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告発のとき（IN THE VALLEY OF ELAH）
（2007年 アメリカ）（上映時間2時間1分）
監督・脚本：ポール・ハギス
出演：トミー・リー・ジョーンズ、シャーリーズ・セロン、スーザン・サラン
ドン、ジョナサン・タッカー、ジェームズ・フランコ、フランシス・フィッシ
ャー、ジョシュ・ブローリン、ジェイソン・パトリック
＊ 有楽座ほかにて全国公開
ホームページ http://www.kokuhatsu.jp/
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＜ストーリー＞
2004年、元軍警察のハンク・ディアフィールド（トミー・リー・ジョーンズ）
のもとに、イラクの最前線から帰還した息子マイクが行方不明だとの連絡が入
る。ハンクは息子の行方を捜すため基地へ行くが手がかりはなく、地元警察に
も相手にされない。女性刑事エミリー・サンダース（シャーリーズ・セロン）
の協力を得て捜索を続けるハンクだったが……。
＜レビュー＞
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イラク戦争を題材に、様々な問いを投げかけてくる問題作
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『ミリオンダラー・ベイビー』などの脚本で知られ、監督デビューした『クラ
ッシュ』がアカデミー作品賞を受賞したポール・ハギスの新作。前作『クラッ
シュ』と同様に、苦くて奥行きのある映画です。
イラクから帰還した息子が行方不明になったと連絡を受けた父親が、行方を捜
すために基地のある町へと向かう。彼は退役軍人、しかも元軍警察とあって捜
査はお手のもの。しかし、同僚から話を聞いても要領を得ず、地元の警察にも
相手にされない。そして、まもなく惨殺死体が発見され、それが息子であるこ
とがわかる。父親は、地元の女性刑事の助けを借りて、事件の真相に迫ろうと
する……。
実話をもとにしたというこのストーリー。全体は失踪＆殺人事件の真相に迫る
サスペンス仕立てになっています。当初は麻薬がらみかと思われた事件が二転
三転。息子が残した携帯の動画などをヒントに、事件を追う父親の姿を丹念に
追っています。
しかも、そこには登場人物の様々な人間ドラマがあります。我が子を戦場に送
り、そして失ってしまった父母の後悔と怒り。同僚たちのセクハラや軍との軋
轢に苦しみ、捜査依頼者を見殺しにしてしまったことに悩む女性刑事。そうし
た様々な人々の思いがきちんと描かれた、人間ドラマの側面も持つ映画です。
やがて見えてくる事件の真相。そこにあるのはいわゆるＰＴＳＤ（心的外傷後
ストレス障害）。イラクの地獄のような現実の中で、心に深い傷を負い、そし
て精神を病んでいく男たちの姿です。
地獄のような戦場では、誰もがマトモではいられません。殺された息子も、あ
る事件をきっかけに心を病んでいきます。それが明らかになった時の父親のや
るせない表情が、なんともいえません。そして、真実を告白する真犯人の表情
には、戦慄をおぼえてしまいます。
けっして真正面から反戦を唱えているわけではないけれど、戦争の狂気やそれ
に痛めつけられた男たちの悲劇が、ジワジワとあぶり出されてきます。
ラストに掲げられる逆さまの星条旗が、実に多くのことを語っています。ハギ
ス監督たち、つくり手の静かなメッセージが込められたシーンです。
父親役のトミー・リー・ジョーンズがさすがです。頑固一徹で、人の悪口ばか
り言い、息子の死にも取り乱さない。しかし、それでも抑えきれない感情があ
ふれ、爆発してしまう。そんな父親を見事に演じています。
女性刑事役のシャーリーズ・セロンの厚みのある演技も印象的。いまや押しも
押されもしない演技派ですね。
出番は少ないけれど、母親役のスーザン・サランドン、警察のボス役のジョシ
ュ・ブローリンあたりも、存在感を発揮しています。
観客に多くの問いを投げかけてくるこの映画。それらの問いは、直接的にはア
メリカ人に向けられていますが、それを越えて世界中の人が直視すべき問題だ
と思います。ストレートな感動や爽快感はないけれど、奥が深くて、観終わっ
ていろいろなことを考えさせられます。
《ぽちの満足度》
★★★★☆
《ぽちのオススメ度》
★★★☆☆（＋1／2★）
（戦争の恐ろしさをはじめ様々なことを観客に投げかけてくる映画です。ハギ
ス監督の前作『クラッシュ』同様、なかなかの作品。）
（ぽち）
〔鑑賞データ〕
2008年6月29日（日）シネマ・ロサにて。午後1時30分の回
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