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街のあかり（LIGHTS IN THE DUSK）
（2006年 フィンランド）（上映時間１時間18分）
監督・脚本：アキ・カウリスマキ
出演：ヤンネ・フーティアイネン、マリア・ヤンヴェンヘルミ、マリア・ヘイ
スカネン、イルッカ・コイヴラ、カティ・オウティネン
＊ ユーロスペースにて公開。順次全国公開
ホームページ http://www.machino-akari.com/
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＜ストーリー＞
フィンランドのヘルシンキで、夜警として勤務するコイスティネン（ヤンネ・
フーティアイネン）は、友人も恋人もいない孤独な男だった。だが、ある日、
カフェで声を掛けてきた美しい女ミルヤ（マリア・ヤンヴェンヘルミ）に恋を
してしまう。しかし、彼女はマフィアが送り込んだ情婦で、コイスティネンは
強盗の濡れ衣を着せられてしまうのだった……。
＜レビュー＞
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どん底の負け犬男に、カウリスマキが提示した微かな光
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フィンランドの名匠アキ・カウリスマキ監督による『浮き雲』『過去のない
男』に続く"敗者３部作"の最終章です。
当然ながら、描かれるのは敗者の人生。それも凄まじい敗者です。まさに負け
犬。それ以外に、表現のしようがありません。
友達も恋人もいない夜間警備員のコイスティネンが主人公。仕事が終わると、
たった一人で酒を飲み、ソーセージ屋に立ち寄って帰る毎日。ただし、いつか
起業して成功する野望だけは失わずにいた。
そんなある日、突然彼の前に登場したミルヤという女。彼女に声をかけられ、
不器用なデートをした彼は、すっかり恋に落ちてしまう。だが、彼女には大き
な秘密が……。
こうして人を愛することで、人間らしい生活をとり戻しかけたコイスティネン
が、皮肉にもこの恋によって、さらにどん底へと突き落とされる姿を描いたの
がこの作品。
話の中心は古典的な犯罪劇で、どうということもありません。しかし、その犯
罪劇はあくまでも負け犬の主人公を中心にした登場人物たちの、人間ドラマを
描くための小道具にしか過ぎないのです。
主人公コイスティネンをはじめ、主要な登場人物で特徴的なのが、みんなほと
んど無表情なこと。叫んだり、歓喜の声を上げたりする人は皆無です。しかし、
そうした人々のちょっとしたしぐさや、わずかな表情の変化などから、彼らの
心理の「揺らぎ」を見事にすくい取っていきます。
例えば、恋を知ったときのコイスティネンのときめき、彼をだますミルヤの後
ろめたさ。淡々とした抑制的な描写ながら、彼らの思いがリアルに伝わってき
ます。
主演のヤンネ・フーティアイネンは、普通の二枚目だって十分に演じられそう
な役者ですが、そのダメダメぶりは思わず笑ってしまうほど。世の中に不器用
な人はたくさんいますが、「みんなコイツには勝てないだろうなぁ〜」という
感じ。それほどダメダメです。
彼をだますマリア・ヤンヴェンヘルミ、ソーセージ屋の女のマリア・ヘイスカ
ネンの抑制的な演技も印象的です。
どんどん奈落へと落ちていく主人公。それでも、周囲に対して頑固に真相を隠
そうとします。それは負け犬の意地なのか？ それほど彼女を愛しているの
か？
いずれにしても、負け犬は負け犬のまま人生から退場していくのかも。きっと
救いなどどこにもないのだ。
と思わせたところで、ラストで提示されるのがほんの微かな希望の光。これが
とてもすがすがしく感じられます。どんなに負け犬でも、もしかしたら、やり
直せるかもしれない。再生できるかもしれない。そんな思いを持たせてくれる
結末です。
後半はまるで無声映画のように、静謐で、透明感が漂う映画（もちろんちゃん
と音は出ますが）。悲惨な話とはいえ、後味がさわやかで、心がポッとなりま
した。
負け犬だって、希望を持っていいのですよね？？？
《ぽちの満足度》
★★★☆☆（＋1／2★）
《ぽちのオススメ度》
★★★☆☆（＋1／2★）
（地味ながらジワジワと染みとおってくる映画。カウリスマキ監督のファンで
なくとも一見の価値はあります。人間ドラマのお好きな方はどうぞ）
＜ぽち＞
〔鑑賞データ〕
2007年7月15日（日）ユーロスペースにて。午後1時10分の回。
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