|
めがね
（2007年 日本）（上映時間１時間46分）
監督・脚本：荻上直子
出演：小林聡美、市川実日子、加瀬亮、光石研、もたいまさこ、橘ユキコ、中
武吉、荒井春代、吉永賢、里見真利奈、薬師丸ひろ子
＊テアトルタイムズスクエア、テアトル銀座ほかにて全国公開
ホームページ http://www.megane-movie.com/
■■■■■■■■■■■■■■■■■■■■■■■■■■■■■■■■
＜ストーリー＞
南の小さな海辺の町をタエコ（小林聡美）が訪れる。ハマダという小さな宿に
向かった彼女を宿の主人ユージ（光石研）と犬のコージが出迎える。島には、
毎年春になると訪れる女性サクラ（もたいまさこ）をはじめ、不思議な人々ば
かりが住んでいた。彼らの言動に振り回され、ガマンできなくなったタエコは
ハマダを出ていくのだが……。
＜レビュー＞
〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜
『かもめ食堂』のスタッフ＆キャストによる究極のスローライフ映画
〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜
フィンランドの食堂を舞台にスローな日常を描いた癒し系映画『かもめ食堂』
の監督はじめスタッフ、そして小林聡美、もたいまさこらのキャストが再び集
った作品。
前作同様に、こちらもスローな映画。観ているうちに、のんびりポカポカして
きて、知らず知らずのうちに癒されてしまいます。食べ物が次々に登場して、
そのどれもがとても美味しそうなのも前作と共通しているところ。
舞台は南の海辺の町。人生の休息をとるために訪れたらしい小林聡美演じるタ
エコ。ハマダという宿に宿泊した彼女は、宿の主人（光石研が好演）、毎年春
先に訪れてカキ氷を売るサクラ、サボってばかりの高校教師ハルナなど、不思
議な人々たちと出会い、すっかりペースを狂わせられてしまう……。
ドラマ的に、とりたてて何かが起きるわけではありません。わずかにタエコが
宿替えを計画するあたりがドラマといえばドラマ。観光する場所もなく、「た
そがれる」ぐらいしかすることがない島で、ヘンな人々に振り回されるのにガ
マンできなくなったタエコが、別の宿に移ろうとします。しかし、そこもまた
おかしな宿で、結局戻ってくるというエピソード。
また、後半で、タエコの知り合いのヨモギという男性が訪ねてくるところも、
数少ないエピソードの一つ。
あとは、登場人物がひたすらのんびりとお話をしたり、食べたり、飲んだりす
るだけなんです。おまけに、登場人物の背負ったものも何も描かれません。主
人公が「先生」と呼ばれる理由さえ不明。
しかし、そんな何も起きない映画を観ているうちに、観客はどんどん心地よく
なっていきます。慌しい私たちの日常からは想像もできない登場人物たちのス
ローな生活。そして、あまりにも美しすぎる海や空。それらを眺めているうち
に、自然にのんびりした気分になって、癒されていくのです。
スタッフやキャストが楽しそうに、のびのびと映画を撮っているのが伝わって
くるのも、この映画の魅力。だから、よけいにホンワカとした気分になれるの
です。
クスクスと笑えるユーモアも全編に散りばめられています。特に、もたいまさ
こ演じるサクラが指導する「メルシー体操」なる珍妙な体操は笑えます。
これだけ癒し度の高い映画はそうはありません。前作『かもめ食堂』をはるか
に超える癒し度ではないでしょう。
ただし、個人的にはどうも観ていて居心地が悪かったんです。というのも、こ
こに描かれた世界はあまりにも現実離れしたユートピア。それゆえ一歩引いて
しまって、スクリーンに入り込めませんでした。カキ氷の代金を善意で支払う
って、アナタ、いまどきそんな社会がどこにある？
『かもめ食堂』はフィンランドの食堂という現実を踏まえていたからまだしも、
ここまで理想的な世界にはどうもついていけません。
だいたい筆者のようなナマケモノが、あんな場所に住んだら、ホントに何にも
しないで毎日毎日ボーッとしちゃうって（笑）。
まあ、これはあくまでも個人的な趣味の問題ですが……。
ちなみに、この映画で一番存在感があったのは、小林聡美でも、市川実日子で
も、加瀬亮でも、光石研でも、もたいまさこでもなく、柴犬のコージかもしれ
ませぬ。名演技だワン！
《ぽちの満足度》
★★☆☆☆（＋1／2★）
《ぽちのオススメ度》
★★★☆☆
（個人的にはあまりにも現実離れしたユートピアにちょっと引いてしまいまし
たが、心地よくなれるのは間違いなし。癒されたい方はどうぞ。）
＜ぽち＞
〔鑑賞データ〕
2007年9月23日（日）ユナイテッド・シネマとしまえんにて。午後2時45分の回。
[「め」のページ] |
|
