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マイ・ブラザー（BROTHERS）
（2009年 アメリカ）（上映時間1時間45分）
監督：ジム・シェリダン
出演：トビー・マグワイア、ジェイク・ギレンホール、ナタリー・ポートマン、
サム・シェパード、メア・ウィニンガム、ベイリー・マディソン、テイラー・
ギア、パトリック・フリュガー、クリフトン・コリンズ・Jr.、キャリー・マリ
ガン
＊TOHOシネマズみゆき座ほかにて全国公開
ホームページ http://my-brother.gaga.ne.jp/
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＜ストーリー＞
米軍大尉のサム（トビー・マグワイア）は妻グレース（ナタリー・ポートマ
ン）と2人の娘を残してアフガニスタンへ出兵する。だが、やがてグレースのも
とにサムが戦死したという報せが入る。一家のはみ出し者だったサムの弟ト
ミー（ジェイク・ギレンホール）は、グレースと娘たちの心の支えになろうと
努力する。そんなある日、死んだと思われていたサムの生存が確認される。家
族と感動の再会を果たすサムだったが……。
＜レビュー＞
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戦争に翻弄されたある家族の肖像
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スザンネ・ビア監督の2004年のデンマーク映画『ある愛の風景』のリメイクだ
そうです。監督は、『マイ・レフトフット』『イン・アメリカ／三つの小さな
願いごと』などの秀作で知られるジム・シェリダン。
戦争に翻弄されボロボロになった家族のドラマです。夫と妻、そして2人の娘と
いう幸せな家族。だが、夫のサムがアフガンに出兵して戦死。失意の家族を励
まそうとする夫の弟トミー。ところが、実はサムは生きていてやがて帰国。感
動の再開を果たすものの、心に深い傷を負っていて……。
兄サムが生きていることは、早いうちにわかってしまいます。その代わり、残
された家族の姿と並行して、彼が戦場でどれほど過酷な体験をしたかがじっく
りと描かれ、ドラマに説得力を持たせています。
構成も演出も奇をてらわずに正攻法で勝負。特に人間の心理が抑制的に、そし
て的確に描かれているのが印象的です。
タイトルからもわかるように、物語の中心になるのは兄と弟の関係。兄のサム
は子供の頃から優秀だった兵士。一方、デキの悪い弟トミーは刑務所から出所
したばかり。ところが、兄の出兵をきっかけに、そんな2人の立場が逆転します。
サムの戦死の報せを聞いて、残された妻と娘たちの心の支えになろうと決意し、
自分を変えるトミー。一方、サムは命こそ助かったものの、戦場で過酷な体験
をし、心に深い傷を負います。それがきっかけで、帰国後は家族を苦しめる存
在になってしまいます。
後半は圧巻です。どんどんコワれていくサムは、妻グレースとトミーの仲を邪
推してますます狂っていきます。それに翻弄されながらも、必死で家族の絆を
守ろうと努力するグレース。そして昔の兄に戻ってもらおうとするトミー。
クライマックスのサムが暴発するシーンは、悲しくて、切なくてたまらない
シーンです。ハッピーエンドではないものの、かすかな希望を感じさせるラス
トも心に染みます。
兄を演じたトビー・マグワイアの演技が絶品。状況の変化とともにどんどん人
相が変わり、後半では背筋が凍るほどの狂気を感じさせます。『スパイダーマ
ン』をはじめ過去の「いい人」イメージを払拭。弟役のジェイク・ギレンホー
ル、妻役のナタリー・ポートマンの抑制の効いた演技も見事。
家族の肖像を描き出すのと同時に、それを通して戦争の本質もあぶり出した映
画です。戦争が兵士だけでなく、家族も悲惨な運命に突き落とすことがよくわ
かります。兄弟の父親も、かつてベトナムに従軍して帰国後に家族を苦しめた
という逸話が、ドラマに奥行きを与えています。
≪ぽちの満足度≫
★★★☆☆（＋1／2★）
≪ぽちのオススメ度≫
★★★☆☆（＋1／2★）
（地味ですがジワジワとした感動が味わえる佳作。家族や戦争について、いろ
いろと考えさせてくれます。）
（田中ひろあき（ぽち））
〔鑑賞データ〕
2010年6月4日（金）新宿武蔵野館にて。午後3時30分の回
[「ま」のページ] |
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