・トー、ユエ・ホア、ヴィンセント・ワン、エミー・ウォン
＊みゆき座ほかにて全国公開
ホームページ http://drywhisky.com/index.html
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＜ストーリー＞
2003年のクリスマス。刑事ポン（金城武）と上司のヘイ（トニー・レオン）は、
連続殺人犯を逮捕する。だが、その夜ポンが帰宅すると、恋人が自殺していた。
３年後、私立探偵に転職したポンは、酒に溺れる日々を送っていた。一方、ヘ
イは億万長者チャウの一人娘スクツァンと新婚生活を送っていたが、ある日、
チャウが何者かに惨殺される。犯人は死体で発見されるが、疑問を抱いたスク
ツァンはポンに調査を依頼する。やがて、意外な人物が捜査線上に浮上する…
…。
＜レビュー＞
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『インファナル・アフェア』のチームによる切なく、哀しい男たちのドラマ
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香港ノワールの秀作『インファナル・アフェア』の製作チームが再び結集して
作られたのが、このサスペンス。したがって、全体のタッチは、あの映画と共
通しています。
ただし、ストーリーはこちらのほうが複雑。その分、サスペンスとしてのハラ
ハラ度は高くなっています。
中心人物は、恋人に自殺されたショックで警察を辞め、酒に溺れる私立探偵の
ポン。そして、彼の元上司で億万長者の娘と結婚したヘイ。これだけを見ると、
ポンだけが「傷だらけの男」のように見えますが、ヘイも実は大きな傷を負っ
ているのです。そして、それがある事件に関係してきます。
その事件というのは、ヘイの妻スクツァンの父親が殺された殺人事件。「金目
当ての犯行で犯人が仲間割れして死んだ」という結論が出るのですが、スクツ
ァンは納得できません。そこで、ポンに調査を依頼します。ポンが調査を進め
るうちに、そこに驚愕の事実が浮かび上がってきます。
驚いたのが、ストーリーの核心となる殺人事件の描き方。なんと、そこで犯人
の顔をほぼわかるように映してしまうのです。「えー！ これじゃ謎解きの楽
しみがなくなって、興味半減じゃん」と思ったら、それがそうでもないのです。
ポンによる事件の調査は二転三転。そこにヘイやスクツァンの周囲に起きる奇
妙な出来事が絡んできます。ポンはアル中、スクツァンも精神不安定という要
素が加わって、いったいどこに真相があるのか、ナゾかナゾを呼び、観客は深
い闇の中に引きずり込まれていきます。
最初に映し出された事件のシーンが、「もしかしたら誰かの妄想？」「それと
も何かのトリック？」な〜んて思えてきてしまうのです。
映像も強力。鮮烈かつスリリングな映像の連続で、緊迫感を煽っていきます。
オープニングのクリスマスイブの美しいシーンと、その後の残忍な殺人シーン
というように、メリハリの効いた構成が良いですねぇ〜。
サスペンスとしてのおもしろさだけでなく、傷を負った男たちの人間ドラマと
しての魅力もあります。事件の背後にある衝撃の出来事。その事件を通して、
ポンとヘイは再び接近し、運命を狂わせます。どちらも新しい愛に目覚めるも
のの、その結末はあまりにも対照的……。切なく哀しいドラマです。
トニー・レオンと金城武といえば、ウォン・カーウァイ監督の『恋する惑星』
以来久々の顔合わせですが、どちらもさすがに存在感があります。金城武の酔
っ払った演技は、わざとらしさを排除するために、本当に酒を飲んで演技した
とか。
ポンの新しい恋人役としてスー・チーが出演しているのも注目。『玻璃（ガラ
ス）の城 』の頃はカワイイ少女でしたが、いまや完全に大人の女優。
ただなぁ〜、『インファナル・アフェア』よりも話が複雑な分だけ、人間ドラ
マの深みという点で物足りなさが残りますね。主役２人はともかく、それ以外
の登場人物のドラマまではきちんと描ききれていません。余韻という点では明
らかに『インファナル・アフェア』に軍配が上がる感じです。
ちなみに、『インファナル・アフェア』はハリウッドで『ディパーテッド』と
してリメイクされましたが、この映画もリメイクが決まっているそうです。は
たしてどんな映画になるのやら？
《ぽちの満足度》
★★★☆☆（＋1／2★）
《ぽちのオススメ度》
★★★☆☆
（さすがに『インファナル・アフェア』には及ばないものの、サスペンスとし
ても人間ドラマとしてもまずまずの出来。『インファナル・アフェア』が気に
入った方にはオススメ。）
＜ぽち＞
〔鑑賞データ〕
2007年7月7日（土）池袋シネマ・ロサにて。午後1時20分の回。
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