ラブリーボーン(THE LOVELY BONES)


(2009年 アメリカ)(上映時間2時間15分)
監督:ピーター・ジャクソン
出演:マーク・ウォールバーグ、レイチェル・ワイズ、スーザン・サランドン、
スタンリー・トゥッチ、マイケル・インペリオリ、シアーシャ・ローナン
*丸の内ピカデリーほかにて全国公開
ホームページ http://www.lovelyb.jp/
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<ストーリー>
家族と幸せに暮らしていた14歳の少女、スージー・サーモン(シアーシャ・
ローナン)は、ある日、近所の男に殺されてしまう。やがて天国の入り口にた
どり着くスージー。そんな中、犯人は捜査の目を逃れて捕まらずにいた。一方、
愛する娘を失った家族は深い悲しみに包まれる。父親は残された犯人探しに執
念を見せるが、母親はそんな夫に耐えられずに家を出る。その様子をスージー
は天国から見守るのだが……。

<レビュー>
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殺された少女の死後の目線で描いた家族の再生のドラマとサスペンス
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アリス・シーボルトの小説を『ロード・オブ・ザ・リング』のピーター・ジャ
クソン監督が映画化した作品。

14歳のスージーという少女が殺害されます。家族は悲嘆にくれ、生活は一変し
ます。そんな中、スージーの父は必死で犯人を探すのでした……。

というだけなら普通のサスペンス。でも、この映画がユニークなのは、死んだ
スージーが天国の入り口にたどりつき、そこから家族を見守っているという設
定。スージーが語り手となって、家族のその後を描きます。つまり、ファンタ
ジーのスタイルで描かれた家族のドラマなのです。

スージーがいる「あの世」が、とても幻想的で美しく描写されています。理想
的な死後の世界。本来なら、そこから本当の天国に行かねばならないスージー
ですが、家族のことが気になって留まり続けます。死後も生きているかのよう
に家族を気にかけ(ただし、幽霊になってこの世に出現するわけではありませ
ん)、そして自らも成長していきます。

スージーの死によって傷ついた家族たちですが、どん底に突き落とされながら
も、やがて少しずつ再生していきます。そんな感動のドラマをあまりウェット
になりすぎずに、抑制的に描き出しています。

さらに、それだけではなく、スージーの父親や妹が犯人に迫るサスペンス的な
要素、そして猟奇殺人というネタにまつわるホラー的な要素も持った映画です。

クライマックスは、少女の「やり残した」ことを描くさわやかで感動的なシー
ン。そして、その後には、犯人に対して落とし前をつけさせる巧みなラストが
用意されています。

『つぐない』でもいい演技を見せていたスージー役のシアーシャ・ローナンは、
今回もなかなかの存在感。両親役のマーク・ウォルバーグ、レイチェル・ワイ
ズに加え、キレた祖母役のスーザン・サランドン、そして猟奇殺人犯役のスタ
ンリー・トゥッチ(『Shall we Dance? シャル・ウィ・ダンス?』『プラダを
着た悪魔』など)も印象的でした。

美しすぎる死後の世界の映像をはじめ、とても良くできた映画です。ブライア
ン・イーノによる音楽も文句なしに素晴らしい。

ただし、ややパンチ不足の感もあります。家族の描き方が表面的で、内面が十
分に描ききれていない感じです。

サスペンスとしても物足りなさが残ります。犯人探しが中心のドラマではない
とはいえ、最初から犯人がわかっているのは興ざめ。もう少し後まで、引っ張
ってもよかった気がするのですが。

《ぽちの満足度》
★★★☆☆

《ぽちのオススメ度》
★★★☆☆
(死んだ少女の目線というユニークな切り口で描いた家族のドラマ。サスペン
スやホラーの要素もあるものの、全体に中途半端なのが惜しいところ。)
                             (田中ひろあき(ぽち))

〔鑑賞データ〕
2010年1月29日(金)シネマロサにて。午後1時45分の回。


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