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黒く濁る村（苔）
（2010年 韓国）（上映時間2時間41分）
監督：カン・ウソク
出演：パク・ヘイル、チョン・ジェヨン、ユ・ジュンサン、ユソン、ユ・ヘジ
ン、キム・サンホ、キム・ジュンベ、ホ・ジュノ
＊丸の内TOEI、シネマスクエアとうきゅうほかにて公開
ホームページ http://kurokunigorumura.com/
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＜ストーリー＞
ユ・ヘグク（パク・ヘイル）は、20年間も音信不通だった父の訃報を受けて、
人里離れた山奥の村を訪れる。村人たちはヘグクに対し警戒心をあらわにする
が、30年前に父とともにこの村に移り住んだ元刑事のチョン・ヨンドク村長
（チョン・ジェヨン）のひと言で態度を一変する。村人たちの態度に不審なも
のを感じたヘグクは、葬儀を終えても村に留まり、父の死因を探り始めるのだ
が……。
＜レビュー＞
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おぞましいミステリーを通して描かれる骨太な人間ドラマ
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韓国でウェブ連載された人気漫画を『シルミド／ＳＩＬＭＩＤＯ』のカン・ウ
ソク監督が映画化したミステリー・サスペンス。韓国では340万人を動員する大
ヒットを記録したそうです。
物語の骨格などは、横溝正史の作品と共通するものも感じさせます。ずっと音
信不通だった父の訃報を受けて、人里離れた山奥の村を訪ねた主人公ユ・ヘグ
ク。村人たちが不審な態度を取ったことから、父の死の真相を探り始めます。
ところが、そこには恐ろしい出来事が隠されていたのです……。
原作のマンガがどんなものか知りませんが、内容がテンコ盛りです。2時間41分
の間に、いろいろな要素を詰め込んでいます。
主人公の父親は、カリスマ的な資質を持つ宗教指導者。ある刑事がそれに目を
つけて、元受刑者たちを引き連れて「理想の村」を目指して、一緒に村に移住
してきます。しかし、そのうちに２人の間にはすきま風が吹き始めます。そこ
には、30年前に起きた祈祷院での集団殺人事件も絡んできます。主人公と彼に
よって左遷された検事のエピソードなど、事件には直接関係のない話も盛り込
まれます。
それが災いしたのか、ミステリーではあるものの、謎解きの面白さはあまり堪
能できませんでした。明らかになっていく事実はそれほど意外でもないし、途
中までは大きなどんでん返しもありません。
突っ込み不足のところも目立ちます。特に、命の危険を冒してまで父の死の真
相を探ろうとする主人公の気持ちは、ほとんど理解不能です。
それでも、2時間41分という長丁場をまったく飽きさせないのはさすがです。ど
す黒く、おぞましい雰囲気の中で、元刑事の村長をはじめ怪しすぎる村人たち
がうごめくようすは、スリラー的な魅力がタップリ。主人公の危機一髪のシー
ン、家が猛火に包まれる火災シーンなど、見せ場もたくさん用意されています。
理想主義者の主人公の父親と、現実主義者の元刑事の村長の対立を軸とした人
間ドラマも、骨太でよく描けています。権力、支配と服従、暴力など、様々な
テーマも浮かび上がります。カン・ウソク監督の作品だけに、おそらくその背
景には現在の韓国社会の様相が横たわっているのでしょう。
主人公を演じたのはパク・ヘイル（『殺人の追憶』）。しかし、今回最もすご
いのは村長を演じたチョン・ジェヨンです。老けメイクで、鬼気迫る演技を見
せています。
クライマックスでは、主人公と村長が対決。それが意外なほどあっさり終わっ
て拍子抜けしかけたところに、さらに新たな展開を用意して、壮絶な決着に持
っていく巧みな仕掛け。
ラストは、まさかのエンディング。え？あの女が……。もしかして、これは壮
大な復讐のドラマだったのか？？？？
≪ぽちの満足度≫
★★★☆☆（＋1／2★）
≪ぽちのオススメ度≫
★★★☆☆
（2時間41分まったく飽きない見応えある映画。謎解きに期待せず、事件の背後
の人間ドラマやテーマ性に注目したほうがよさそう……。）
（田中ひろあき（ぽち））
〔鑑賞データ〕
2010年11月21日（日）シネマスクエアとうきゅうにて。午後3時の回
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