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九月に降る風（九降風／WINDS OF SEPTEMBER）
（2008年 台湾）（上映時間1時間47分）
監督・脚本：トム・リン
出演：リディアン・ヴォーン、チャン・チエ、ジェニファー・チュウ、ワン・
ポーチエ、リン・チータイ、シェン・ウェイニエン、チウ・イーチェン、
チー・ペイホイ、リー・ユエチェン、エリック・ツァン、リャオ・ミンシュン、
ルー・イーチン
＊ユーロスペース、シネマート新宿ほかにて公開
ホームページ http://www.9wind.jp/
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＜ストーリー＞
1996年の台湾。高校３年生のタンは、６人の不良仲間とともに悪さをして教官
室に呼び出されながらも、憧れのプロ野球選手リャオ・ミンシュンの試合を観
戦したり、夜のプールに忍び込んだりと、楽しい毎日を送っていた。だが、グ
ループのリーダー、イェンの恋人ユンに恋心を抱くようになった彼は、次第に
イェンの女グセの悪さに反発を覚え始める。そして、ある事件からグループに
は亀裂が入るようになり……。
＜レビュー＞
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台湾の高校生たちの友情と亀裂をみずみずしく繊細に描く
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1996年頃の台湾の高校生たちをみずみずしく描いた青春群像劇。本作が長編デ
ビューとなるトム・リン監督が、自身の高校生活を重ね合わせて描きました。
中心に描かれるのは、プロ野球に夢中な７人の男子高校生たち。この子ら不良
連中で、授業をサボったり、タバコや酒をやったり、無免許でバイクに乗った
り、夜のプールに忍び込んだりと、悪いことばかりして学校の教官から目をつ
けられています。
とはいえ、極悪というわけではなく、根っこのところは普通の高校生。悪グ
ループにありがちな強圧的な支配などもなく、固い友情で結ばれています。
しかし、タンがイェンの彼女に好意を持つようになったことから、２人の関係
に変化が訪れます。さらに、その他のメンバーの間にも微妙なすきま風が……。
プレイボーイのイェン、地味だが心の優しいタン、義理人情に厚いヤオシンな
ど７人の個性がきちんと描き分けられ、彼らの関係や心の動きの微妙な変化が
繊細な描写で表現されます。
固い友情で結ばれていると思っていたのに、ふとしたことからヒビが入り、だ
んだん離れていく仲間たち。それは青春時代には避けて通れない出来事なのか
もしれません。この映画に登場するのは不良グループですが、普通の高校生に
も同じようなことが起きがちです。だからこそ、観客は彼らに共感し、切なさ
を感じるのでしょう。
映画の後半では、そうした変化がより劇的な形で現れます。イェンとタンの友
情が復活しかけたように思えた次の瞬間、２人に大きな出来事が起きて、二度
と元の関係に戻ることができなくなります。
さらに追い討ちをかけるように、他のメンバーにも事件が起きて、メンバーの
関係は決定的な事態へと至ります。
トム・リン監督の演出はけっして仰々しくありません。全編を通して抑制的に、
繊細に、高校生たちの心理をすくいとっていきます。
また、この映画の大きな特徴は、背景として高校生たちが好きだったプロ野球
の八百長事件を織り込んでいるところ。それもまた彼らにとって一つの挫折で
あり、青春の苦い思い出というわけ。彼らがあこがれていたスター選手リャ
オ・ミンシュンを登場させた（本人が登場）ラストシーンも印象的です。
２人の女子高生を含めた高校生たちの生き生きとした演技もなかなかのもの。
傑作とまではいえないけれど、なかなかよくできた青春映画だと思います。
ちなみに、製作には香港の名優エリック・ツァン（『ラヴソング』『インファ
ナル・アフェア』など）が名を連ねていて、イェンの父親役でチラッと登場し
ています。
《ぽちの満足度》
★★★☆☆（＋1／2★）
《ぽちのオススメ度》
★★★☆☆
（ノスタルジックで切ない青春映画。みずみずしい青春ドラマが好きな方はど
うぞ）
（田中ひろあき（ぽち））
〔鑑賞データ〕
2009年9月1日（火）シネマート新宿にて。午後1時50分の回
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