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恋しくて
（2007年 日本）（上映時間１時間39分）
監督・脚本：中江裕司
出演：石田法嗣、東里翔斗、山入端佳美、宜保秀明、大嶺健一、与世山澄子、
吉田妙子、國吉源次、武下和平、平良とみ、三宅裕司、BEGIN
＊ テアトル新宿、銀座テアトルシネマほかにて公開
ホームページ http://koishikute2007.jp/
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＜ストーリー＞
４歳の時にピアニストの父がいなくなって以来、歌を歌えなくなってしまった
加那子（山入端佳美）は、高校生になって幼なじみの栄順（東里翔斗）と再会
する。そんな中、加那子の兄・セイリョウ（石田法嗣）が思いつきでバンド結
成を宣言、栄順が歌を担当し、加那子は、恥ずかしがり屋の彼の隣で盛り上げ
役を担当する。次第に音楽の喜びに目覚めていく栄順たち。彼と加那子の間に
は淡い恋が芽生えるのだが……。
＜レビュー＞
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沖縄だからこそ成立した青春映画。沖縄好きの人なら楽しめそう
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『ナビィの恋』『ホテル・ハイビスカス』など一貫して沖縄を舞台にした映画
をつくり続けている中江裕司監督。今回も舞台は沖縄・石垣島。石垣島出身の
人気バンド、BEGINのエッセイにインスパイアされた青春ドラマで、バンドを始
めた高校生たちの恋と友情を描いています。
ジャズシンガーの母とピアニストの父の間に生まれた加那子。父が失踪して以
来、歌が歌えなくなってしまう。高校に入った彼女は幼なじみの栄順と再会。
やがて兄セイリョウがバンド結成を宣言し、無理やり栄順をヴォーカルにする。
セイリョウ自身はドラムを担当し、マコトがギターを担当。しかし、栄順はう
まく歌えず、加那子は隣で盛り上げ役を担当する……。
こうして始まったバンドの成長と同時に、栄順と加那子との初々しい恋が描か
れています。ただし、この青春ストーリーが実に貧弱。バンドの成長にしても
さしたる起伏もなく、淡々と進んで行きます。後半ではとんでもない悲劇や劇
的な展開も起きるのに、そこもほとんど盛り上がりのないままです。
なんだかウソくさい描写も目立ちます。正直なところ、栄順たちのバンドの演
奏はド下手で、とても聞けたものではありません。にもかかわらず、コンクー
ルをドンドン勝ち上がる展開にはただ苦笑するばかり。
うーむ。いったいこれは何なんでしょう？
栄順と加那子の恋も、イマイチ切なさが足りない感じで、個人的には、平板で
盛り上がらないベタな青春映画にしか思えませんでした。
しかし、それではまったくつまらない映画かといえば、そうともいえません。
まず魅力的なのが沖縄の風土。言葉はもちろん沖縄の方言だし、闘牛や祭りな
どの風習も描かれます。そして、何よりも独特の魅力を持った沖縄の人々がた
くさん登場します。
そうした中に、この起伏のない話が吸収されることによって、「どうってこと
ないさ」「大丈夫。何とかなるさ」という、ポジティブでのんびりした雰囲気
が生まれています。
ラストもユニークなオチ。東京でオーディションを受けるバンドのシーンがテ
レビで流れ、映画の出演者全員が応援します。そして、まさに大円団といった
感じのキスシーンからBEGINの歌へとつながっていく。リアルさとは無縁。青春
ストーリーの帰結としても弱すぎます。その代わり実にハッピーで、ほほえま
しい終わり方なのでした。
さらに、もう一つの特徴が、高校生たちのみずみずしい姿。登場人物の多くは
シロウト。主役級も、塩田明彦監督の『カナリア』などに出演した石田法嗣を
除けば、すべて演技未経験の新人。しかし、それがかえって新鮮です。特に加
那子役の山入端佳美が印象的。こうした高校生たちの姿が生き生きと描かれ、
心に響いてきます。
いずれにしても、沖縄だからこそ成立した青春映画だけに、沖縄の風土にバッ
チリ共鳴できる人には、ステキな映画に思えるかも。でも、そうでない人にと
っては厳しいんじゃないかなぁ〜。
《ぽちのオススメ度》
★★☆☆☆
（個人的にはかなり物足りなかったけれど、沖縄が大好きな人、それにBEGINの
ファンは楽しめそうです。）
＜ぽち＞
〔鑑賞データ〕
2007年5月5日（土・祝）テアトル新宿にて。午後4時40分の回
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