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ＭＷ−ムウ−
（2009年 日本）（上映時間2時間9分）
監督：岩本仁志
出演：玉木宏、山田孝之、山本裕典、山下リオ、風間トオル、デビッド・ス
ターズィック、鶴見辰吾、中村育二、半海一晃、品川徹、林泰文、石田ゆり子、
石橋凌
＊丸の内ルーブルほかにて全国公開中
ホームページ http://mw.gyao.jp/
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＜ストーリー＞
16年前、ある島で島民全員が虐殺される事件が発生。その事実は政府により隠
匿された。事件に遭遇したが奇跡的に生き延びた2人の少年のうち、結城（玉木
宏）は成長してエリート銀行員となり、事件の関係者に残虐な手口で復讐して
いく。一方、神父となった賀来（山田孝之）は、彼の行為を止められずに悩み
苦しむのだが……。
＜レビュー＞
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スリリングで破格のスケールだが、あとに残るものはナシ
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1970年代に『ビッグコミック』で連載された手塚治虫のコミックが原作。手塚
作品では珍しく、人間の暗部を描いた衝撃作です。
16年前にある島で起きた島民虐殺事件を背景に、その被害者である男が、次々
と残虐な方法で関係者に復讐をしていきます。彼の犯罪を止めようとするもの
の逆に協力させられる友人、そして事件を追う刑事と新聞記者。彼らの姿を日
本映画としては破格のスケールで描いたアクション・サスペンスです。
冒頭は、タイでの誘拐事件をめぐる犯人と被害者家族、そして警察による手に
汗握る攻防戦です。スリリングでスピーディーで目が離せない展開。カーアク
ションも迫力があります。
舞台を日本に移してからも、ダレるところはほとんどありません。犯人は最初
からわかっているのに、グイグイとスクリーンに引き込まれてしまいました。
映像もいいですね。全体は暗く冷たいトーンですが、冒頭のタイでのシーンな
どは熱気を感じさせるメリハリのある映像です。
途中で、かつての虐殺事件をめぐる「ＭＷ（ムウ）」というキーワードから、
事件は新たな展開を見せます。舞台となった島から米軍基地へ。そして、クラ
イマックスは東京上空での迫力のバトル。
緊迫感は後半になっても衰えず。むしろどんどん高まっていきます。ラストの
後日談もありがちとはいえ、なかなか面白いものです。
ただし、それだけなんですよね。観ている時はそれなりに楽しめるけれど、終
わってあとに残るものはありません。何しろ人間がきちんと描けていないので
す。特に人間の残虐性、復讐心、心の闇など、深いところがまったく描かれず。
犯人の結城の内面も見えてきません。いたいなぜ彼がああした狂気に走ってい
ったのか？ 「ＭＷが原因でモンスターになった」って、それで終わりかい
ッ！！！（笑）
結城と賀来の関係もイマイチよくわかりません。虐殺事件の当事者同士で、賀
来は結城に命を助けてもらったらしいのですが、それだけでお互いにああいう
行動をとるのは納得がいきません。もっと何かあるんじゃないの？？？
まあとにかく、人間ドラマという点では脚本も演出も全然物足りませんね。
主演の玉木宏はよく頑張っていて、ワルぶりが板についています。ただし、あ
んまり利口そうに見えないのが欠点。山田孝之にいたっては……何も言います
まい。
エンタメ映画としてはなかなかのものですが、それ以上は何もありません。こ
の映画のオープニング＆エンドタイトルはまるでハリウッド映画。そうか！
ねらいはハリウッドのエンタメ映画のような、面白いだけで中身は空っぽの映
画だったのか（笑）。
《ぽちの満足度》
★★☆☆☆
《ぽちのオススメ度》
★★☆☆☆（＋1／2★）
（スリリングで面白い映画ですが、それ以上のものはありません。手塚治虫原
作だからと期待して観なければモトはとれそうですが。）
（田中ひろあき（ぽち））
〔鑑賞データ〕
2009年7月9日（木）池袋東急にて。午後1時30分の回
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