告白

（2010年　日本）（上映時間1時間46分）
監督・脚本：中島哲也
出演：松たか子、岡田将生、木村佳乃
＊TOHOシネマズ日劇ほかにて全国公開
ホームページ　http://kokuhaku-shimasu.jp/
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＜ストーリー＞
ある中学校の1年B組の担任・森口悠子（松たか子）は、告白を始める。数ヶ月
前に、彼女の幼い一人娘がプールで死亡し、警察が事故死だと断定した事件は、
本当は殺人事件で犯人はこのクラスの2人の生徒だというのだ。森口は自分の手
で2人を処罰すると宣言する。その後、森口は学校を辞め、新学期から彼女の代
わりに、熱血教師の寺田が担任になるのだが……。

＜レビュー＞
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異様な緊張感に満ちた復讐劇を通して考える「命」
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2009年の本屋大賞を受賞した湊かなえのミステリー小説を、『下妻物語』『嫌
われ松子の一生』の中島哲也監督が映画化。

冒頭は中学の1年B組の教室。担任の女性教師・森口がある告白を始めます。自
分の娘が事故死したとされる事件は、実は殺人事件で、犯人はこのクラスにい
るのだといいます。彼女は犯人に復讐することを宣言します。

この手の話は、犯人探しに比重を置いたサスペンスになりがちです。しかし、
この映画では、冒頭から間もなく2人の犯人を明らかにしてしまいます。いわば
手駒を早いうちに使ってしまうのですが、それでも最後までスクリーンから目
が離せませんでした。

その後に描かれるのは、森口先生が学校を去り、新たな担任がやってきた新学
期からの出来事。犯人の生徒を中心に、1年B組がどうなっていったかを、生徒
などの独白で描きます。

犯人の1人は引きこもりになり、新任の熱血先生の働きかけにも応じず、どんど
ん壊れていきます。もう1人の犯人は何事もなかったように学校に来ますが、や
がてイジメの標的になってしまいます。

ドラマが進行するにつれて、中学生たちの心の闇が赤裸々に描き出されていき
ます。その背景にあるのは、エリート意識や劣等感、母への思慕など。つまり、
誰もが抱える可能性のある思いが、彼らの心に闇を生み出し、とんでもない方
向に暴走させていくのです。だからこそ、なおさら恐ろしく見えてきます。

中島監督の映画は、テーマ性とエンタメ性を両立させるのが特徴。今回も、歌
や踊り、ポップな映像なども織り込んで、過激さを巧みに中和しているものの、
なんといってもネタがネタなので、重たさや息苦しさから解放されることはあ
りません。

しかし、それでも目が離せません。スクリーンを包むのは異様な緊張感。過去
の中島作品とは違うモノトーンっぽい色調の映像、独特のカットの積み重ね、
全編に流れるロック音楽なども、戦慄と恐怖を増幅させていきます。

クライマックスは壮絶の一語。そこで起きる意外などんでん返し。まさか、す
べてが仕掛けられていたなんて……。

少年の屈折した心理を浮き上がらせ、恐ろしい結末を告げて、それを時間を巻
き戻して見せる意表をついたシーン。バックでかかる音楽とあいまって、この
映画最大の見せ場になっています。

ラストも一筋縄ではいきません。「……な～んてね」ですから。

命の大切さを真正面から訴えるのではなく、ホラー映画も真っ青の恐怖に満ち
た復讐劇を展開することで、観客自身に様々なことを考えさせる刺激的で深い
映画です。

内に秘めた狂気を感じさせる松たか子に加え、オーディションで選ばれたらし
い子供たちの等身大の演技も印象的。

≪ぽちの満足度≫
★★★★☆（＋1／2★）

≪ぽちのオススメ度≫
★★★☆☆
（恐ろしくて重たい映画ですが、スクリーンから目が離せません。ネタがネタ
なので誰にでもオススメとはいきませんが、観る価値のある映画です。）
　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　（田中ひろあき（ぽち））

〔鑑賞データ〕
2010年6月5日（土）ユナイテッド・シネマとしまえんにて。午後2時30分の回

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